◆実はものすごく取捨を悩んでいることもある巻末リスト
おかげさまで、今年も赤本こと「POGの達人」が発売を迎えた。この原稿を書いている時点で、Amazonの全書籍中30位台。今年も御購買に感謝申し上げる。
さて、この赤本制作のうえで、ひとつのヤマが巻末リストの制作だ。本文との連携や厩舎情報、セール情報の正確な反映などは長年の蓄積である程度システム化されているのだが、いつまで経っても人力なのが私を含む3名のシルシで、こればかりは仕方がない。ちなみに今年から、◎○▲と△の間に☆というシルシを新設した。これまで△の守備範囲が広すぎたので、それを是正するためである。ちなみに頭数比はほぼ同数の◎○を1ずつとすると、▲が2+α、☆が3+α、△が7〜8くらいとなっている。
自分が良いと思って牧場のコメントも良いとなれば迷わず重いシルシを打てるが、両者が食い違う場合には悩む。最終的に無印にすると形跡としては残らないが、実はものすごく取捨を悩んでいることもある。
今年でいうと、ゴールドアリュール×タイムウィルテル(牝/清水久)が好例だ。日下主任のイチオシという馬で、芝向き=桜花賞を目指すというコメントも出ていた。確かに馬を見ると血統から連想される雰囲気は全くなく、馬そのものは確実に良い。
それでもシルシを打たなかったのは、ゴールドアリュールの牝という事実を重く見てだ。産駒の賞金ベスト30に牝馬が3頭しかいない種牡馬。座学系で分析重視の立場としてシルシは打てない。
もちろん、実馬の良さが勝ることもある。現3歳でいうと、「ファルブラヴの牡馬」であるオデュッセウスを横手主任が推していて、同馬はオープン特別を勝った。結果がどうなるかはやってみるまで分からないのであって、事前の見解が異なるのは競馬だから当然の話。方法論優先になることがあってもいいし、それが裏目に出てもよいと思っている。
シルシを打つ際は、他のライターから上がってくる原稿・報告ももちろん参考にする。後藤さんの社台ファーム情報はたいへん助かるし、栗山さんの血統分析も参考にしている。栗山さんといえば、4月に亡くなったフィル・スライ氏の共有馬を2頭(母モシーンと母サザンスピード)、「おすすめ10頭」に入れている。その扱いについては協議したのだが、追加取材の結果日本で走る可能性が高いと判断してそのまま収録した。ただし厩舎は具体名までクレジットせず関東・関西にとどめている。リスト作りではこういった判断も必要となる。
もうひとつシルシで悩むのが、データのない新種牡馬の扱いだ。今年はルーラーシップがなんとも悩ましい。評判自体は良いのだが、セール時にも高くなりすぎている印象があったのでシルシはやや辛めとした。気軽に例に挙げられるところとして「カレン」の母ダンスザクラシックスは順調に進んでいるのだが、札幌デビューもという順調さを込みで☆までとした。秋デビュー確定だったら△までだったろう。
まあ、手元にPOG期間のGI馬(カレンブラックヒル)がいたのにほとんどスルーした過去を持つ私が言っても説得力はないのだが……(笑)。