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A.アッゼニ騎手(3)『今週末がラスト騎乗 日本の競馬に対して思うこと』

  • 2015年12月21日(月) 12時01分
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▲約2か月間の来日も、今週末がラスト騎乗。最後に語るのは「日本の競馬」について


今週末が日本でのラスト騎乗となるアッゼニ騎手。最後まで勝利を増やして、この遠征をいい雰囲気で締めくくりたいと意気込んでいます。そこで、アッゼニ騎手の“買い”レースはどれなのか? ご自身に得意条件を分析してもらうと共に、ここまで乗ってみて日本の競馬に対して思うことなど、率直な気持ちを聞かせていただきました。(取材:赤見千尋)

(前回のつづき)

日本のジョッキーはキレイな騎乗をしますね


赤見 プライベートなこともお聞きしてみたいのですが、日本に来られて普段はどういうことをして過ごされているんでしょうか?

アッゼニ それが…、これと言って話せるようなことがなくて(苦笑)。ちょうど紅葉のシーズンでしたし、京都も近いので、観光に行ければよかったんですけど、結局タイミングを逃してしまいました。最近は水、木、金の朝調教に乗せていただき、金曜日に調整ルームに移動という日々を過ごしています。日本という新しい環境の中で、勝つために何をするべきかを考えながら朝の調教に乗っています。イギリスではほぼ毎日レースなんですが、日本では週末のみレースという環境に自分を置くことを、すごく楽しんでいますよ。

赤見 初めての環境で不安はないですか?

アッゼニ それはないですね。だって、繰り返しになりますが、日本の人たちはとにかくナイスで、みんな良い人ですから。日本に来て思ったことは、まず街がきれいで、電車が時間通りに来ること。それは日本がちゃんとしている証拠ですよね。競馬にも表れていると思います。トレセンもレーストラックもキレイだし、もっと言うと、みんなが使うトイレだってキレイ。とても素晴らしいと思います。だからまあ、楽しんでもらえるような話題がなくて申し訳ないんですけども、日本自体は大好きなんです。あっ、ミルコとはよく遊んでいますけどね(笑)。ミルコは京都に住んでいるので、京都でディナーをしたりして。

赤見 6年前からのお知り合いとおっしゃっていましたもんね。お会いするのは久しぶりだったんじゃないですか?

アッゼニ 多分、8か月ぶりくらいですね。ミルコから日本で通年免許を取りたいって聞いた時は、素晴らしいことだと思いました。日本の競馬に外国人ジョッキーが乗るチャンスがあること自体素晴らしいし、日本のジョッキーとして乗るというのが素晴らしい。それに、ミルコは何度も何度も日本に来ていて、日本が大好きなのもよく知っていましたからね。

赤見 日本の競馬ファンも、デムーロ騎手に親近感を持っている方は多いと思います。

アッゼニ そうなんですね。それは彼にとっても、とても良いことじゃないでしょうか。友人として久しぶりに彼の姿を見て、日本での生活が充実しているのが伝わってきました。そうだ! ミルコたちとイタリアンに行ったり焼き肉に行ったりしているんですけど、ある日衝撃的なことがあったんです。ワサビ………、あれがもう、本当に衝撃でした!

赤見 初めて口にされたんですか??

アッゼニ 一度、アメリカのジャパニーズレストランで、においを嗅いだことはあるんです。それはそれはびっくり。「こんなもの、一生嗅ぐか!!」って誓ったんですけど、この前、知らないで食べちゃったんです…。えらい目に遭いました。あんな思いは二度とイヤ。(目の前にあるサンドイッチを見て)まさか、ワサビ入ってないですよね!?(笑)

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▲「ワサビを知らないで食べちゃった…。あんな思いは二度とイヤです」


赤見 アハハハ(笑)。相当な衝撃だったんですね。お寿司はお好きなんですよね?

アッゼニ 大好きです。イギリスの自宅の近くにお寿司屋さんがあって、週に一度は行きます。もちろんサビヌキでね(笑)。イギリスのお寿司も好きなんですけど、本場日本のお寿司はさすがに違いますね。すごく美味しくてびっくり。

赤見 日本を楽しんでもらえて嬉しいです。

アッゼニ 食べ物は本当に美味しいですね。あとは、これは競馬に関係することですけど、北海道の牧場に行かせてもらいました。ディープインパクトを見に社台ファームさんに行ったんです。キレイなスタリオンですね。しっかり整備されていて、素晴らしいと思いました。ディープインパクトの他に、ワークフォース、ハービンジャー、キングカメハメハ、あとオルフェーヴルも見せてもらいましたよ。

赤見 豪華な顔触れ。ディープインパクトはもともとご存じだったんですか?

アッゼニ 知っていました。日本の名馬ですからね。オルフェーヴルやジャスタウェイも知ってましたよ。

赤見 さて、日本での騎乗もわずかとなりましたが、日本の競馬のポイントというのは掴んでいらっしゃいますか?

アッゼニ う〜ん、日本の競馬はペースが速いときもあれば、すごくスローになることもあって、難しいですね。全体のペースという意味ではイングランドとそれほど変わらないんですけど、日本の競馬はゲートを出たらすぐに速いペースになって、いったんスローに落ちて、また速くなるじゃないですか。そういう緩急がイングランドとは違います。まあ、勝敗を分けるポイントはいろいろあるので一言で言うのは難しいですけど、僕個人のことで言うと、芝の長距離戦が一番得意ですね。一番好きなのは2000mです。

赤見 おおっ! 馬券ファンにはありがたいヒントです。長距離レースですと、ジョッキー同士の駆け引きというのもあると思うんですが、日本人ジョッキーのレース運びというのはどのように感じますか?

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▲「芝の長距離戦がお得意なんですね! ありがたいヒントです」


アッゼニ 駆け引きがどうというより、日本のジョッキーはみんな、すごくキレイな騎乗をしますね。例えば、道中でレーンを変える時も、前後左右をきちんと見ていますし、斜行も少ないですよね。それは、日本の裁決がきちんとしていて、ジョッキーたちもルールを守っているからじゃないでしょうか。だからレースが変にトリッキーになることもないですし、危険もだいぶ防げているんだと思います。

赤見 裁決のポイントは国によって違いがあると思いますが、そういう意味での違和感というのは感じないですか?

アッゼニ 違和感はないです。何でかと言うと、「ぶつかってはだめ」「まっすぐ走らせる」「鞭の回数」って決められているので分かりやすいですよね。それは良いことだと思いますし、自分もクリーンな競馬をするように意識しています。

赤見 日本人ジョッキーの中で、「この人はすごいな」って思う人はいますか?

アッゼニ 武豊さんですね。短い期間しか日本にいないので、すべてのジョッキーを深く知っているわけではないですが、豊さんは本当に素晴らしい。お会いする前から映像などでレースを見させてもらっていましたけど、豊さんは馬との呼吸がすごく良いですよね。実際に一緒に乗ってみて、思っていた以上にグレイトなジョッキーです。

赤見 最後になりますが、日本での騎乗の後はまた違う国で騎乗されるんですか?

アッゼニ まずは数日のホリデーを取って、体と心をリフレッシュさせて、その後はドバイで騎乗する予定です。向こうはレースが週に1回くらいしかないので、その都度乗りに行くというスタイルですね。その後は、イングランドに戻ります。これからも日本をはじめ、世界中で騎乗したいと思っています。これまで応援してくださった日本のファンのみなさんに感謝していますし、また日本に来られたときには応援してもらえると嬉しいです。(了)

【更新スケジュールのお知らせ】
いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。年内の更新は今回が最後となり、年明けの初回は1/11(月)を予定しています。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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