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夏に鍛える

  • 2004年08月02日(月) 18時19分
 7月26日、大井「サンタアニタトロフィー」は、トミケンマイルズの圧勝だった。1000m通過59秒2、超のつくハイペースを3番手で進み、直線中ほど、鞍上が軽く気合をつけると一頭別次元の伸びをみせた。結局2着に4馬身差。1600m1分38秒5は、昨年コアレスハンター(1590m)と同タイム。重賞初勝利ながら、内容は交流重賞レベルに遠くない。マジックマイルズ×トウショウボーイの4歳馬。この血統らしいスピード、瞬発力にいよいよ磨きがかかっている。

 2着は、先行したロッキーアピール、中団から伸びたナイキゲルマンの接戦で、最後追うものの強みで後者が入った。前がやや壁になった感じのウエノマルクンが4着。半年ぶりジェネスアリダーが底力で5着。期待したネイルアートはいつも通り殿りから直線勝負に賭けたが、本来の切れ味がみられなかった。

 サンタアニタT(サラ3歳上 ハンデ 南関東G3 1600m良)

○(1)トミケンマイルズ (54・張田) 1分38秒5
▲(2)ナイキゲルマン  (56・石崎隆) 4
△(3)ロッキーアピール (56・野崎) 鼻
 (4)ウエノマルクン  (54・鈴木啓) 1
△(5)ジェネスアリダー (56・今野) 2.1/2
………………………………………
△(7)シャドウランサー (56・内田博)
◎(8)ネイルアート   (52・御神本)

 単280円 馬複480円 馬単940円
 3連複660円  3連単2660円

 トミケンマイルズは、ホッカイドウ競馬出身。認定競走を勝った経緯でいったんJRA移籍、500万条件2着2回の記録を経て、3歳秋、船橋・岡林光浩厩舎へ再トレードされた。以後南関東[5-2-1-1]。中堅C1のスタートから一戦ごとに力をつけ、順風満帆のオープン入り。前々走交流重賞かしわ記念7着、前走船橋記念2着。元よりの期待馬というより、シンデレラボーイに近いだろう。「これだけ変わる馬もそうそういない。馬体がひと回り増えたこと、実戦に行って勘がいいこと。まだまだ成長しそうな予感がある」。岡林調教師、張田騎手とも口をそろえる。次走は8月18日「アフター5スター賞」(大井1200m)を予定。タイプは正攻法の競馬ができる、きわめて優秀なスピード馬。最終目標は岩手南部杯、あるいは大井JBCスプリント。個人的には短距離ベストとイメージする。

 ナイキゲルマン2着は、対ロッキーアピール56キロ同斤で、果たして好走かどうか評価が分かれる。ただ競り勝った事実だけとれば同馬なりの進境といえなくもない。本質的にいい脚一瞬。力で攻める的場文男(今回騎乗停止)より、好技でカウンターを狙う石崎隆之向きという感触もあった。ロッキーアピールの場合は、内田博シャドウランサーに突っ張られ、大きく失速して不思議ない厳しい展開。ひと息パワー不足ながら、短〜マイル、軽い南関重賞なら常に好勝負可能なスピードを示している。ネイルアートは前走シーサイドC圧勝、当時1600m1分39秒2。今回1分40秒2の8着とは解せないが、結果的にここが競馬の微妙さだろう。末一手の小柄な牝馬。数字は別に、あくまでノンプレッシャー、それも展開がハマって爆発。復活・御神本とのコンビも含め、多分に希望的観測、情緒的な予想だったと反省する。

       ☆       ☆       ☆

 8月4日黒潮盃。JDダービー終了、その時点のコメント、情勢からは正直予期できない顔ぶれになった。見る側にとっては嬉しい誤算。南関クラシック、交流重賞と、劇走を続けた一線級がここで再び激突する。夏に鍛える――馬自身に元気とパワーがあるなら、むしろそれが正着ということか。改めて思えば、9月20日盛岡「ダービーグランプリ」にも、すでに2ヶ月先と迫っている。出走権を含め各陣営、ここでメドをつけておきたい。

 黒潮盃(サラ3歳 別定 南関東G3 1800m)

◎ベルモントストーム (56・石崎隆)
○アジュディミツオー (56・左藤隆)
▲キョウエイプライド (55・的場文)
△シュルードパーソン (55・内田博)
△ステルスライン   (55・桑島)
△ランノホシ     (55・真島)
△モエレトレジャー  (56・金子)
 ハネダキャノン   (55・酒井)
 アイチャンルック  (53・山田信)
 ブルーローレンス  (56・野崎)

 ベルモントストーム本命は、正直なところ冷静な推理というより、意地と未練の部分が大きい。ただしかし、直線ほんのひと気合で後続を一気に6馬身ちぎった京浜盃。誇張でなく、思わず震えがくるような凄みがあった。慎重でなる石崎隆騎手をして「自信がある」といわせた前走JDダービー。結果6着は、ひとまずキャリア不足が敗因だろう。「行こうと思えば行くだけのスピードがある。(前走は)押さえて失敗だったかもしれない」。名手でもまだつかみきれない、迷いが生じる、そんな段階と納得する。2000m→1800m短縮は現時点で条件好転。もう一度、自分の眼と印象に賭けてみたい。

 アジュディミツオーは無敗で東京ダービーを制した快速馬。2000m2分05秒2、この時点で評価は同時季のナイキアディライトを完全に超えており、前走JDダービーも逃げ馬の弱みと考えればそう深刻な負けではない。出走させる以上、常に胸を張って臨む川島正行陣営。完全燃焼の時計勝負なら、むろんタイトルが上積みできる。キョウエイプライドは、前記2頭と違い、JDダービー終了直後から「黒潮盃出走」を明言していた。レース上手、タフな末脚。ただ前3走3、2、2着ながら、ことごとく勝ち馬には完敗の印象で、なにやら決定打不足のイメージも固まりつつある。騎乗停止明け的場文騎手にひとつ秘策があるのかどうか。

 昇り馬はシュルードパーソン。デビュー戦を落としただけの7戦6勝、父オペラハウス、480キロ台の好馬体。前走大井初コースも難なくクリアし、未知数ながら自身ほぼ万全の態勢でチャレンジする。時計の裏付けは少し甘いが、鞍上・内田博騎手。試金石という以上に脈ありだろう。ステルスラインは末脚強靭。血統、鞍上からもまだ見限れないが、時計面、スピード面で混戦待ちが妥当な評価か。前走1700m46秒1をマークしたハネダキャノンは相手がグレードアップして展開が厳しい。まくる競馬でランノホシ、前々を粘ってモエレトレジャーが大穴か。紅一点アイチャンルックにも善戦の期待はある。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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