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戸崎圭太騎手(2)『2015年のベストレース&ワーストレース』

  • 2016年01月18日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲戸崎騎手が選ぶ2015年のベストレース&ワーストレースとは


130勝(JRA)を挙げて、2015年のリーディングジョッキーに輝いた戸崎騎手。その中で最もうれしかったベストレース、悔しかったワーストレースをご自身に選んでいただきます。未だに歯がゆい思いをしている一戦とは。そして、トップジョッキーが憧れるジョッキーも明らかに。ひそかに抱いている思いとは。(取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

タイトルを獲れていないのが申し訳ない


赤見 昨年は130勝を挙げてリーディング獲得。一昨年もリーディングを獲られていますが、その重みやプレッシャーは感じていましたか?

戸崎 リーディングというのは、その年だけでも獲ること自体大変だとは思うのですが、昨年は一昨年(146勝)より勝ち鞍のペースが落ちていたので、プレッシャーというか、なかなかうまく行かないなっていうのは感じてました。でも、そういうことは考えすぎても仕方ないので、目の前の1戦1戦を大事に乗るようにはしていましたね。

赤見 ひとつひとつ積み重ねての130勝ですが、中でも昨年の最後の日、あれはすごかったです。(騎乗機会)5戦連続1着! さすがにあの時は、何をやってもうまく行く感じだったんじゃないですか!?

戸崎 いやいや、そこまでではないんですけど、ポンポンとリズム良く勝つことは出来ました。それでも1戦1戦の戦いですので、なるべく平常心でいるようにはしていました。

赤見 結構周りからも、声を掛けられていましたもんね。人気馬だけでなく、6番人気の馬でも勝ったじゃないですか。あの時は、見ている私たちも“ふーっ”てなりました。あの日は本当にすごかったです。あそこまでいくと、どういうお気持ちなんですか?

戸崎 もちろんうれしいですし、自分はこんなにも良い馬に乗せてもらっているんだなって、改めて思いましたよね。ただ、あともう1つ勝てていれば、連続勝利のタイ記録でしたからね。そこで獲れないっていうのが…、やっぱり僕はまだまだなんだなって痛感しました。

赤見 でも、2着ですよ。

戸崎 いや、2着ではだめなんですよ。やっぱり1着じゃないとね。その日まで勝利数と賞金もトップだったので、一緒に獲れればと思っていたんですけど、最後の最後の日に逆転されてしまったという。それもすごく残念だなと思いました。

赤見 最終的にはミルコ・デムーロ騎手が最多賞金でしたもんね。いろいろなレースがあったと思うのですが、この130勝の中で、ベストレースを選ぶとしたら何になりますか?

戸崎 ストレイトガールのスプリンターズSですね。思ったよりも位置取りが後ろになってしまったので、焦りは少しあったんですけど、馬が「安心して」って言ってくれている感じがして。自分が勝手にそう思っているんですけど(笑)、良い手応えで行けました。狭いところを抜け出る根性もすごかったですし、あの切れ味も気持ち良かったです。馬のおかげで良いレースを経験できました。

おじゃ馬します!

▲同馬でヴィクトリアMにつづきGI2勝目(撮影:下野雄規)


赤見 では、悔しいワーストレースは?

戸崎 まあ、それはたくさんあるんですけど、一番はルージュバックの桜花賞ですね。あれはやっぱり、自分の中でも悔しさの残るレースというか、歯がゆい思をしたレースでした。

赤見 具体的にはどのあたりが?

戸崎 なんせもう、位置取りがあんな後ろからになってしまったので。自分でも「何してんだ」っていう感じでしたからね。あれだけの馬で人気もすごかったですし、たくさんの方にご迷惑を掛けてしまいましたし、今でも申し訳ない気持ちです。

赤見 あの桜花賞は、無敗で挑むということで特別な熱狂がありましたもんね。そういう部分ではどうでしたか?

戸崎 あまりプレッシャーを感じないように、なるべく落ち着いてとは思っていたんですけども、どうしても大きなものは感じてましたよね。「勝たなければいけない」というのもあったレースでしたので。ルージュバック自身、良い馬ですからね。繊細なところはあるんですけど、素直ですし、すごく乗りやすいです。何より、力もありますしね。それなのにタイトルを1つも獲れていないというのが、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

おじゃ馬します!

▲牡馬を蹴散らした、きさらぎ賞優勝時のルージュバック


月と太陽、どちらを目指すか


赤見 JRAに移籍して4年目に入りましたが、これまでの3年間を振り返って、ご自分の中で変化はありますか?

戸崎 自分としては、すごく変わってるなっていう感じはしています。やっぱり、地方と中央とは競馬場も違えば、競馬のスタイルも違います。そういうあたりは、昨年あたりからようやく掴めて来たかなという感じですね。その手応えを持って、これからさらに成長して行きたいです。

赤見 同じ競馬とは言え、そこの違いは結構感じているんですね。

戸崎 地方もレースのポイントはいろいろあるんですけど、簡単に言うと「先行して」というところだと思います。でも、中央は頭数も多いですし、特に芝だと馬場のどこを通るかというのも重要ですからね。コースも、幅が広かったり、直線が長かったり、最後には坂あったりって、考えるポイントがいろいろあります。

赤見 血統やレースのパターンなど、いろんな選択肢がありますもんね。

戸崎 そうですね。地方の時は正直、能力が抜けている馬に乗せてもらうことも多かったですが、今は横一線なレースなので、1つのミスが最後に響いてくるというのがありますよね。だから、事細かく考えて乗らなきゃいけない。それこそ、地方では感性や本能で乗っていたところもありましたが、中央では通用しないですね。

赤見 そうすると、この馬ではこういうレースをしたとか、かなりの情報を把握されていますよね?

戸崎 そう、なんですかね? 馬名を見たら思い出しますし、分からない時でも映像を見れば、「あぁ、こういうレースだったな」っていうのは分かりますね。でも、どうなんだろう? まだまだかなって思いますけどね。ライアン(ムーア騎手)なんて、ものすごいですよ。本人からいろいろ話を聞きましたけど、自分の馬の癖、他の馬の癖、騎手の癖というのを把握してるんです。本当に細かいところまで研究していて、いざ乗ればあれだけの騎乗をしますからね。プロフェッショナルだなと思います。勉強させられますし、すごく刺激になります。

赤見 いまや外国人ジョッキーがものすごく増えましたけど、意識されますか?

戸崎 意識というよりは「どんな騎手なのかな?」っていうのを見ていて、良いところは盗みたいと思いますね。その中でもやっぱり、ライアンですよ! 僕、ライアンのことが大好きなんでね。すごくいいやつだし、ジョッキーとしてもとても尊敬してます。

赤見 大好きなんですね。ムーア騎手って、物静かなイメージがあるんですけど、たまに笑うとドキッとします(笑)。

戸崎 わかります(笑)。クールでかっこいいですよね。僕も本当はああいう路線で行きたいんですけど…、どうしてもボロが出ちゃうんです。

赤見 戸崎騎手のキャラクターも、すごくかっこいいですよ。おふたりがどんなふうに会話してるのか見てみたいです。

戸崎 うん、まぁ、通訳さんを通してですけどね(笑)。それでも、今は少しは話せるようになってきたので、直接話しかけます。ライアンは「こいつ、分かってないな」って嫌な顔してますけどね。でも、僕はそういうの全然平気なのでどんどん話しかけます(笑)。ライアンも優しいので、付き合ってくれますね。

赤見 戸崎騎手は本当に社交的ですね。明るい感じで、太陽みたいです!

戸崎 僕が太陽ですか!? ありがとうございます!

赤見 ムーア騎手は、どっちかと言うと月みたいな感じですかね。

戸崎 月、そうですね。静かにクールに輝いている感じが。僕も月を目指しますわ!

赤見 えっ!? 戸崎騎手はいつまでも太陽でいてください!

(次回へつづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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