自他ともに認める“牝馬好き”の鈴木淑子が、名牝に携わってきたホースマンを通じて「なぜ牝馬が強くなったのか」を探っていく対談企画。今回は今週のヴィクトリアマイルに出走する現役屈指の強豪牝馬・ショウナンパンドラを管理する高野友和調教師を直撃、牝馬躍進の秘訣に迫った。
構成:中山靖大
パンドラは“自分を持っている”馬
鈴木淑子(以下:淑子) 高野調教師は中学生の頃から競馬をご覧になっていらっしゃったとうかがいましたが、一番印象に残っている牝馬といえば、どの馬になりますでしょうか。
高野友和(以下:高野) 最も強い印象を受けたのは、エアグルーヴですね。とくに97年の天皇賞は、ちょうど競馬にどっぷり浸っているときに起きた歴史的な出来事なので、よく覚えています。
淑子 直線ではバブルガムフェローとの一騎打ちになって、とても見ごたえがありましたね。
高野 そう、バブルガムフェローといえば男馬のチャンピオン級でしたから。それを力でねじ伏せたというのは、とても印象的でした。牝馬が天皇賞に出るだけでも珍しかった時代で、しかも勝ってしまうのですから。
淑子 そのエアグルーヴに携わっていらした笹田和秀調教師にもお話をうかがったのですが、牡馬をしのぐ活躍をする牝馬の条件として「精神力」を挙げられていました。高野先生が管理されているショウナンパンドラは、その面ではいかがですか。
▼15年のジャパンCは道中11番手から直線は真一文字に伸びて国内外の牡馬を従えた(撮影:下野雄規)
高野 パンドラはすごく自分を持っている馬で、良い距離感を持って人間と接することができるタイプです。甘えすぎないのだけれども、ちゃんと信頼関係を築いているというか。そういう意味では、とても精神性の高い馬だと思います。
淑子 入厩した頃から、強い精神力を持っている馬だったのでしょうか。
高野 接していて、そう感じさせるようになったのは3歳の秋頃からでしょうか。ちょうど飼葉食いも良くなってきて、体質も強くなって、強い調教に耐えられるようになってきた頃でした。本来の力を発揮できるようになって、精神面でも安定してきたのかもしれません。
「食欲」も強い牝馬の条件になる
淑子 馬体を維持するという意味では「食欲」というのも強い牝馬の条件に当てはまるのでしょうか。
高野 トレーニングで負荷をかけながらレースに使わないと結果を出せない時代だと思うので、馬体の維持に懸念があると