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JRAブリーズアップセール

  • 2016年04月27日(水) 18時00分
JRAブリーズアップセールでの展示風景

JRAブリーズアップセールでの会場風景


総売り上げ、平均価格ともに昨年より微増しており、相変わらず盛況なブリーズアップセール

 昨日(26日)、中山競馬場にて恒例のブリーズアップセールが開催された。前日25日午後1時より、装鞍所において上場予定馬が比較展示され、翌日のセール本番前に下見をする多くの関係者が集まった。

 当初は最大で81頭の上場を予定していたが、調教を進めて行く過程で様々なアクシデントが発生し、前日の段階で、9頭の欠場が発表された。2月の段階で重症とみなされる疾病、故障により、早々に欠場せざるを得なくなったケースもあったが、中には今月に入り、宮崎と日高それぞれの育成牧場で展示会を無事に終えた後に故障を発症してしまった例もある。改めて、馬は生き物であるということを強く実感させられる。

JRAブリーズアップセール

JRAブリーズアップセールでの前日展示風景



 前日も好天に恵まれたが、せり当日も朝から青空が広がり、太陽光線が眩しく、気温が高くなった。余談ながら、前日早朝に北海道の自宅を出た時の気温はちょうど0度。途中、マイナス1度〜2度という場所もあったほどだ。それが羽田に降りるとほとんど20度もあろうかという気温である。体調がおかしくなりそうになった。

 当日は午前9時の騎乗供覧から日程が始まる。北海道のトレーニングセールとは異なり、このセールでは単走で騎乗が公開される。出走順は上場番号通りになっており、1番から始まる。上場馬リストには騎乗者名と体重、お台付け価格が明記されており、また、個別の個体情報(体高、胸囲、管囲、体重、病歴、喉内視鏡検査や屈腱部エコー検査、種子骨検査、化骨検査等の結果、ここ1ヶ月間の調教メニュー、各馬の性格や特長についてのコメント)が詳細に記された冊子も別に配布されている。情報を開示して、参加しやすいセリを目指し、不都合なことも敢えて公表することで購買の参考にして頂こうというJRAの姿勢がこういう部分にもよく表れている。

JRAブリーズアップセール

人もたくさん増えた当日の展示風景



 お台付け価格は、概して低めに設定されており、200万円、300万円から高額馬でも1000万円止まりである。調教進度の遅れている馬は150万円などという例もあり、いずれも1歳時の各市場にて購買された時の落札価格を下回っている。

 騎乗供覧には、JRA職員に交じって競馬学校騎手課程3年生や高田潤騎手、藤田菜七子騎手の名前もあった。それぞれ3鞍ずつ騎乗した。藤田騎手はきれいなフォームで乗る人だ。背中のラインが馬と並行になっていて、安定感がある。デビュー以来過密なスケジュールで疲れも溜まっているはずだが、ブリーズアップセールにも「お手伝い」にやってくる姿勢には好感が持てる。

JRAブリーズアップセール

当日騎乗供覧に参加した藤田菜七子騎手



 午前の太陽光線を真正面からまともに浴びながら約2時間、スタンドで騎乗供覧を撮影したが、それだけで一気に日焼けしてしまった。

 タイムよりも走るフォームや息遣いなどを重視するのがブリーズアップセールの騎乗供覧とは言いながら、仕上がり度においてはかなりばらつきが見られ、速い馬は最後の1ハロンを11秒台前半で駈けてくる。計測は残り2ハロンからで、通常は終いの1ハロンの方が良い時計が出る。

 最速を記録したのは、45番スターリースカイの14(牡、父ケイムホーム)の11秒5、11秒3の計22.8秒。また、終いの1ハロンでは、58番セイカシリアスの14(牝、父パイロ)の11秒1が最速であった。セイカシリアスの14は、去る4月5日に行われた宮崎育成牧場での展示会でも、出色の時計をマークしていたが、引き続き好調をキープしているようであった。

JRAブリーズアップセール

最速タイムを出したスターリースカイの14



 2歳トレーニングセールではだいたい騎乗供覧時の走破時計に目が行く。今すぐただちにデビューするわけではないとはいえ、ここで速い時計を難なく出せるかどうかが購買の際の大きなポイントになってくる。速い時計には誰しも注目せざるを得ないのだ。

 騎乗供覧が無事終わり、11時半近くなってから、装鞍所に場所を移しての展示となった。明らかに前日の下見時よりも人数が多い。騎乗供覧での走りを見た後で、実際に目当ての馬の脚元をチェックしたり、馬体各部を入念に吟味する人々で大変な賑わいであった。

 ひと際多くの人垣ができていたのは調教一番時計を出した45番スターリースカイの14で、改めてこの馬を見ておこうという購買関係者が群れをなすほどの注目度になった。

JRAブリーズアップセール

周囲に多くの人が集まったスターリースカイの14の当日展示



 セリ開始は午後1時。屋根のある特設会場にセリ台が設置され、購買者用の椅子が並べられており、開始時間が近づくにつれてほぼ満員状態となった。周囲で立ったままセリを待つ人々も多く、会場が手狭に感じるほどだ。

 木村一人・JRA馬事担当理事が冒頭挨拶に立ち、その後すぐにセリが始まった。上場頭数は72頭(牡36頭、牝36頭)で欠場は9頭である。出てくる上場馬の大半は声がかかっていたが、中には「主取り」で終わる馬も数頭出てきて、それらは、「再上場馬」として最初のお台付け価格から半額まで“値引き”されて再度登場する。

 見ていると血統や馬体、性別もさることながら、やはり騎乗供覧での動き、時計が価格を大きく左右する印象が強い。最高価格は15番ウルトラペガサスの14(牡、父ルーラーシップ)の3400万円(税込3672万円)。兵庫県の三田昌宏氏が落札した。騎乗供覧でも12秒1、11秒4と動いており、人気が集まっていた。

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最高価格となったウルトラペガサスの14


JRAブリーズアップセール

ウルトラペガサスの14の騎乗供覧



 また牝馬の最高価格馬は前述の58番セイカシリアスの14で、2500万円(税込2700万円)。鹿児島の山元哲二氏が購買した。

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牝馬最高価格となったセイカシリアスの14


JRAブリーズアップセール

セイカシリアスの14の騎乗供覧



 なお、一番時計を出して注目された45番スターリースカイの14も、2300万円(税込2484万円)まで競り上がった。こちらは東京都の清水正江氏が購買者であった。

 終わってみれば今年もまた売却率は100%を記録し、総売り上げは7億2057万6千円(税込)で、平均価格はちょうど1000万8千円となった。昨年と比較すると、総売り上げ、平均価格ともに微増しており、相変わらずこのセールは盛況である。

 ところで昨年、同セールにて購買された全67頭の現3歳世代は、4月19日時点で2頭を除く65頭がデビューし、うち19頭が21勝を挙げている。今年の2歳世代はこれから順次トレセンに入り、早ければ6月の新馬戦からデビューすることになる。また、今回欠場となった9頭のうちの何頭かは、来る5月24日(火)、札幌競馬場にて開催予定の北海道トレーニングセールに上場される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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