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オツウの全弟レッドクライム

  • 2016年05月18日(水) 12時00分
ジョウショーホマレ(牝 栗東・西橋豊治 父トーセンホマレボシ、母ジョウショークイン)
 父トーセンホマレボシは新種牡馬。現役時代は先行力を活かして京都新聞杯(GII)をJRAレコードで快勝し、日本ダービー(GI)でも3着と粘った。残念ながら屈腱炎を発症し、このレースを最後に引退した。半兄に天皇賞・秋をJRAレコードで勝ったトーセンジョーダン(父ジャングルポケット)がいる良血で、父は不動のリーディングサイアーのディープインパクト。近親にカンパニー、レニングラード、トーセンスターダムなど多くの活躍馬がいる。馬産地における産駒の評判は上々だ。母ジョウショークインはダート短距離で2勝を挙げ、1000万クラスまで出世した。硬質なアメリカ血統を豊富に抱えており、いかにもスピードの持続力に秀でた配合で、芝・ダート兼用の中距離タイプだろう。

ダブルスプリット(牡 栗東・西園正都 父アイルハヴアナザー、母ハートノイヤリング)
 父アイルハヴアナザーはケンタッキーダービー(米G1)、プリークネスS(米G1)の米二冠を制した名馬。Flower Alley→Distorted Humor→フォーティナイナー→Mr.Prospectorとさかのぼる父系に属し、母方にはRoberto系とRibot系の血が入り、自身はDanzig 4×4。スタミナと底力に恵まれたパワー型の中距離タイプだ。産駒は芝・ダート兼用の中距離タイプ。芝向きの子を作るには、サンデー系などの柔らかなスピード血統を入れるのがセオリーだろう。本馬の母ハートノイヤリングは現役時代JRAでは未勝利に終わったものの、マイルCS(GI)2回、スプリンターズS(GI)などを制したデュランダルの4分の3妹で、母の父はハーツクライ。芝向きの適性が感じられる。ハーツクライはMr.ProspectorとDanzigの組み合わせを持つ血と相性がいいので、それらを4代以内に2本ずつ持つアイルハヴアナザーとの組み合わせはフィットしそうだ。

マナープリンセス(牝 栗東・安田隆行 父ハーツクライ、母ホットマンボ)
 コウエイオトメ(14、15年日経新春杯-GII・4着)の全妹、ケイティバローズ(15年エンプレス杯-JpnII・3着、15年中山牝馬S-GIII・4着)の4分の3妹にあたる。父ハーツクライはThe Axeを抱えた繁殖牝馬と相性がよく、アドマイヤラクティ、カポーティスター、ギュスターヴクライ、ストロングサウザーなど多くの活躍馬が出ている。全姉コウエイオトメは初勝利を挙げたのが3歳1月で、2勝目は4歳2月と遅咲き。ハーツクライ産駒にありがちな晩成タイプのステイヤーだった。本馬は2歳5月に馬名登録をしており、なおかつ短い距離に実績にある安田隆行厩舎。すでに吉澤ステーブルWESTを経て栗東に入厩しているので、姉ほどのスロー出世とはならないだろう。

レクセル(牝 栗東・高野友和 父ルーラーシップ、母エポキシ)
 2代母シーズアンはチェヴァリーパークS(英G1)の勝ち馬。母エポキシは新馬戦で2着と健闘したものの未勝利に終わった。本馬が初子となる。父ルーラーシップはキングカメハメハ産駒の新種牡馬。現役時代に香港のクイーンエリザベス2世C(香G1)を楽勝したほか国内では金鯱賞(GII)など4つの重賞を制した。出遅れ癖によって取りこぼしたレースも多かったので、戦績以上に能力の高い馬だった。初年度の血統登録頭数は131頭。新種牡馬のなかではナンバーワンの数字で、サンデーサイレンスを含まないという血統的アドバンテージは大きい。本馬は母の父がサンデー系のディープインパクト。父の強みを活かした配合となっている。父ルーラーシップも母の父ディープインパクトもトビの大きなタイプだったので、前肢の可動域の広い芝向きの中距離タイプだろう。

レッドクライム(牡 栗東・須貝尚介 父ハーツクライ、母デライトポイント)
 福島牝馬S(GIII)で3着となったオツウの全弟。母デライトポイントは現役時代に3戦0勝と目立たなかったものの、その全兄にトウカイポイント(02年マイルCS-GI、02年中山記念-GII、02年香港マイル-香G1・3着)、半兄にパープルエビス(00年スプリングS-GII・2着、00年アーリントンC-GIII・2着)がいる良血。母の「トウカイテイオー×リアルシャダイ」は、前出のトウカイポイントを筆頭にチタニックオー、アースシンボル、トウカイアロー、トウカイオスカーといった良駒を出したニックス。ヨーロッパ血統のトウカイテイオーはグニャグニャと柔らかい繋ぎの持ち主で、アメリカ血統のリアルシャダイは硬く立ち気味の繋ぎという、対照的な特徴を持つ馬同士がうまく補完し合ったことが良かったのだろう。母方にリアルシャダイを持つハーツクライ産駒は、9頭中6頭が勝ち上がり、全姉オツウのほかにダノンマックイン(準OP)、トウカイトレジャー、ストロベリーキングなどが出ており悪くない。ハーツクライ産駒はヌーヴォレコルトを除けばトップクラスのほとんどが牡馬。牡に出た本馬は期待大。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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