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2016年ケンタッキーダービーの前売り馬券「フューチャー・ウェイジャー」

  • 2015年12月02日(水) 12時00分


アメリカンフェイローのフューチャー・ウェイジャー・プール1での単勝配当は13倍

 アメリカで11月26日から29日まで、来年のケンタッキーダービー(5月7日、チャーチルダウンズ)へ向けた「フューチャー・ウェイジャー」の第1回目(プール1)が行われた。

「フューチャー・ウェイジャー」とは、前売り馬券のことだ。イギリスのブックメーカーが「アンティポスト・ベット」という名称で売っている、3歳クラシックをはじめとした来年のビッグレースを対象とした前売りと同じ主旨の単勝馬券だが、ブックメーカーたちが各々固定のオッズを掲げて売るイギリス式の前売りに対して、我々日本の競馬ファンにもお馴染みの「パリミューチュアル方式」で売るのがアメリカの「フューチャー・ウェイジャー」である。

 具体的に言えば、主催者が現段階でケンタッキーダービーの有力馬と思われる23頭を抽出し、彼らに1番から23番の馬番をつける。更に、23頭以外の馬を24番枠に一括りにし、23頭以外の馬が勝てば24番枠の単勝が的中となる。そういう24頭立ての競馬を対象とした単勝馬券を、11月26日から4日間という期間限定で発売し、主催者が一定の控除を行った上で、残りを的中者に分配するというのが、「フューチャー・ウェイジャー」の仕組みである。

 ちなみに、今年のケンタッキーダービー馬アメリカンフェイローは、フューチャー・ウェイジャー・プール1の段階で既に有力馬23頭の1頭に挙げられており、単勝配当は13倍で、個別の馬の中では2番人気だった。ケンタッキーダービー当日の同馬のオッズは3.9倍だったから、プール1で先物買いをしていたファンは、相当においしい配当を手にしたことになる。

 プール1では、1番人気に支持されるのは「その他の馬」というのがお決まりで、今年も24番枠がオッズ1.7倍で1番人気に。これに続く2番人気(10.9倍)で、個別の馬では最も高い支持を集めたのが、ナイクィスト(父アンクルモー)だった。

 ファシグティプトン・フロリダ2歳セールにて40万ドルで購買された同馬。西海岸のダグ・オニール厩舎に入り、6月5日にサンタアニタで行われたメイドン(d5F)でデビュー勝ちを飾ると、破竹の快進撃で5連勝。その5連勝目となったのが、10月31日にキーンランドで行われたG1BCジュヴェナイル(d8.5F)で、初めての遠征、14頭立ての12番枠をいうハードルを乗り越えて優勝を果たしている。デビュー戦の着差が頭差、G1初制覇となったG1フロントランナーSが3/4馬身差、そしてBCジュヴェナイルが1/2馬身差と、勝ち方に派手さはないが、競って負けない勝負強さを持つ馬である。父は11年にBCジュヴェナイルを制し全米2歳チャンピオンとなったアンクルモーで、母の父が7FのG1キングズビショップ勝ち馬フォレストリーだから、距離の延長に若干の不安を抱えた馬と言えよう。

 オッズ12.5倍の2番人気が、母がG1エイコーンS2着馬で、半兄にBCジュヴェナイル勝ち馬ニューイヤーズデイがいるという、極上の血統背景を持つモヘイネン(父タピット)。キーンランド9月市場にて220万ドルで購買された同馬は、デビューから2連勝でG2ナシュアS(d8F)を制した後、フューチャー・ウェージャー・プール1の発売期間中に行われたアケダクトのG2レムゼンS(d9F)も快勝。無敗の3連勝を達成している。

 オッズ19倍の3番人気が、西海岸でナイクィストに次ぐナンバー2の座にあるスワイプ(父バードストーン)だ。1/2馬身差の敗戦だったG1BCジュヴェナイルを含めて、重賞競走でナイクィストの2着になること4回という戦績を持つのがスワイプである。この馬、キーンランド9月1歳市場にて、なんと5千ドル、当時のレートで約54万円という、飛び切りの安値で購買されている馬で、それゆえ判官贔屓のファンの支持も集めている。

 オッズ22倍の4番人気が、キーンランドのG1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)勝ち馬で、BCジュヴェナイルが3着だったブロディーズコーズ(父ジャイアンツコーズウェイ)。この馬は、祖母スイートロベルタがG1BCジュヴェナイルフィリーズ2着馬という血統背景を持ち、BCジュヴェナイルにて35万ドルで購買されている。

 ケンタッキ−ダービーへ向けたフューチャー・ウェイジャーはこの後、2月12日から14日にかけてプール2、3月11日から13日にかけてプール3、4月1日から3日にかけてプール4が発売される予定だ。

 クラシックの長期前売りというのは、筆者がかねてから、POGという文化の根付いた日本でこそ発売して欲しいと提唱している馬券である。ことに、北米で行われているパリミューチュアル式の前売りは、システムの運用面ではすぐにでも実行できるものだけで、発売へ向けた動きが出て来ることを期待したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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