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POG取材、近づく

  • 2016年03月16日(水) 18時45分
モーリス

(写真は2013年5月20日トレーニングセールでのモーリス)


22日(火)の下河辺牧場とノルマンディーファームあたりから取材が開始される

 例年、3月下旬から本格化するPOG取材の日程が、先日来少しずつ決まってきている。各媒体とも、ほぼ前年並みの体制でチームを組み、22日(火)の下河辺牧場とノルマンディーファームあたりから取材が開始されることになっている。

 取材は大きく分けると写真撮影とコメント取りに分類される。理想的にはそれぞれ別の担当者を用意するのが望ましいが、媒体によっては、それを1人で担わなければならないケースもあり、仕事量としてはかなり重い。

 近年は、大手育成牧場になればなるほど「合同取材」が一般的になっており、予めいくつかの媒体が窓口になって牧場側と日程調整を行い、他の各社はそれに倣うという流れになっている。育成牧場にとっても、単独で媒体ごとに入れ替わり立ち替わり取材チームが別々にやってくるのでは対応が難しく、できるだけ一度で済ませてしまいたいと考えるのは当然のこと。したがって、最初に日程が決められてしまうと、媒体はそれに合わせて人員を派遣し、対応せざるを得ない。なぜならば、牧場にとっては一円の得にもならない仕事を引き受けてもらっている以上、無理難題はご法度だからだ。

 合同取材の場合、撮影とコメント取りが「同時進行」するケースもあり、そうなると、取材者が1人だけの場合は撮影優先になるため、コメント取りはICレコーダーを回して声だけ拾い、後でテープ起こしをしてまとめる方法になってしまう。また、各馬のコメントは牧場スタッフが公式発表する内容に限られるため、どの媒体も似たような文面になりがちだ。加えて写真も、各媒体がほぼ同じ位置から一斉にカメラを向けてシャッターを切るので、やはり定型の立ち写真にならざるを得ない。

 つまり牧場取材の段階では、それぞれ誌面に工夫を凝らすのがひじょうに難しく、どのPOG関連本でも似たような内容になってしまうことが避けられない。

 そこで、いかに個性を出して行くか、独自色をどうやってつけられるかに知恵を絞ることになる。

 ひとつはまず、馬の取捨選択である。多くの媒体は誌面構成が決まっており、ひとつの育成牧場に割ける頁もほぼ決まっている。その限られた誌面の中にどの馬を掲載するかが難しい。

 もうひとつは、一連の牧場取材の最後に予定されている産地馬体検査(通常4日間行われる。浦河、静内、早来2日)の時に、牧場取材で拾い切れなかった有望な素材をどれくらいカバーできるか、である。

 こうして、概ね5月連休過ぎ頃に照準をあてて発刊するわけだが、あくまで、POG本は、せいぜい4月上旬〜中旬までに取材できた、大半が北海道にいる2歳馬に限られる。すでに年明けの早い段階で本州の育成牧場に移動してしまっている馬たちは、一部を除いて物理的に取材することが困難になってしまう。だが、2歳馬の移動は、新馬戦開始時期が早まっているのと連動するように、このところ年々早くなる傾向にあり、3月になると輸送が一気に本格化するのがここ数年の流れである。

 できるだけ多くの2歳馬を取り上げたいのは各媒体いずれも共通しているが、おのずと限界があり、締め切りの関係から、例えばトレーニングセール出身馬(JRAブリーズアップセールを含む)や、第二回産地馬体検査(6月)で登録される馬まで範囲を広げられないでいる。

 しかし、モーリスのように、後々JRAの年度代表馬にまで出世したような逸材が札幌競馬場で開催されたトレーニングセールに上場されたりもするわけで、どこに原石が埋まっているのか分からないのが競馬の面白さである。

 とはいえ、POGに親しむ多くの競馬ファンは、通常2歳戦スタートから始まり、翌年の日本ダービーまでの1年間を対象期間にして、それぞれ指名馬の成績を競い合うルールであろう。そうなると、近年はノーザンファーム生産馬(それもディープインパクトに代表される一部の種牡馬の産駒)の良績が顕著で、とりわけ今年に関してはほとんどの有力馬がその中に含まれていることからも、指名馬決定のドラフトではノーザンファーム生産馬争奪戦でほぼ運命が決まってしまう感が強い。

 そうなると、「掘り出し物を発掘する」喜びを味わえる余地が少なくなり、競馬そのものに対する興味が徐々に失せて行ってしまいかねない。理想論であることは承知しつつ書くが、やはり3歳路線は「群雄割拠」であることが理想で、様々な牧場の様々な血統の馬が勝ち抜いてきてGI競走に出走するのが望ましい。そのためにも、とりわけ日高産馬の奮起、巻き返しに期待したいところだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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