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生きる源になる望み

  • 2016年04月21日(木) 12時00分
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ディーマジェスティの皐月賞制覇

 自分ごときにできるとは思わないけれど、少しでもそれに近づけたらと望みを抱くことがある。そういう望みは、生きる源になっていると言ってもいい。だから、叶えられなくとも人は望み続けていく。経験の有る無しにかかわりなく、富める者もそうでない者も、あらゆる者に感動を呼ぶもの、そういうものがあれば、これ以上のことはないが、価値観は人のつくるものだから、どんどん変わっていく。これは仕方ない。ただ、そうした中でも、人の心の中で不変の力を持つものがある。そういうものに近づけたらとそう思うことで、日々励んでいるのではないか。

 己を鼓舞して目的に向かっていく、それをはっきり見せてくれる競馬。どの側面から捉えても分かりやすい。三強対決を大きく叫ばれた今年の皐月賞だったが、終わってみれば、その上に一頭の伏兵がのっかっていた。大外から出て行ったディーマジェスティは、後方から5番手の内につけ、3角すぎから外に出して少しずつ位置を上げていった。この時点で折り合いを欠いたリオンディーズが先頭に立っていたが、有力どころではエアスピネル、サトノダイヤモンドが早目に射程に入れて直線の正念場を迎えていた。この展開は、後方から動いたディーマジェスティ、その直後で追い込みを策したマカヒキに光明が差していた。特に勝ったディーマジェスティは、前走の共同通信杯を勝ったことで、クラシックへの備えができたと二宮調教師が語っていたように、以後の二ヵ月間を有効に生かしていたので、素晴らしい反応を見せていた。

 蛯名正騎手にとっては、どうしても叶えたいダービー制覇に向け、この皐月賞でしっかり手応えをつかんでおきたいとの思いだったが、この勝利で、その望みは現実味をおびることになってきた。ディーマジェスティに係わる者にとり生きる源とも言えるクラシック制覇、その中でも、最も大きな望みのダービーに向けてはっきり道すじが見えている。東京の長い直線、これならと。ただ、心の中で不変の力ともなるダービー制覇に向け、確実に能力を持つ敗者の思いは強い。次はこちらの出番と頂上をめざしてくる。どう心身を鍛えてのぞんでくるかだ。果たして、万事塞翁が馬となるのだろうか。どれかに自分をかぶせてみたい。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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