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脚を溜めての逃げで人気馬を完封/JBCスプリント

  • 2015年11月05日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



ダノンレジェンドの勝ちパターンを抑える

 JBCの中央の登録馬が発表されたとき、コーリンベリーとシゲルカガが補欠になっていることにちょっと驚いた。しかし一方で選定馬を見ると、それも仕方ないとも思える有力馬が、6頭の中央枠には詰まっていた。それでも最終的にタガノトネールが回避したことで、繰り上がって出走できることになったのが、補欠1番だったコーリンベリー。ここまで制したタイトルがJpnIIIのかきつばた記念だけということを考えれば幸運だった。コーリンベリーにとっては、その幸運によってつかむことができたビッグタイトルとなった。

 コーリンベリーは逃げ馬にもかかわらずたびたびスタートで出遅れることがあって、フェブラリーSでは1頭だけ大きく出遅れて10着、前走東京盃でもダッシュがつかずに後方からとなって、それでも3着に好走していた。しかし今回はスタートこそ互角だったものの、二の脚のダッシュを効かせて一気に先頭に立った。

 そしてコーリンベリー以上にスタートが注目されたのが、単勝1.6倍の断然人気に支持されたダノンレジェンド。東京盃のように外枠なら多少出遅れても馬群に揉まれることはないが、今回は真ん中より内の6番枠。ひとまず無難なスタートを切って、外から行く気を見せたポアゾンブラックを先に行かせ、3番手の外目という理想的な位置がとれた。前走で快勝しているコースでもあり、これならダノンレジェンドの勝ちパターンかにも思えた。

 逃げたコーリンベリーのペースは、前半3Fが34秒7。ときに33秒台が出る大井1200mのダートグレードでは、決して速い流れではない。さらにこの日は不良馬場とはいえ、水が浮いているほどでもなく、むしろスピードの出やすい馬場状態。逃げ馬にとっては楽なペースで、コーリンベリーは3〜4コーナーで息を入れることができた。4コーナーではダノンレジェンドがコーリンベリーに1馬身半ほどまで迫る場面があったが、直線を向くとすぐにコーリンベリーが3馬身ほどにその差を広げたところで、勝負が決まった。

 直線ではダノンレジェンドも伸びてはいるものの、3〜4コーナーで息を入れられたぶん脚を溜められたコーリンベリーをとらえるまでには至らず。内目を先行した馬が止まらないという、この日の馬場もコーリンベリーに味方したということもあっただろう。3着ベストウォーリア、4着レーザーバレットまで含めて、上り3Fが36秒0〜36秒2という中に収束していることもそれを示している。見事な逃げ切りだった。

 ダノンレジェンドは昨年末のカペラSを12番人気で制して以降、快進撃を続け、唯一の敗戦は、スタートダッシュが決まらず中団からとなった北海道スプリントCだけ。本格化して以降、正攻法のレースで力を出し切って勝つことができなかったのは今回が初めて。出走全馬が目標としてくる頂点のレースゆえの厳しさと言っていいだろう。

 デビュー戦以来のダート1200m戦となったベストウォーリアは3着。スタートでややダッシュがつかなかったが、それでもすぐにダノンレジェンドの直後につけている。やはり得意の1400mと1200mではスタートしてからの流れが違う。そういう意味では善戦の3着だった。

 東京盃2着で復調を見せたドリームバレンチノは、これまで斤量にも苦しめられていたところ、定量になっての好走が期待されたが、4コーナーではベストウォーリアの外を回ってあの位置からではさすがに厳しかった。このあとのJBCクラシックはコパノリッキーが制してJBC15回の歴史で5頭目の連覇となるわけだが、不思議とJBCスプリントは連覇が難しい(2006年のブルーコンコルドはマイル戦として行われての連覇)。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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