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世代交代

  • 2004年08月16日(月) 19時47分
 8月11日、川崎競馬場の新設重賞「スパーキングサマーC」は、ユニークステータスの圧勝だった。抜群のスタートでハナを切り、道中持ったままマイペース。直線鞍上が軽くGOサインを出すと、見る間に後続がちぎれていく。1600m1分40秒7、余裕十分の5馬身差。今日のレースに関する限り、他馬の凡走というより、この馬だけが1頭別次元の競馬をしている。7月、JRAから転入して2戦2勝。地方ダートで素質開花の典型的パターンだろう。毎度のことながらJRA、底辺の広さ、懐の深さというやつ…。生え抜きの地方馬は、なかなかそれに対抗しえない。

 単1.6倍、断然人気ロッキーアピールがまったく動けず、2着争いは横一線。前々を進んだトキノアジュディが軽量も味方につけ、いっぱいに粘り込んだ。アートブライアンは首差の3着。4着ティーケーツヨシ。この2頭はひと息距離不足のうらみもある。ジェネスアリダーは内田博Jが終始手綱を押しながらの追走で、ペースが上がった3〜4コーナーで脚が止まった。「1コーナーで砂をかぶってズルッと下がった。ただこれだけ負けると、そのせいだけではないかもしれない…」は、ロッキーアピールの野崎騎手。判然としない惨敗だが、同馬にとっては、まさしく真夏の夜の悪夢というできごとだった。

スパーキングサマーC
(サラ3歳上 別定 南関東G3 1600m良)

▲(1)ユニークステータス (53・張田)1分40秒7
 (2)トキノアジュディ  (53・山田信)5
 (3)アートブライアン  (55・石崎隆)首
△(4)ティーケーツヨシ  (53・酒井)頭
○(5)ジェネスアリダー  (57・内田博)2
………………………………
△(6)イチコウエンゼル  (53・的場文)
△(8)ペガサスホープ   (53・今野)
◎(9)ロッキーアピール  (57・野崎)

 単630円 馬複7780円 馬単14600円
 3連複43180円 3連単333710円

 ユニークステータスは栗東・田中耕厩舎からデビュー。2戦目阪神ダート1400mを武豊鞍上に6馬身差圧勝。以後も短距離ダート500万を2勝、しかし昨夏を境にバッタリ勢いが止まっていた。深刻なゲート難で毎回出遅れ。逃げ馬がまともなスタートを切れなければ低迷もみえている。おそらく精神的なスランプ、覇気を失っていたということだろう。それが今回、船橋・山浦厩舎へトレード、鮮やかに再生された。「走りますね。今日は折り合いもつきすぎるほどついていたし、短距離だけの馬じゃない」(張田騎手)。JRA出身馬vs地方生え抜き。素質、潜在能力の差は確かに少し寂しいけれど、逆に南関東スタッフ、その意地と腕を評価すべきか。状態がよければ、次走は9月8日交流G3「さきたま杯」(浦和1400m)。この夜の内容なら、強敵相手でも期待できる。

 トキノアジュディは、自身完全復調といえても、さらにプラスアルファはイメージしにくい。むしろアートブライアンが昨年同様、秋の牝馬路線で注目できる。体調の波が激しく、“気”で走る典型的なタイプだろう。ジェネスアリダーはいかにも成長に乏しく、重賞ロードとなると今後大きな期待はかけづらい。イチコウエンゼル、ペガサスホープは、結果論ながら条件馬の域を出ていなかった。さてロッキーアピール。一過性のポカか、あるいは調子下降によるものか。9キロ増、パドックの気配など依然活気にあふれてみえただけに難しい。ヒントめいた一般論。この時季、春から連戦連戦できた馬は、そろそろ反動が出るようだ。記録更新の猛暑、そして熱帯夜。南関東4場所すべてそうだが、休み明けの馬が連日意外な大駆けを果たしている。

     ☆     ☆     ☆

アフター5スター賞
(8月18日大井 サラ3歳上 別定 南関東G3 1200m)

◎トミケンマイルズ  (57・張田)
○ハタノアドニス   (57・早田)
▲カセギガシラ    (55・内田博)
△ブラウンシャトレー (57・石崎隆)
△ザブレス      (53・的場文)
△ブルーオオマサ   (55・山田信)
△パワーズフォンテン (55・見沢)
ウエノマルクン    (55・鈴木啓)
アイディンワンダー  (57・白田)

 南関東短〜マイル路線も、どうやら世代交代の時期がきたようだ。およそ2年間、王者の座を守ってきた8歳ハタノアドニス、対してこの夏一気に本格化した4歳トミケンマイルズ。そのトミケンマイルズは前走サンタアニタTが初重賞だが、超ハイペースを2番手からひとまくり、最後4馬身差圧勝劇。新星、成長株というより、すでに堂々たる王者の風格を感じさせた。当時1600m1分38秒5、春のマイルグランプリ=ブラウンシャトレー39秒7と比較しても、これは絶大な価値がある。ひと息に突っ走れる1200mが元よりベター。ここで引導を渡すだろう。

 貫禄でハタノアドニスを対抗としたが、カセギガシラにゴール前競り負けた前走など、当時ルーキー鞍上にしても物足りない。生涯ピークは、やはりサウスヴィグラスを差した昨秋東京盃のころだったか。あえて勝つケースをイメージすれば待ったなしの逃げ。後手を踏むと、そこから巻き返す闘志が想像しづらい。カセギガシラは逆に前走2番手からの差し切りで、レースの幅が広がった。デビュー時からスプリント資質が高かった馬。再び2キロもらって条件がいい。ブラウンシャトレーは元よりスプリンターではなく、久々も含めると厳しい情勢。ウエノマルクン、アイディンワンダーは明らかに距離不足。JRA・4勝ザブレス、絶好調ブルーオオマサが展開しだいの連穴か。

     ☆     ☆     ☆

 短信。8月13日、川崎競馬場でエスプリシーズが調教試験を受けた。1400m1分33秒0、7頭立て1着、大外を回って馬なり合格。元より巨漢だが、当日540キロの数字以上に見た目は太い。「川崎記念でG1を勝った。さすがに疲れもあり、放牧先でいったんゼロに戻している。これから乗り込んでいい筋肉をつけていきたい」(武井調教師)。最速で9月8日浦和「さきたま杯1400m」。しかし、交流G1・2100mを勝った以上、狙いはやはりJBCクラシック→東京大賞典の王道路線か。相性のいい船橋、日本テレビ盃(9月23日、交流G2・ダート1800m)でカムバックが最も自然だ。

 同日川崎、2歳オープン「新星特別」が行なわれ、1番人気ミライが勝った。父トーヨーリファール、姉にロジータ記念3着カコ。デビュー2連勝、この日は道中あえて差す競馬に構え、直線GOサインとともに期待通りの切れをみせた。1400m1分32秒台の時計はとるに足らないが、レースぶりそのものに牝馬らしからぬ凄みがある。当日大井からサブノロイヤルが参戦(8着)、川崎ハイレベルも実証された。南関東2歳馬、現時点のイチ押しである。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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