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5度目の正直

  • 2004年07月26日(月) 21時03分
 7月20日、川崎「スパーキングレディーC」は、人気のJRA馬2頭による決着だった。ただし、勝ったのは交流重賞チャレンジ5戦目、今回初タイトルとなったグラッブユアハート。道中中団よりやや後ろでじっくり構え、直線外から豪快な差し切りを演じている。対レマーズガール、4戦4敗。どうにも分が悪かった相手に、この夜は秘策をもって臨んだ安藤勝己騎手。「手応えほど伸びないことが多かったので、あえて終いの脚に賭けた。切れますね。この戦法が合っている」。終わってみれば鮮やか、お見事というしかないだろう。

 レマーズガールはいつも通り好位からの正攻法で、直線もそれなりに伸びている。好走でも凡走でもなく、今回に限っていえば、相手の“ワザ”に屈した形か。3歳トーセンジョウオーは無理なく先行態勢をとり、4コーナーで先頭に並んだものの、そこから案外伸びなかった。地方側の伏兵プルザトリガー(11番人気)、バハムート(13番人気)が、3、4着と健闘。JRA移籍3戦目、張田騎手で臨んだジーナフォンテンは中団のまま精彩を欠き、逆に川島正行厩舎トレード、再生を期したロイヤルセランガーは、好位からジリ下がりに終わった。

 スパーキングレディーC(サラ3歳以上牝馬 別定 交流G3 1600m良)

△(1)グラッブユアハート (55・安藤勝) 1分41秒0
▲(2)レマーズガール   (57・武豊) 3/4
 (3)プルザトリガー   (55・山中) 1/2
 (4)バハムート     (55・柴山) 1/2
◎(5)トーセンジョウオー (53・蛯名) 首
…………………………………………
○(7)ジーナフォンテン  (57・張田)
△(13)ロイヤルセランガー (52・内田博)

 単450円 馬複400円 馬単1160円
 3連複26080円 3連単109990円

 レマーズガールvsグラッブユアハート。昨年9月、金沢「サラブレッドチャレンジC」が初対戦で、以後TCK女王盃(大井)→エンプレス杯(川崎)→マリーンC(船橋)。コース、距離、斤量、それぞれ微妙に違ったものの、結果はすべてレマーズの完勝だった。同世代のライバルではあるが好敵手ではない。しぶとくしたたかなレマーズに対し、グラッブはいささか非力。普通このケースで“5度目の正直”は起こりにくい。だから今回は馬自身というより、アンカツの勝利という方が正解に近いだろう。敗戦を次につなげる。どう乗ったらベストか、常に冷静に先を見ている。馬に頼った力まかせの競馬はけっしてしない。ごく客観的に、当代No.1ジョッキーと確信する。

 ただし1600m1分41秒0の勝ち時計。当日最終レースB2が41秒7だから、名勝負というには正直遠い。先行したプルザトリガー、追い込んだバハムートの3、4着も、全体が凡戦と考えると評価に迷う。本命に推したトーセンジョウオー。道中抜群の手応えで3番手。ブルーロバリー先導のスローなら、そこで一気に入ってしまった方がよかったかもしれない。むろん結果論。パドックの好馬体は相変わらずで、こと牝馬路線に関していえば、近い将来逆転がイメージできる。ジーナフォンテンは、どうやらJRA移籍が失敗だったか。パドックから落ち着きがなく、相性のいい張田騎手の手綱にも終始反応が鈍かった。ロイヤルセランガーはスタートひと息で、そこで砂をかぶってしまった。初ダートによくあるケース。前肢が発達した体型はダート向きだが、はたしてその気性がどうか。今日大敗のショックを引きずってしまうと、今後も手探りの戦いになる。

     ☆     ☆     ☆

 2歳馬情報。7月24日、川崎2勝馬ツインイーグルが函館「ラベンダー賞」に挑戦、結果7着ながら初の芝とすると悪くない走りだった。父ディアブロ、池田孝厩舎。チャレンジの心意気。いずれにせよ、南関4場では川崎勢が一歩リード。現実にツインイーグルと互角、あるいはそれ以上の素質を感じさせる馬が何頭か現われている。

ミライ(牝・安池厩舎、父トーヨーリファール、その父ロイヤルコーチ)
ヒカリトリアネー(牝・池田厩舎、父ヒカリバオー、その父シャルード)
カネショウハヤブサ(牡・照沼厩舎、父パークリージェント、その父フェアジャッジメント)

 ミライは、7月18日の新馬戦を900m54秒7、今年の2歳馬一番時計、それも後続を8馬身ちぎる圧勝だった。3歳上の姉にカコ(トゥインクルレディー賞2着)がいる良血で、460キロ台の馬体も伸びやかかつしっかりしている。マイルあたりで自在のスピードが生かせそうなタイプ。カコの下がミライとはなにやらネーミングもほほえましい。

 ヒカリトリアネーは、デビュー戦を55秒3で圧勝後、距離延びた2戦目1400mを1/2馬身差の2着だった。父系がイージーゴアにつながる力の血統。池田厩舎は当初この馬を新潟「マリーゴールド賞」に登録。480キロ台、まだ余裕残しの馬体にも期待の大きさが伝わってくる。

 カネショウハヤブサは、そのヒカリトリアネーをゴール際鋭く差した。叩き2戦目、牡馬の強みという面もありそうだが、パワーと瞬発力を感じさせるタイプ。今後の動向を注目したい。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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