「強い!」としか言葉が出ないような勝ちっぷりだったタイニーダンサー(村本浩平)
◆タイニーダンサーの強さについて角川秀樹調教師、グランド牧場の伊藤佳幸代表に聞いてみました
いきなりですが、クイズです。この原稿を書いている11月8日の時点で最も多くの収得賞金を得ている2歳馬は、メイクデビュー、中京2歳S、小倉2歳Sと3連勝を飾ったシュウジです。では、収得賞金で2位に付けている馬は?
このクイズは普段から地方競馬の動向まで注目している人には簡単ですね! 答えはエーデルワイス賞、そして北海道2歳優駿と、ホッカイドウ競馬で行われた2つの2歳交流重賞を制したタイニーダンサー。クイズの答えが当たった人には、脳内ガバス5ポイントを、北海道からテレパシーでお送りします(笑)。
と、冗談はここまでにして、タイニーダンサーが勝ったエーデルワイス賞と北海道2歳優駿だが、現場で見ていても「強い!」としか言葉が出ないような勝ちっぷりでした。
ダート1200mで行われたエーデルワイス賞では最内で脚をためると、直線では弾けるように末脚を伸ばして、逃げたモダンウーマンを交わして2馬身差の快勝。その時より距離が3ハロン伸びた北海道2歳優駿では、スタート後の位置取り争いでハナを奪うという、まさかの展開。その後、タイニーダンサーはポジションを下げますが、最後の直線では叩き合いをする3頭の外に進路を向けると、エーデルワイス賞を彷彿とさせるような末脚で、先に抜けだしたスティールキングを差しきって重賞連覇。ちなみに過去にこの2つのレースを制したのは、フェスティバル以来、14年ぶりのこととなります。
というところで、クイズ第二問! エーデルワイス賞と北海道2歳優駿を勝ったフェスティバルとタイニーダンサー。この2頭の共通項は?
まあ、これもnetkeiba.comで調べればすぐにお分かりですね。2頭共に生産牧場が、新ひだか・静内のグランド牧場。実はエーデルワイス賞で2着に入ったモダンウーマンもまた、グランド牧場の生産馬となります。
エーデルワイス賞の後、オーナーかつ、生産者でもあるグランド牧場の伊藤佳幸代表に話を聞かせてもらいましたが、「この2歳世代から生産頭数を減らしたことで、1頭辺りの運動量を広く取れるようになっただけでなく、セリ馴致を通した個体管理もまた、丈夫かつ、後期育成(騎乗育成)に繋がる馬作りができたと思います」と教えてくれました。
なるほど! と思った皆さん、ホッとしている場合ではありませんよ! クイズ第三問! 今年の北海道2歳優駿を制したのはグランド牧場の生産馬であるタイニーダンサーですが、2着に入ったスティールキング、そしてエーデルワイス賞の2着馬モダンウーマンも含めた3頭の共通項は?
まあ、これもnetkeiba.comで調べれば(以下略)。3頭共にホッカイドウ競馬の角川秀樹厩舎の管理馬となります。この結果にも証明されているように、今年、ホッカイドウ競馬の2歳重賞戦線は角川厩舎一色で染められた、と言っても過言ではありません。北海道2歳優駿のレース後、角川調教師にも話を聞かせてもらいましたが、「この世代だけ特別なことをしたわけではありません」との意外な答えが返ってきました。
しかし、その後には、「強い馬が揃ったことで、普段の調教から高いレベルの調整が行えたのは事実だと思います。また、(調教コースの)屋内坂路効果も大きいですね」とも話してくれました。グランド牧場の生産馬に代表されるような、幼少期から健康に育てられた馬を、角川先生のような高い技術力を持った調教師が鍛え上げ、そこに屋内坂路に代表される、ハード面の強化も加わってくる。そう思うと、タイニーダンサーに代表される、角川厩舎に所属する2歳馬たちの活躍も納得が行くところです。
タイニーダンサーだけではありません。地方競馬、特に南関東の2歳戦をご覧の皆さんならお分かりでしょうが、年末にかけてホッカイドウ競馬に所属していた2歳馬たちが続々と転厩し、そして次の年のクラシック戦線では主役となっているという事実。ホッカイドウ競馬を象徴する言葉で、「地方では日本一レベルの高い2歳戦が行われている」とは、この結果を見ても揺るぎないどころか、年々レベルを上げているとも実感させられます。
タイニーダンサーですが、今後は美浦の伊藤圭三厩舎へと移籍予定。鞍上を務めた桑村真明騎手からは、「函館2歳Sでは4着に敗れていますが、芝でも充分に対応できる馬」との話も聞かれていますし、賞金面でクラシック出走権をクリアしている以上、POGファンにも今後の動向が気になるところでしょう。気になる次走はまだ未定ですが、もし、全日本2歳優駿に出走してきたのなら、クイズ第四問! として、
「ホッカイドウ競馬在籍時に北海道2歳優駿を優勝。その後、全日本2歳優駿を勝利した馬にはハッピースプリントがいますが、それ以来となるダブル2歳優駿の優勝馬は?」
との答えが、「タイニーダンサー!」となることを期待せずにはいられません。