◆理論派の伊藤直人、感覚派の亀山泰延
天皇賞を2日後に控えた先週の金曜(10月30日)夜、伊藤直人、亀山泰延の両助手と美浦トレセン近くの韓国料理店「四季」でちょっとした宴会を催した。元ジョッキーでもあるこの2人は93年デビューの同期だが、実は当方の競馬記者デビューも、5年間の内勤から移動となった同年春。年齢こそかなり違うが、いわば同窓会のようなもの。互いに駆け出しのころから顔見知りとあって、20年前の懐かしい競馬談議に花を咲かせた。
とはいえ、この元騎手2人、生まれ持った性格はかなり違う。伊藤直人が理論派なら、亀山泰延は感覚派。田中清キュウ舎所属の“亀ちゃん”がホロ酔いで「いい馬が揃っていれば勝って当然」と突っ込めば、堀キュウ舎所属の直人は「そういう馬で結果を出すのが仕事でしょ」と軽くいなす。さらに亀ちゃんが「その血統馬たちをオレが負かしてやるからな。そしてお前は仕事ができないと言ってやろう」。騎手を辞めてもなおよきライバル。かつ非常に楽しいコンビであり、無二の親友というのが伝わってくる。
ただ、印象深かったのは、ムチを置いた2人が今なお騎手目線で馬を見続けているという点。「競馬の基本は4拍子の襲歩。そして生涯付いて回るハミ受け。これを最も意識しますね。どんな状態で競馬場に連れて行けば騎手が最も乗りやすいか。そこを一番意識して作っている」とは亀山助手。自分ならこういう馬に競馬で乗りたい、そう思う馬を作るのが元ジョッキーのプライドなのだろう。
そして今週はこの注目の2人の意地と意地がぶつかる。「1週前が抜群だったし、一戦ごとに確実に上昇してきた」と亀山助手が勝利を誓う土曜(7日)東京3Rブリリアントタイム(2歳未勝利(牝))。そして、伊藤助手が「スプリンターとしての資質は相当」と胸を張る日曜(8日)福島・みちのくS(1600万下)のサザナミだ。
舞台こそ違えど、勝者となるのはどちらか。次回の宴会では鼻高々に熱い思いを語る姿を思い浮かべて、当方はともに馬券を買ってみるつもり。読者の方々も持ち乗りの助手として第2の人生を歩む2人の馬に注目してほしい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)