(撮影:田中 哲実)
今年のホッカイドウ競馬の2歳馬は本物
それにしてもシビれるレースだった。もちろん自分が本命にしていた北海道のタイニーダンサーが勝ったからということもある。栄冠賞を勝ったときから、2歳馬離れしていただけでなく、単なる短距離馬ではないとも思っていたのだが、今回のレースぶりが、そのことをあらためて示してくれた。
まず驚いたのが、ここまで7戦のキャリアで一度も逃げたことがなかったタイニーダンサーが逃げたこと。最初の3Fは37秒6というやや速めのラップを刻み、その3Fを通過した残り1200mの標識のところで外から来たエネスクに先頭を譲っている。エネスクはそのままペースを落とさずに進んだが、逆に控えたタイニーダンサーはそこで息を入れた。
おそらく多くの馬たちの鞍上が、目標を1番人気のエネスクに定めたのだろう。その後、タービランス、キョウエイギアが追っていき、3コーナーを回るところではタイニーダンサーは4番手。その後タービランスは後退し、4コーナー手前では外からスティールキングが一気に進出。向正面で先頭に立ったエネスク、そして控えたタイニーダンサーの間の2番手、3番手は出入りが激しかった。
直線を向いて、内からエネスク、キョウエイギア、スティールキングと3頭の追い比べとなり、この3頭の争いかに思われた。残り200mを切ったところで前3頭が横一線となり、しかしタイニーダンサーはまだその1馬身ほどうしろだった。
それにしてもタイニーダンサーがゴール前100mで繰り出す末脚はスゴイとしか言いようがない。前走エーデルワイス賞でも、残り200mあたりで外に持ち出し、逃げ切るかに思われたモダンウーマンを最後の100mで交わし去ったが、今回も同じように前の3頭をまとめて差し切った。
とにかくタイニーダンサーの強さが目立ったが、直線3頭の競り合いから一旦は抜け出したスティールキングも強いレースをした。JRAの2頭を振り切ったところで、鞍上の宮崎光行騎手は勝ったと思っただろう。勝ったタイニーダンサーにはわずかクビ差で、3着のエネスクには2馬身差をつけた。
勝ちタイムの1分55秒7(稍重)は、10月14日に同じく稍重の1800mで争われた古馬重賞・瑞穂賞の勝ちタイムとまったく同じ。のみならず、瑞穂賞の上り4Fが53秒5、3Fが39秒7だったのに対し、北海道2優駿は4Fが53秒1で、3Fが39秒8と、ほとんど同じ。この時期の2歳馬が、古馬重賞と同じ質のレースをしたということには驚いた。
例年、ホッカイドウ競馬でデビューする2歳馬はレベルが高いと言われるが、今年は本物だ。JpnIIIのエーデルワイス賞と北海道2歳優駿を連勝したタイニーダンサーが一歩抜け出したことは間違いない。クビ差で2着のスティールキングはここまで1勝のみで伏兵扱いだったが、しかしブリーダーズゴールドジュニアC、サンライズCでは2着に好走していた。ようは、今回の1、2着馬と、これまで重賞で上位を争ってきた馬たちは、いずれも全国区の能力を秘めているといえそう。あとは今後の成長力次第ということになる。
ちなみにタイニーダンサーの上には、北海道2歳優駿2着のホウザン、全日本2歳優駿2着のブンブイチドウ、浦和・桜花賞を制したイチリュウなどの活躍馬がいる。しかしそれらが活躍したのはいずれもせいぜい3歳の春までで、その後に進化を遂げた馬はほとんどいない。タイニーダンサーには3歳以降になっても上積みがあるのかどうか、気になるところではある。