今はもう種牡馬の世界は、シャトルもリース契約も、早々の転売もあるから、どの国の種牡馬ともいえない活躍馬がいる。
かつて日本に、エタン(その父ネイティヴダンサー)という種牡馬が輸入されたことがあった。1961年生まれ。レイズアネイティヴ(ミスタープロスペクターの父)と同じ年の生まれで、同じネイティヴダンサーを出発の父系では、ホワイトフォンテン(その父ノーアリバイ)などが走っていたころのことだ。
まさかこの父系が、世界を圧倒するほど巨大になるとは思われてもいず、結局、エタンは日本では(一部の強力な支持者以外)、あまり高く評価されず、成功はしなかった。
ところが、アメリカからイギリスに渡ったエタンは、日本に来る直前、シャーペンアップを残し、そのシャーペンアップは欧州で大成功し、ネイティヴダンサー系を広めている。
だいぶたってから、シャーペンアップの直仔や、さらには孫が次々と輸入されたのをみて、日本には本元のエタンがいたじゃないか。何を改めて……と思ったりしたが、エタンの産駒で成功したのは、シャーペンアップから広がる枝だけ。孫や直仔など、改めてエタン系を輸入したのは、別に節操がなかったり、定見がないためでもなかった。
いま全盛のロイヤルチャージャー系にしても、スピードシンボリやホウヨウボーイの時代のよみがえりに近いところもある。あの父系、絶やすべきではなかった(気がする)。
新潟11Rのシンボリロッキーは、巻き返してきたプリンスリーギフト直仔サクラバクシンオー産駒で、母の父はトランポリノ。トランポリノが2着した仏ダービーを、たまたま観ていた。ナトルーン(輸入馬)に負け、あまり強いとは思わなかったが、その秋、凱旋門賞を強敵相手に勝ったからすごい。恐るべしエタンの孫だった。この父系、もともとが意外性が本質だという。エタン系の血統は母方に入って、ネオユニヴァースなど、再三よみがえってみせる。