荒れまくる安田記念 穴ならこの兄弟/トレセン発秘話
◆JRA東西全196厩舎の中で、一番連対率が高い橋口厩舎
かの名伯楽、伊藤雄二元調教師は現役時代、「ファンあっての競馬だから、ファンにお返しするのは連対率を上げるのが一番」と、自厩舎の1、2着率を高めることを常に意識していた。ワイド、3連複、3連単など、現在は馬券の種類も増えたが、基本は馬連、馬単。実にファンの財布にやさしい考え方だ。
で、2016年度の現在、JRA東西全196厩舎の中で、一番連対率が高いのはどこかというと…。実は藤原英厩舎でも、堀厩舎でもなく、橋口厩舎なのである(先週終了現在で実に3割1分3厘の高打率)。
父親の橋口弘次郎厩舎から「即戦力」を引き継いだ側面はあったにせよ、開業1年目の厩舎が、ある程度、数も使っているこの時期に、超一流厩舎を差し置いて、連対率トップに立っている状況は過去に記憶がない。
「厩舎としてだいぶかみ合ってきたなと感じるところはあります。人気がない馬でも、しっかり走ってくれるのはうれしいことですね」とは当の橋口調教師。
馬券になった内訳を見ると、さすがに勝っているのは上位人気馬がほとんどにしても、2、3着に来ているのは人気薄馬の割合が結構高い。つまり人気になった時はしっかり勝つし、人気がなくてもヒモには飛び込んでくる可能性が高いということだ。
だとすると、今週の安田記念に出走する橋口厩舎の2頭、クラレント、レッドアリオン兄弟も、無視できなくなる。ともに人気薄必至だが、12番人気で3着に好走した昨年と同じく、ダービー卿CT→マイラーズCからの叩き3走目で、相性のいい東京マイルを目指してきたクラレントはもちろん、レッドアリオンの方も何やら激変の可能性がありそうなのだ。
「この中間は舌を縛ったり、ブリンカーを着けてみたりと、いろいろ試しているんですが、クロス鼻革に、リングバミという装備が一番いい感じ。いつも稽古では力んでしまう馬が、我慢が利いて、集中力が増した走りを見せているんです」とトレーナーは確かな手応えを感じている。
こうした現状打開への創意工夫が連対率トップのハイアベレージを生み出した要因のひとつなのだろう。
モーリスを筆頭に、安田記念のメンバーが強力なのは承知の上で、坂路野郎はクラレント、レッドアリオンともにヒモ穴に“予約済み”だ。
(栗東の坂路野郎・高岡功)