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未来への展望を抱かせる朝日杯(辻三蔵)

  • 2015年12月22日(火) 18時00分


◆調教傾向を調べてみても中距離適性が試されている朝日杯

 今年の朝日杯FSはリオンディーズがデビュー2戦目でGI制覇を果たした。1986年以降、朝日杯FS(前身の朝日杯3歳S含む)をキャリア1戦で使った馬は17頭いるが、勝ったのはリオンディーズ1頭だけ。1戦1勝馬が出走するケース自体が珍しく、入着実績を探しても1988年の朝日杯3歳S(スクラムトライ2着)以来になる。

 所属する角居厩舎は阪神ジュベナイルFを2勝しているが、朝日杯FSを勝ったのはリオンディーズが初めて。近年は2歳GIに使うケースが少なく、2010年の朝日杯FS(3着リベルタス)以来、5年ぶりの参戦だった。

 将来性を見据えてローテーションを組む角居厩舎が朝日杯FSを選択したのは3歳クラシック路線との関連性が高まっているからだろう。

 その証拠に今年の朝日杯FSはリオンディーズとエアスピネルの一騎打ちになったが、3着以下を4馬身引き離した。総合能力の差が明確に出ており、上位2頭はクラシック路線、3着以下の馬はマイル路線に進む二極化の構図が広がっている。

 調教傾向を調べてみても中距離適性が試されている。2014年以降、栗東CWコースで直前追い切りを行った馬が好成績を収めており、昨年の1〜3着馬は栗東CWコース調教馬。1着のダノンプラチナは美浦・国枝厩舎に所属しており、短期間の滞在調整で好結果を出したことからも適性の高さを感じる。

 今年、栗東CWコースで追い切った馬はリオンディーズ1頭だけ。外回り特有の上がり勝負に対応するためには、栗東CWコースの瞬発力強化が不可欠。直線での攻防を意識して併せ馬で先着し、闘争心を促すのも必要だ。

 来年以降の参考のために、好走調教データを記しておきたい。

 栗東CWコースの好走時計は[4F52-53秒台、3F38-39秒台、1F12秒前半]。

 2014年以降、栗東CWコースの調教パターンを4F53秒8以内、3F39秒9以内、1F12秒5以内、コース取り:5分以上、併せ調教:併せ先着と設定した場合、[1-1-1-0]と複勝率100%。

 リオンディーズは競馬新聞の調教欄では単走表記になっているが、実質的には併せ馬。併せる予定だった同厩舎の僚馬を向正面で抜いたが、前を走っていたアドマイヤデウス(松田博厩舎)の直後に入れることで落ち着きを取り戻した。直線では前方を走っていた松永昌厩舎の併せ馬に目標を切り替えると、大外から一気に抜き去った。

 調教時計は[4F53秒8-3F39秒9-1F12秒4 馬なり]。

 手綱を取ったM.デムーロ騎手は引っ掛かっても無理には抑えず、馬のリズムを優先した調教を選択する。形にはこだわらず、三段構えの併せ馬をこなしていた。

 マイルGIにも関わらず、長距離戦に向く栗東CWコースの「6F追い」が効果的なのは皐月賞、日本ダービーに直結する傾向が強まった証拠だ。

 完成度ではなく将来性、スピードよりスタミナが問われるようになった朝日杯FSは来年のクラシックに希望を抱かせるGIレースに変貌した。

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