ハードトレで「完成近づきつつある」進化お披露目/吉田竜作マル秘週報
共同通信杯も今春のクラシックに向け必見レースとなることだろう
トレセン関係者は「毛色」をほとんど気にしない。ブチコのような白毛はさておき、どの毛色も関係者にとっては見慣れたもの。「毛色と能力に因果関係はない」と認識されている今では「気にして見たことはない」との声が大半を占めるのも当然だろう。
とはいえ、毛色は遺伝するものであり、親から子へと伝えられる最大の特徴でもある。競馬ファンの立場で言えば、思い入れの強かった馬の子供が同じ毛色であれば、より感情移入しやすくなるのでは。
そうしたセンチメンタルな気持ちさえも“塗り潰す”馬がいる。ディープインパクトだ。思わせぶりな笑みを浮かべながら「栗毛のディープ産駒がいたら1億円で買ってやるよ」とは某関係者。気になって調べてみると、ディープ産駒にはまだ一頭も栗毛がいなかった。
遺伝の仕組みに明るい人でなくても、インターネットなどで調べたりすれば、ある程度は分かったりするもの。ディープインパクトは「ホモ鹿毛」と呼ばれる鹿毛遺伝子を持ち、これを受け継いだ種牡馬から栗毛が出ることはないのだとか。
「毛色と能力を伝える遺伝子には関連性はない」とされるが、本当にそうなのか。ともあれ、気の早い人ならば、そろそろ2歳馬のチェックも始めているころだろう。こうしたところに注目すると、また違う楽しみ方ができるかもしれない。
きさらぎ賞はその“鹿毛の王様”ディープ産駒のサトノダイヤモンドが制覇。勝ちっぷりに戦慄を覚えた人も多いことだろう。直線で軽くムチが入ってからの反応と、そこからの伸びが、まあ強烈だったこと。ルメールの言葉を借りれば「ライバルはいなかった」。
牡馬戦線は昨年暮れからやや関東馬に押されていたが、若駒Sの覇者マカヒキ、そしてこのサトノダイヤモンドと、ようやく対抗できる関西馬が出揃ってきた。
そして今週の注目は共同通信杯で復帰を果たすスマートオーディンだ。
復帰といっても、いわゆる久々の一戦といった感はまるでない。東スポ杯を勝った後も栗東での在厩調整を続け、その内容も“マツクニ厩舎”らしく、英気を養うという言葉では生ぬるく感じさせるほどの鍛え方だった。
「この中間はこれまでの坂路2本とウッドでの調整に加え、プール調教も取り入れた。カイバは食べていますが、さすがに稽古の後は少し残します。それくらい負荷をかけなければ調教の意味がない。馬もキ甲が抜けてきて、ようやく完成が近づきつつあります。数字的には増えていると思いますが、これだけやってのもの。問題はないと思います」と松田国調教師。
ハードトレの後は食欲が落ちるもの。それほどまでにスマートオーディンは追い込まれ、そして負荷に耐えてきた。それは「GIともなれば、普通にやって、普通に勝てるわけではない」からこそ。タニノギムレット、キングカメハメハでダービーを2度勝ったトレーナーは、その経験から「必要」と信じてハードトレをスマートオーディンに課してきた。その進化のお披露目となるのが今週というわけだ。
きさらぎ賞に続き、この共同通信杯も、今春のクラシックに向け、必見レースとなることだろう。