9月23日、船橋「日本テレビ盃」はナイキアディライト、会心の逃げ切りだった。抜群のスタート。隣枠アジュディミツオーがテンから2番手の競馬を決め込み、ごく自然流にマイペース。以下、ストロングブラッド、トーシンブリザード、1馬身ほど置いてアンドゥオール。弁解を先に書かせていただければ、記者は大きく展開を読み違えた。向正面、そして3〜4コーナー、“競り合ってしまう”はずのナイキアディライト、アジュディミツオーが淡々と折り合い、正確なラップを刻んでいく。直線中ほど、2頭の鞍上がステッキを抜くと、後続はもうついていけない。首をグイと下げ、精悍なフォームでゴールへ突進するナイキアディライト。アジュディミツオーも大きなストライドで追いすがるが、捕らえきれる脚いろではない。決定的な1/2馬身差。完勝といっていいだろう。「成長したね。最後まで余裕があった。この秋は大きな結果が出せるかもしれない…」(石崎隆騎手)。前夜の大雨で極端な高速馬場。1800m1分49秒7は当然としても、現実に3着以下が5馬身ちぎれた。ナイキアディライト自身、少なくとも快速馬、逃げ馬としては円熟の域に達した。あとは捨て身の同型が競ってきたとき、その対応力がどうかということ。いずれにせよ11月3日大井「JBCクラシック」へ向け十分なメドが立った。当日微増の464キロ。数字はともかく、毛づやとハリが素晴らしい。
日本テレビ盃(サラ3歳上別定 交流G2 1800m不良)
○(1)ナイキアディライト (57・石崎隆) 1分49秒7
▲(2)アジュディミツオー (53・内田博) 1/2
△(3)ストロングブラッド (56・北村宏) 5
△(4)トーシンブリザード (58・佐藤隆) 1/2
◎(5)アンドゥオール (57・松永幹) 1.1/2
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△(6)スナークレイアース (56・小野)
単勝170円 馬複630円 馬単1020円
3連複1090円 3連単3540円
ただし、今日心底驚いたといえば、むしろ負けたアジュディミツオーのレースぶりだった。キャリア6戦、逃げてベストと思えた3歳馬に、川島正行調教師はあえて待機策を指示し、それを初コンビ・内田博幸騎手が見事な手綱で実践した。佐藤隆Jを超一流と判断していただけにこれは驚愕。結果、鞍が合うということもあるのだろう。ともあれアジュディミツオーにとって新境地。同馬の潜在能力は、まさに怪物級と再認識する。
ストロングブラッドは、上山・さくらんぼ記念、高崎・群馬記念と、小回りをまくって行くような競馬がベストか。今日の3着からはチャンピオンロードに少し遠い印象がある。アンドゥオールはマイナス4キロ。帝王賞時減っていた馬体が戻らず、全体にこぢんまり。パドックから気合そのものも乏しくみえた。中間の放牧が今回は大きくマイナス。流れが速くなった3〜4角、反応できなかったあたり、力関係以前に体調の方を疑問視する。トーシンブリザードは好位のまま4着。ひとまず健闘だが、心身両面やはり下り坂というしかないだろう。スナークレイアースは、このレース過去3戦して3、4、5着。時計の速い競馬は本質的に向いていない。
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東京盃(9月29日大井 サラ3歳上別定 交流G2 1200m)
◎マイネルセレクト (56・武豊)
○ヒカリジルコニア (56・福永)
▲シャドウスケイプ (56・小牧太)
△ディバインシルバー (56・安藤勝)
△ハタノアドニス (57・早田)
△タイガーロータリー (56・水野史)
△カセギガシラ (56・的場文)
ノボトゥルー (58・横山典)
シャンハイジャンプ (54・佐々国)
マイネルセレクトは前走浦和さきたま杯をよもやの凡走。しかしこれは一過性のポカと割り切りたい。ドバイ遠征後はひとまず置いて、道中再三首を上げ、およそ武豊騎手らしからぬちぐはぐな折り合い。パドックのハチ切れるような馬体など、体調はけっして悪いと思えない。初コースで馬が集中力を欠いたと判断する。昨秋JBCスプリント、ハナ差2着。誰がみても勝ち馬以上の内容だった。闘志に火がつきさえすれば、流れ、位置取りは問わないはず。こと日本ダート短距離界では、紛れもなく現状No.1の力がある。
ヒカリジルコニアは、この部門新星といえるだろう。新潟1200mオープン連勝。いずれも先行してもうひと伸び。前走現実にシャドウスケイプを完封した。アフリート×ノーアテンションの血統は中距離向きだが、逆にパワーの要求される大井、うってつけのイメージも出る。デイバインシルバーは、安藤勝騎乗で絶好の1番枠だが、人気に見合う底力となると少々疑問。むしろ馬券的にはシャドウスケイプ、タイガーロータリーの末脚が面白いか。ハタノアドニスの連覇があればやはりハナが切れた際。カセギガシラは鞍上の腕、ガッツを加味してぎりぎり連穴。ノボトゥルーは、大井[0-0-0-4]に加え、距離1200mもベストであるまい。
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東京記念(9月30日大井 サラ3歳以上別定 南関東G2 2400m)
◎サンデーバニヤン (58・鷹見)
○シャコーオープン (57・的場文)
▲アイディンワンダー (56・石崎隆)
△ウエノマルクン (56・鈴木啓)
△ティーケーツヨシ (57・酒井)
△ジェネスアリダー (56・桑島)
△カイジンクン (56・早田)
その翌日、打って変わった2400m、長距離重賞が控えている。東京大賞典、かつての3000mから2800m→2600m→2000mと変革。すでにステイヤー活躍の場がほとんどない。選手権距離うんぬんは別にして、長丁場の楽しさ、ぐるり2周回る競馬の醍醐味を、ここでファンにアピールしてもいいと思う。パワーはスピードを制す。時代遅れを承知で書けば、かつてのカツアール、サンオーイ、ロッキータイガー…、地方の名馬とはおおむねそんなタイプだった。
サンデーバニヤンは前々走大井記念圧勝。続く帝王賞も結果8着ながら好位を食い下がり見せ場があった。本格的な長距離走者かどうかは微妙だが、そのゆったりした走り、最後相手をねじ伏せるパワーに、往年の地方名馬の雰囲気を思い出させる。3ヶ月の休み明けだが、豪快な追い切りからはまさしく充電。同様にシャコーオープンも今季本格化の中〜長距離走者で、的場文騎手と新コンビ、その3連勝は圧巻の強さだった。この2頭、中身の濃いレースで次走JBCクラシックにつなげたい。アイディンワンダーもどうやら生粋のステイヤーだが、瞬発力の比較で3番手。少しもつれてウエノマルクン、ティーケーツヨシ。昨年2着カイジンクンにまだ逃げ馬の怖さがある。