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今年は真の“ディープ元年”

  • 2016年02月11日(木) 18時00分


◆ハートレーは「これからネジを巻けば相当に切れる馬になる」

「あの馬は間違いなく本物ですね。いや〜、少なくともアレと当たるまで負けたくないなぁ」

 週明けの美浦で手塚キュウ舎のヤジーこと矢嶋大樹助手が珍しくライバル心をのぞかせた。普段は他キュウ舎の動向には無頓着なのだが、その彼とて触発されずにはいられない馬。それが先週きさらぎ賞を制したサトノダイヤモンドだ。強烈だったのはステッキ一発で3馬身半突き抜けたラスト1ハロン。平坦京都とはいえ、余裕を持って11秒3で上がる馬が果たしてどれだけいるのか。その決め手はまさに父ディープインパクト譲りである。

 一方、共同通信杯から皐月賞を目指すハートレーも、父を同じくする募集価格1億円のディープ産駒。値段(サトノダイヤモンド=2億4150万円)こそかなわないが、新馬勝ち直行のGII制覇は見劣りしない戦歴だ。

「天栄から美浦に戻るたび馬は良くなってます。前回も柔らかみが出て驚いたけど、今回は柔らかさが増すと同時にパワーアップ。これからネジを巻けば相当に切れる馬になる。そんな感触もあるんです」とは持ち乗りの中條亮英助手。サトノ同様にここを通過点とできるか。ヤジーの心境は別にしても、今週の注目はその一点だ。

 さて、その両馬の比較は後々に回すとして、今回は現3歳世代のディープ産駒躍進の秘密に迫りたい。

 思い起こせば昨年2冠馬ドゥラメンテはキンカメ産駒、一昨年ダービー馬ワンアンドオンリーはハーツクライ産駒。12、13年ダービー(ディープブリランテ、キズナ)こそ制したが、初年度産駒がステイゴールド産駒オルフェーヴルに屈して以降、古馬王者に君臨する牡馬を出せずにきたのが種牡馬ディープの最大の悩みであった。だが、今年はどうしたことか。サトノダイヤモンドを筆頭にスター候補がズラリ。ボージョレ・ヌーボーではないが史上最高の豊作たる出来栄えである。

「ディープも6世代目。生産から育成の段階で、ようやく正解の形が出たと見るのが自然だろう。“一番馬は走らない”とも言われるが、競走馬の購買をギャンブルにしない、価格に見合う商品を提供するノウハウが生まれつつあるのでは」

 こう語ったのは美浦のご意見番こと国枝栄調教師。確かにディープの父サンデーサイレンスも、キャリアを重ねるごとに種牡馬としてスケールアップを果たし、収得賞金のピークは12年目(05年=93億円超)。ならば今年が真の“ディープ元年”となる可能性は十分か。
 (美浦の宴会野郎・山村隆司)

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