9月8日、浦和・さきたま杯は大波乱だった。川崎所属、6番人気ロッキーアピールの大殊勲。道中逃げるレイナワルツの2番手を持ったまま進み、直線鮮やかに抜け出して見せた。同馬は重賞初勝利がいきなり交流重賞という快挙。それも前走地元のスパーキングサマーCを1番人気で9着と、大きく期待を裏切った直後だけに驚かされた。
2着は3〜4コーナー、外からタイミングよく動いたストロングブラッド。しかし最後、クビ差はもう詰まらない脚いろで、今日このレースに関する限り、完敗の印象は否めない。いつになく好位をスムーズに進んだノボトゥルーは、逆に追って案外伸びず3着まで。結果59キロが響いているか。ニホンピロサートはスタートで一完歩出遅れ、予想外の後方追走。ラスト1Fは猛然と伸びたものの、時すでに遅かった。注目のマイネルセレクトは、馬混みの中、再三クビを上げるちぐはぐな折り合いで、勝負どころですでに手応えがなかった。
さきたま杯(サラ3歳以上 別定 交流G3 1400m良)
△(1)ロッキーアピール (56・今野) 1分25秒5
△(2)ストロングブラッド (57・北村宏) クビ
▲(3)ノボトゥルー (59・横山典) 3/4
△(4)ニホンピロサート (57・安藤勝) 1.1/2
○(5)ブラウンシャトレー (57・張田) 1/2
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◎(6)マイネルセレクト (57・武豊)
単10,080円 馬複20,670円 馬単73,520円
3連複35,760円 3連単396,990円
私事で恐縮だが、この日「地方競馬チャンネル」(スカイパーフェクTV)で解説をさせていただいた。思いもかけぬ結果に終わり、頭の中が真っ白なままレースを回顧するのは正直つらい。取調べを受けている犯人の様にしどろもどろ。1400m・1分25秒5、ロッキーアピールの時計は良馬場とするとまずまずで、この馬が走った、潜在能力がそれなりにあったことは納得としても、JRA勢、それも人気を分けた2頭の敗因が説明できない。VTRが繰り返し流され、関係者のコメントを伝え聞き、ようやく言語がスムーズになる。「スタートでつまずき、自分の競馬ができなかった」(安藤勝己騎手)。「中間順調さを欠いたためか、息の入りがよくなかった」(武豊騎手)。むろんそれだけで一件落着でもないのだが、競馬とはしょせんそんな部分がある、そう考えれば徐々に気分も落ち着いてくる。競走馬の実績・格とは、人間サイドのご都合主義、「方便」でしかないと、つくづく思う。勝負の行方はいつも曖昧模糊として刹那的だ。
それでもニホンピロサート、マイネルセレクト、共にパドックの馬体など凄みがあり、次への感触は悪くなかった。岩手・南部杯に向かうか、それとも大井・東京盃か。いずれにせよ最終目標は、11月3日大井・JBCスプリント。体調さえ万全なら、ハイレベルの走りが期待できる。ブラウンシャトレーは、短〜マイル向きでも小脚の使えないタイプで、大井コースベターと判断したい。話は戻るが、ロッキーアピール=山崎尋美調教師のコメントが、今日の結果を、おそらくすべて象徴している。「よく走ってくれた。自信はなかったけれど、直線うまく抜け出してあとは絶叫。でも、前走(スパーキングサマーC)を勝っていたら、たぶんここは使わなかった。」塞翁が馬…という。まさしく競馬のためにあるような言葉だろうか。幸運と不運はいつも隣り合わせに存在する。そして人間はそれをおおむね予測できない。改めて痛感させられる一戦だった。
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戸塚記念(9月6日川崎 サラ3歳 別定 南関東G2 2100m重)
△(1)モエレトレジャー (56・金子) 2分16秒3
(2)トウカイリーチ (54・酒井) 2
(3)クラマサライデン (53・森下) 2.1/2
◎(4)ジョウテンデヒア (55・野崎) クビ
(5)カネマサヴィーナス (54・今野) 2.1/2
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(6)ゴールドファミリー (53・山田信)
▲(7)ドラゴンシャーク (54・桑島)
△(8)ゼレンカ (54・内田博)
○(13)インターセフォー (53・石崎隆)
単1,020円 馬複14,380円 馬単29,510円
3連複551,030円 3連単1,618,660円
こちらも大穴が炸裂した。3連単161万円は、重賞史上最高配当で、的中23票(総票数50万4千余)。ただ正直に書くなら、こちらにはとりたてて度胆を抜く大波乱の印象はない。むしろちょっと間違えば的中もあったイメージ。お粗末な予想をしながら無責任な物言いで申し訳ない。が、結局、04年南関3歳馬戦線は、アジュディミツオー、キョウエイプライド、さらにトキノコジロー、ベルモントストームを加えたあたりがひとまず上位勢力で、以下続く馬はまだ混沌、ハナからそういう認識があった。さきたま杯とは異質の波乱。だから夏〜秋の成長力がこの結果に結びついたとも思えない
とはいえ、この夜のモエレトレジャーは相当強い競馬をした。3〜4コーナー大外から一気のまくり。直線早々と独走を決めている。「距離が少し長いかと思ったけれど、とにかく道中手応えが素晴らしかった。うまく流れに乗れました」(金子騎手)。いつも慎重に仕掛ける同騎手が、これだけ思い切りよく乗れたこと、体調のよさ、すんなりした展開、すべて歯車が噛み合った結果だろう。2分16秒3の時計も関東オークスとの比較(2分15秒9=トーセンジョウオー)からは合格ライン。当日437キロ。今後は馬体増と大井コース克服が課題になる。
トウカイリーチは道中インをロスなく進み、直線ドンピシャリのタイミングで仕掛る事が出来た。すらりと手足の長いトウカイテイオー産駒。爆発的なパワーは感じさせないものの、こちらはステイヤー路線の成長株。クラマサライデンは例によって逃げの名手・森下騎手の好騎乗が大きいだろう。ジョウテンデヒアはパドック、返し馬で気負いが目立ち、最後手応えほど伸びなかった。久々だけで片付けられるか微妙、精神面でまだ若さが残っている。
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トゥィンクルレディー賞
(9月15日 大井 サラ3歳上牝馬 ハンデ 南関東G2 1600m)
◎アイチャンルック (52・山田信)
○アートブライアン (57・石崎隆)
▲アオバコリン (56.5・森下)
△ドリームサラ (56.5・的場文)
△ショウナンシャトー (51・江川)
△プルザトリガー (53.5・内田博)
△ブルーマドンナ (55・左海)
3歳アイチャンルックに期待した。前走・黒潮盃2着。最後、もつれに乗じた感はあっても、実際アジュディミツオー、ベルモントストームを一蹴だから中身が濃い。父ジェネラス。一戦ごとに競馬センスが磨かれ、持ち味の瞬発力にもいよいよ凄みを加えてきた。その黒潮盃、1800m・1分53秒台で走れば、時計負け、スピード負けはないだろう。少々忙しく、巧みなコーナリングが要求される内コース1600mをどう乗るかがカギ。それでも馬券的には今回買いと判断する。山田信騎手は手が合う。
昨年、クビ差でワンツーだったアートブライアン、アオバコリンはもちろん有力。ここにきて夏型らしく調子を上げた前者がマイル適性からも本線だろう。そろそろ重賞を勝っていいドリームサラは、父トウケイニセイとよく似た個性(黄金のジリ脚)を持つ。タイミングよくまくってプルザトリガー、逆に混戦でショウナンシャトー。アイチャンルックの気配がよければ、少し手広く流してみたい。