(撮影:高橋正和)
さらなる記録更新の可能性は十分
川崎競馬場は一昨年12月の開催の前に馬場改修を行い、それ以降は以前より1〜2秒タイムが余計にかかっていると書き続けてきたが、どういうわけかこの開催は良馬場にもかかわらず全体的にやや速いタイムでの決着となり、馬場改修以前と同じようなタイムに戻ったようだ。
人気通りの決着が多い川崎記念だが、今年も人気を集めたGI勝ち馬2頭の決着。着差アタマ差、レース内容としても2頭の一騎打ちだった。
逃げたのはサミットストーンで、後続を離しての単騎の逃げ。一昨年、トウショウフリークが大逃げを打ったときほどではないものの、この距離を考えればやや速いペースで、それゆえかなり縦長の展開。昨年、うしろの何頭か以外は前半ほぼ一団となって進んだときが、900m(1周目のゴール板)通過が57秒5という、メンバーを考えれば落ち着いたペースだったのが、今年は55秒5というもの。その流れを、ホッコータルマエはかなり離れた4番手、サウンドトゥルーはさらにうしろの7番手を追走した。
レースが動いたのは2周目の向正面。ペースが落ちたところでサウンドトゥルーがラチ沿いからホッコータルマエを一気にとらえにかかった。前のペースはやや速かったとはいえ、そこから7〜8馬身も離れた位置を進んだホッコータルマエにしてみれば楽なペースで、サウンドトゥルーが並びかけてくると加速して再び突き放した。
直線を向いて、ホッコータルマエが前の2頭、サミットストーン、マイネルバイカをとらえて先頭に立つと、追ってきたのはサウンドトゥルー。じわじわと差を詰め、とらえられるかという勢いだったが、ホッコータルマエもサウンドトゥルーが伸びてくる分だけ脚を使ってアタマ差でしのぎきった。
ホッコータルマエはこれで川崎記念3連覇となり、一昨年が2着のムスカテールに1/2馬身、昨年がカゼノコに3/4馬身と、いずれもわずかな差。とはいえ過去2年が格下相手で着差以上に楽な勝ち方だったのに対して、今回はレース内容としては価値のあるもの。レースの上り3Fが39秒0であるのに対して、一騎打ちとなった2頭の上りはともに37秒2。直線、他馬が止まって見えた、というのはさすがに言いすぎだが、見た目の感じとしてはそれに近いもの。4コーナーではサウンドトゥルーの直後にアムールブリエがいたが、ゴールでは4馬身差をつけていた。
秋のダートGI/JpnI・3戦では、常にサウンドトゥルーの後塵を拝していたホッコータルマエだったが、ようやく逆転して王位復権となった。秋3戦との違いは、レースのしやすさだっただろうか。これまでは常にコパノリッキーをみずから負かしに行かなければならず、うしろにいるサウンドトゥルーに目標にされた。今回もサウンドトゥルーはうしろにいたが、緩みのないペースでレースが流れていたため前の馬たちはほとんど気にする必要がなく、うしろから仕掛けてくるサウンドトゥルーだけを気にかけてレースを運ぶことができた。
昨年の帝王賞を勝って以降、やや足踏みが続いたホッコータルマエだが、ようやくGI/JpnI勝利の記録更新となる10勝目。ヴァーミリアンが8歳1月の川崎記念、エスポワールシチーが8歳11月のJBCスプリント(金沢)でそれぞれ9勝目を達成していたことを考えると、ホッコータルマエは今回のレース内容からも、何より7歳という年齢からも、さらなる記録更新の可能性は十分といえそうだ。
このあとはドバイワールドCに3度めの挑戦となるようだが、過去に海外の同じレースに複数回出走した馬では、ジャガーメイルが香港ヴァーズに4回、コスモバルクがシンガポール航空国際Cに3回、エイシンプレストンが香港クイーンエリザベスII世Cと香港Cに2回ずつ(香港マイルも合わせると計5回)という記録があるが、ホッコータルマエも実際に遠征が叶えば、それらに匹敵する記録といっていいだろう。あとは世界最高峰のレースで結果が残せるかどうか。
サウンドトゥルーもダートのチャンピオン級のレースで確実に上位を争えるようになり、2着に負けたとはいえ評価を落とすものではない。
アムールブリエはサウンドトゥルーと同じような位置を進んで、最後の瞬発力勝負で置かれてしまった。前走で名古屋グランプリを制していたとはいえ、牡馬の現役バリバリの一線級とは今回が初めての対戦で、今後に期待を持てるレースを見せた。牝馬同士ならもちろんのこと、牡馬相手でも2000メートル以上ならチャンスはあるだろう。ホワイトフーガが不在となるであろうエンプレス杯なら確勝級だが、登録が発表されたドバイワールドCに遠征するのかどうか。
マイネルバイカは2番手を追走したものの、さすがにペースが厳しく、直線脚が上がっての4着。力は出し切った。
相変わらずスタートのよくないカゼノコは、押して行っても最後方に近い位置からの追走で、しかも1、2着馬に上り37秒台前半の脚を使われてしまってはどうにもならない。上り38秒3と、この馬の持ち味は発揮している。
地方馬では、最先着が6着のケイアイレオーネで、サミットストーンがハナ差の7着。昨年の川崎記念では直線を向いても先頭で3着に粘ったサミットストーンだが、今回は1周めのゴール板を過ぎて13秒台後半から14秒にうまくラップを落としたにもかかわらず、4コーナー手前ですでに手ごたえは一杯だった。浦和記念でハッピースプリントの2着があったとはいえ、昨年4月のアンタレスSで外傷などがあっての大敗以降、どうも調子が戻ってこない。