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重賞スポット騎乗の効用

  • 2016年04月22日(金) 18時00分


◆レースがエキサイティングなものに

 21日に行われた東京プリンセス賞。重賞4連勝中のモダンウーマンが単勝1.3倍の断然人気となったが、ここまで3度対戦して、2、3、2着と敗れていたリンダリンダが直線突き抜けて鮮やかな逆転勝利となった。

 今回のリンダリンダの鞍上は、デビューした北海道時代の主戦、桑村真明騎手。大井に移籍後の2戦で手綱をとっていた真島大輔騎手が2週間ほど前に脚を痛めて療養中のため、再び声がかかった。

 リンダリンダは難しいところのある馬だそうで、南関東の誰かに依頼するにしても、狙っていた大一番のここだけワンポイントの騎乗というのも難しく、それならばということで荒山調教師とオーナーの意見が一致し、桑村騎手を起用することになったそうだ。

 とはいえホッカイドウ競馬は前日が新年度の開幕で、この日が2日目。荒山調教師から、桑村騎手が所属する角川調教師にお願いしたところ、快諾を得て桑村騎手の騎乗が実現することになった。

 桑村騎手にしてみれば、前日、ホッカイドウ競馬の開幕初日に行われた重賞の北斗盃をスティールキングで制しており、南関東に遠征しての2日連続重賞制覇。真島騎手の戦線離脱によってまわってきたチャンスとはいえ、幸先のよいシーズンスタートとなった。

 地方競馬では、期間限定騎乗の制度ができて騎手の移動がかなり活発になったが、同時に実現した、重賞のスポット騎乗(重賞レースは騎手の所属にかかわらず騎乗できる)によって、レースがエキサイティングなものになったように思う。前日に行われた羽田盃でも、6番人気のジャーニーマンには高知の赤岡修次騎手が初騎乗となり、直線を向いて先頭に立つと、もしやと思わせる場面があった。金沢の吉原寛人騎手とともに、南関東の重賞にはもはや騎乗しているのが当たり前のようになっている。

 それによって騎乗機会を失う地元騎手がいることも確かだが、トップクラスの馬が対戦する大レースであればこそ、トップクラスの騎手が騎乗することによってレースのレベルもアップするというもの。

 賛否の意見はあるが、世界から、そして地方からも、トップジョッキーが移籍または短期免許で集まり、世界でもトップレベルの競馬となったのが今のJRAの競馬だ。

 話は逸れるが、昨年だか一昨年だか、グリーンチャンネルの正月特番対談のような番組で、社台グループの吉田照哉氏が興味深いことを言っておられた。

「G1などの大レースになると、どうしてもトップの騎手の取り合いになってしまう。G2以上のレースは、所属に関係なく、地方の騎手でも乗せられるようにしたらいい。地方にも上手い騎手はたくさんいる」と。併せて、G2以上の開催に限れば、中堅以下の騎手の騎乗にもそれほど影響がないことを、具体的に開催日数などの数字を挙げて説明しておられた。

 今回、二冠が獲れなかったモダンウーマン陣営にしてみれば残念だったろうし、ケガのためリンダリンダに騎乗できなかった真島騎手も悔しかったと思う。しかし陣営が、「距離が伸びれば逆転できる」として狙ったここで、もともとの主戦だった桑村騎手で勝ったということは、見ていて素直におもしろかった。桑村騎手自身にしても、千載一遇のチャンスでの南関東重賞初制覇は会心の勝利だったに違いない。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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