▲マイル戦で勝機!クイーンズリング吉村圭司調教師を直撃(撮影:大恵陽子)
春の唯一の古馬牝馬GI・ヴィクトリアマイル。牝馬限定戦とあって、中距離でGIタイトルをモノにしてきた強豪馬も参戦する。JCや牝馬二冠を制覇した馬が実績で距離の壁を越えるのか、あるいはマイル適性の高い馬が彼らを撃破するのか。昨年の秋華賞で僅差の2着だったクイーンズリング(牝4)は、マイル適性を大いに秘めている。調教師の吉村圭司は、地方・荒尾競馬の出身。厳しい現実に直面した一方、技術調教師時代には池江泰寿厩舎でオルフェーヴルの調教にも跨った。競馬界の底も頂点も経験した師が、厩舎初GIを狙う。(取材・文:大恵陽子)
悔しすぎる…レースレコード決着の秋華賞
昨年の秋華賞。秋色に染まった内回りコースの直線で、先に抜け出したミッキークイーンに、クイーンズリングは後ろから迫った。上がり最速34.1秒を繰り出すも、クビ差届かなかった。
管理する吉村圭司にとって開業4年目で届きかけたGIタイトル。それを阻んだのは、調教助手〜技術調教師時代の8年にわたり在籍した池江泰寿厩舎だった。
「体に幅も出て、パドックもどっしりとしたいい雰囲気でした。よく走ってくれましたが、あそこまでいったら勝ちたかったですね」
レース直後、多くの馬主関係者やマスコミに囲まれ明るく振舞いながらも、全身から悔しさがにじみ出ていた。
▲大外から強襲するクイーンズリング(右)、クビ差届かず悔しい2着(C)netkeiba.com
あれから7か月。ツツジのピンクが鮮やかな栗東トレセンで秋華賞の話題を改めて振ると、やはりこう答えた。
「あそこまでいったら何とか勝ちたかったです」
デビューから3連勝で重賞・フィリーズレビューを制し、無敗で挑んだ桜花賞は4着。オークス9着、ローズS5着を経て挑んだ牝馬三冠最終レースだった。しかし、今も残る悔しさは、同時にGIでやれる手応えを吉村に与えた。
「この馬の強さを再認識できたレースでした。距離は2000mまでだと思いますが、古馬牡馬の厳しい流れのマイルCSより牝馬限定戦のエリザベス女王杯(2200m)の方がチャンスだと思い、次走にすぐ決めました。でも、エリザベス女王杯も悔やまれるレースでしたね」
4コーナーと直線でスムーズさを欠き、0.3秒差の8着だった。
年が明けた2016年春の目標はヴィクトリアマイルだと早い段階から決まっていた。それに向けて、年明け初戦は京都牝馬Sが選ばれた。
「久しぶりの1400mで休み明けでしたが、立ち回りが上手な馬なのでスタートさえ後手を踏まなければ流れに乗れるのでは、と思っていました」
フィリーズレビュー以来、約1年ぶりとなる1400m戦でも先行グループで流れに乗り、重馬場の中ゴール前で力強く抜け出し完勝した。
「このレースで競馬の幅が広がりました。週末が雨予報だと、他の馬で出走予定の場合、大抵は憂鬱になるんですが、クイーンズリングはこなしてくれました。一方で、良馬場の秋華賞ではレースレコードでの決着。どちらでもやれますよね。大きな収穫を得られたレースでした」