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【名牝の初仔(1)】ディープ×アパパネ 非凡な才能を得て、両親超えを目指す

  • 2016年05月09日(月) 18時01分
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▲2011年ヴィクトリアMの覇者アパパネ、ブエナビスタをクビ差で制した(撮影:下野雄規)


2010年のヴィクトリアMを制したブエナビスタ。2011年の同レースでブエナビスタを破った、三冠牝馬アパパネ。そのアパパネと、2010年のオークスで同着決着を演出したサンテミリオン―― レースを華麗に彩った名牝の初仔たちが、今年デビューを控えています。牧場での評判がすこぶる高いアパパネの初仔は、父母が三冠馬という夢の配合。そこで、彼女たちが走ったヴィクトリアM週、オークス週の2週連続で、「名牝の初仔特集」をお届け。長年2歳馬の取材を続けている須田鷹雄さんが、実際に見て感じた率直な印象、将来の可能性を語ります。(取材・文:須田鷹雄)


実馬を見た瞬間、うなるものがあった


 個人馬主にとって、三冠馬を所有するということは現実味さえ無い夢である。クラシックを勝つこと、GIをひとつ勝つこと、それどころか重賞をひとつだけ勝つことすら、大多数の馬主にとっては遠い遠い夢の話だ。

 まして自身の所有した牡牝の三冠馬どうしを配合するとなったら……これはもう、途方もない夢物語としか言いようがない。300年以上におよぶサラブレッドの歴史、それもあらゆる国の歴史を紐解いたところで、それを実現した馬主が何人いるだろうか。

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▲2010年の秋華賞で、スティルインラブ以来7年ぶり史上3頭目の牝馬三冠馬となった(C)netkeiba.com


 その配合は3年前に実現し、2年前には仔がこの世に生を受け、そしていま、競走年齢を迎えようとしている。父ディープインパクト、母アパパネの牡馬。馬名のモクレレはハワイ語で飛行機を指すという。

 もちろん、父と母がそれぞれ優れた競走馬だったからといって、仔がその足し算を実現できるほど競馬は単純ではない。古くからの競馬ファンなら、「十冠ベイビー」ことメジロリベーラ(父シンボリルドルフ・母メジロラモーヌ)が、勝利を得られず終わったことも記憶にあるだろう。

 それが分かっていてもなお、モクレレには期待したくなってしまう。それはとにかく実馬が良いからだ。

 アパパネの初仔がかなりのデキらしい、という噂は以前から聞いていた。しかし我々は毎年たくさんの2歳馬とその後の成績を追ってきている。悪い癖ではあるが、実際に馬を見るまでは、噂を噂としか捉えられなかったのも事実だ。

 ただそういった疑心暗鬼は、実馬を見た瞬間に消え去った。口には出さなかったものの、心の中では「なるほど」とうなるものがあった。

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▲ディープインパクト×アパパネ「12冠馬配合」のモクレレ(提供:赤本編集部)


 なるほど、というのはこの2歳馬が父と母、それぞれの良いところを分かりやすく受け継いでいたからである。

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