水野貴史調教師と森泰斗騎手(写真は京浜盃優勝時、撮影:原山 実子)
調教師になってこんなに早く、泰斗と一緒に目指せるなんて…
6月8日(水)に大井競馬場で行われる『東京ダービー』。今年は日本ダービーと同じく近年稀に見る豪華メンバーが集結しました。その中でも主役なのが、トライアルの『京浜盃』、1冠目の『羽田盃』を制したタービランスでしょう。いよいよ迎えるダービーに向けて、管理する水野貴史調教師にお話を伺いました。
赤見:タービランスは2歳のレベルの高い門別で早くから注目されていた馬ですが、水野先生のところに移籍した時はどんな様子でしたか?
水野:あれだけの馬を預けていただけるということでプレッシャーもありましたが、とても嬉しかったです。実際に乗ってみるとすごく背中のいい馬で、さすがだなと感じました。この馬は人間に例えると、勉強しないのに出来るタイプですね(笑)。まだ調教もそこまで強くできない中で、身体能力の高さで勝ってくれているので。
赤見:移籍初戦のニューイヤーカップはゴール前で差されて2着でしたが、振り返っていかがですか?
水野:あの時はまだ体が出来切っていなかったんです。調教も体の成長待ちで、びっしりと追い切りをすることができない状況でした。それでもなんとかして欲しいという気持ちはありましたけど。直線で先頭に立ったら思いっきりソラを使って差されたんですけど、馬も苦しかったのかなと思います。その後放牧に出してゆったりと過ごしたら、ガラっと変わって戻って来てくれました。
赤見:トライアルの『京浜盃』、1冠目の『羽田盃』と、危なげない走りで連勝しました。
水野:『京浜盃』を勝てたことは、気持ち的にもとても大きかったです。あれだけの馬を預けていただいたわけですから、結果を出して当然なので。自分自身にとっても調教師として初重賞制覇だったので、大きな1勝でしたね。『羽田盃』の時には状態もさらに良かったですし、(森)泰斗も自信を持っていたので何の心配もなかったです。安心して見ていられました。
1冠目を制したタービランス(写真は羽田盃での口取り、撮影:原山 実子)
赤見:水野調教師は高崎から、森騎手は宇都宮から移籍して来たわけですが、北関東コンビで挑むダービーというのは感慨深いんじゃないですか?
水野:そうですね。まずはタービランスを預けてくれたオーナー、応援してくれるファンのみなさん、そして一生懸命がんばってくれるスタッフに感謝しています。その上で自分の話をさせてもらうと、高崎が廃止になった時、最初は南関東に移籍できるとは思っていなくて。移籍したい気持ちはもちろんありましたけど、年齢制限がありましたから。でも、たくさんの方が動いてくれて、笠松への移籍が正式決定する前日に、急転直下で移籍できることになったんです。本当にいろいろな方のお蔭で浦和に入ることができました。
移籍した後ももちろん甘くはなかったですけど、浦和リーディングも獲らせてもらって、本当に有難い騎手人生でした。ただ…、やっぱり騎手として『東京ダービーを獲りたい』という気持ちは強かったので、そこが叶わない中で引退したのは少しだけ心残りでした。それが、調教師になってこんなに早く、泰斗と一緒に目指せるなんて…。本当に感謝してもしきれないですね。
赤見:森騎手も移籍直後は成績が大きく下がっていましたが、今や全国リーディングですもんね。
水野:認められるのに時間が掛かりましたけど、もともとセンスがいいし、コツコツがんばってましたからね。他所から来て簡単に行く世界ではないですが、泰斗がして来た苦労はわかるし、今や信頼できるジョッキーになってくれて本当に嬉しいです。泰斗にとっても前走の『羽田盃』が初のクラシック制覇だったので、名実ともにトップになるためにも、タービランスで勝ってダービージョッキーになって欲しいです。
赤見:騎手として挑むのと、調教師として挑むのでは気持ちが違いますか?
水野:それは全然違いますよ。調教師は競馬場に連れて来るまでが仕事ですからね。いかに状態よく馬を仕上げられるか、これに尽きます。パドックでジョッキーを乗せたら、あとは見てるしかできないですから。プレッシャーとか緊張感という意味では、ジョッキーの方がキツイんじゃないですかね。
赤見:では、現在のタービランスの様子を教えて下さい。
前走以上の状態で『東京ダービー』に挑むタービランス(撮影:原山 実子)
水野:『羽田盃』の後は一息入れて、少しゆっくりさせました。この馬はまだ成長段階なので、間隔を狭めて使うよりもゆったりしたローテの方が馬がよくなりますね。追い切りを重ねて、今はすごくいい状態です。前走以上の状態で『東京ダービー』に挑めるはずです。こんなチャンスはなかなかないので、自分にできることを精いっぱいがんばります。ファンのみなさん、応援よろしくお願いします!