9月29日、大井「東京盃」。マイネルセレクトが1頭別格の強さで勝った。道中中団の外めで流れに乗り、直線あと1F、ステッキと同時に一気の伸び。圧巻のパワーを見せつけた。1200m1分10秒9。べラミロードのレコードに0秒7差。それより何より台風通過の不良馬場をものともしない精神力が、一流ダート馬の証しだろう。「今日は僕も馬もスムーズな競馬ができた。広いコースが合っていますね」(武豊騎手)。「ホッとした。でも昨秋(JBCスプリント2着)を思うと、まだ8分くらいでしょう」(中村均調教師)。なるほどそのJBCスプリントは1分09秒台(1190m)に突入していた。めざすハードルが高いということ。「次(JBC)を勝てたら、もう一度ドバイに挑戦したい」。ともあれこれで、ダート短距離日本最強は、ダメ押しされたことになる。
東京盃(サラ3歳以上 別定 交流G2 1200m不良)
◎(1)マイネルセレクト (56・武豊) 1分10秒9
○(2)ヒカリジルコニア (56・福永祐) 1.1/2
▲(3)シャドウスケイプ (56・小牧太) 3/4
△(4)タイガーロータリー (56・水野史) 2.1/2
(5)ノボトゥルー (58・横山典) 首
…………………………
△(6)ディバインシルバー (56・安藤勝)
△(9)ハタノアドニス (57・早田)
単210円 馬複990円 馬単1100円
3連複2930円 3連単8390円
前走浦和さきたま杯、よもやの大敗から中2週でまさに一変。当時首をひねり、言葉少なに引き上げた武豊騎手は今回こうふり返った。「大井コースは広々として、パドックから待避所(第2コーナー手前)、待避所からスタート地点も近かった。馬の気分に合うのでしょう」。マイネルセレクトは元々テンションの上がるタイプである。闘志と気負い、さらにガッツは紙一重ということだろう。競走馬とはやはり血の通った生き物、そう改めて痛感する。そして1度馬が感じたフィーリングの良し悪しは、おおむねそう簡単に変わらない。JBCは11月3日、再び大井1200mを走ればいい。体調さえ伴えばまず不動の中心と考える。
ヒカリジルコニアは実馬をパドックで初めて見た。快速馬のイメージと少し違うモッサリ型。しかしゲートが開いての走りは戦歴通りで、相手が怪物級でなければ完勝の内容だった。どこか線の細いディバインシルバーより1クラス上のイメージ。ここで地方ダートにメドをつけた意味はかなり大きい。シャドウスケイプは短距離の差し馬でも、直線の長い府中コースがやはりベストか。それでも不利な道悪をこれだけ追い込めるあたり相当の地力がある。タイガーロータリーも健闘だが、こちらはスプリントが本質ではなく、加えて距離を選んで使えない地方馬の悲しさ、器用貧乏というジレンマがありそうだ。ハタノアドニスは好位追走から直線失速。8歳秋、さすがに下り坂が隠せない。
☆ ☆ ☆
東京記念(9月30日大井 サラ3歳上別定 南関東G2 2400m梢重)
○(1)シャコーオープン (57・的場文) 2分37秒7
(2)ヤスミダブリン (56・山田信) 大差
(3)クールアイバー (56・石崎駿) 1
▲(4)アイディンワンダー (56・石崎隆) 3/4
(5)マルカカイゼル (56・内田博) 1
……………………
△(6)ウエノマルクン (56・鈴木啓)
◎(8)サンデーバニヤン (58・鷹見)
△(11)カイジンクン (56・早田)
単500円 馬複9,930円 馬単15,600円
3連複151,550円 3連単1,029,340円
注目の4歳2頭。くっきり明暗を分ける形になった。シャコーオープンは、道中3〜4番手をスムーズに進み、2周目向正面からロングスパート。直線入口で先頭。最後は後続に2・3秒差(11〜12馬身)をつける独走だった。レース直後すぐ浮かんだ印象は正直“他馬の凡走”だが、時計をみるとそうではなかった。2分37秒7は昨年ネームヴァリューとまったく同じ。しかもこの日の大井コースは雨上がり、むしろ重く粘っこい。前走船橋記念で初重賞を制し、夏場は門別・ファンタストクラブで坂路など、ハードトレーニングをこなしてきた。「18キロ増。重いかなとは思ったけれど、実際走りは素晴らしかった」(的場文騎手)。「手がけた馬の中、最高の素質を持っていると思う。交流重賞を勝てればもちろんそれは究極の夢…」(蛯名調教師)。父ジェイドロバリー、母ミヤシロオープン(ハイセイコー)、490キロ台のパワフルな馬体。すべてに地方のヒーローらしい資質を備えている。ともあれけっしてひいきではなく、今日の内容なら本番JBCで十分な脈がある。
サンデーバニヤンの大敗。道中はシャコーオープンと前後する位置取りで、少しカカリ気味としてもレース運びは悪くなかった。それが3〜4コーナー、ズルズル失速、直線を向いてすでに手応えがなかった。◎に推しながら言いづらいが、単オッズ1.8倍は結局人気になりすぎということだろう。気性も含め、本質やはりステイヤーではない。勝ち馬とはパワーの差。ただしそう考えれば次走JBCクラシック・2000mは適条件にもなる。今度は人馬ともノンプレッシャーで再挑戦か。カイジンクンの逃げが1000m通過61秒3とやや速く、じっくり脚をタメたヤスミダブリン、クールアイバーが2、3着。3連単102万円、そのアナウンスで久々に場内がどよめいた。シャコーオープン→ヤスミダブリンの馬単まではイメージの範疇だが、3着クールアイバーとなると…。ひとつ八つ当たりめいていうなら、大井(南関すべてだが)は、先日スタートしたJRA3連単、そのマークシートに習う必要があるだろう。「フォーメーション」などというカード。実際買ってみると実にうまく(巧妙に)できている。100万円を超す夢馬券など、普通の推理でまず当たる道理がない。しかし当たりそうに見せるカードを作るところが、ビジネスとして今回“ワザあり”なのである。
☆ ☆ ☆
鎌倉記念(10月6日川崎 サラ2歳別定 南関東G3 1500m)
◎エスプリフェザント (53・久保勇)
○ツインイーグル (54・酒井)
▲ガイアヘッド (54・的場文)
△キョウエイアオバ (53・佐藤博)
△カネショウハヤブサ (53・野崎)
△トーホウリキジン (54・森下)
△シシジョー (53・金子)
南関東2歳初重賞(交流G1全日本2歳優駿TR・1着馬に優先出走権)を迎えたが、勢力図はまだまだ混沌。レベルの高低もまったく見えない。
素質と未知の魅力でエスプリフェザント。デビュー戦、1400m1分30秒5、後続を2.7秒(13馬身)ちぎって勝った。昨秋ビービーバーニング29秒1には及ばないが、最後余裕の脚いろも含めほぼ同格のインパクト。父デュラブながらすっきり手足の長い馬体で、単に早熟のスピード馬とも思えない。キャリア2戦目、この段階で重賞クリアなら、この先交流重賞、来春クラシックでも相当大きな夢が出る。
ツインイーグルは地元川崎2連勝後、JRA函館ラベンダー賞(芝1200m)に駒を進めた。結果(7着)はともかく、意欲と経験がここにつながると判断する。ガイアヘッドは大井2連勝後、いったんJRA移籍、新潟ダリア賞(9着)を使ってきた。厩舎、オーナーサイドの事情はさておき、馬自身には貴重なキャリア。この2頭、レースぶりに注目したい。以下、前回若武者賞を好走したトーホウリキジン(父トーホウキング)、キョウエイアオバ(エイシンサンディ)、さらにシシジョー(イシノサンデー)。いずれも地方向き、地味でも逞しい血が流れていそうだ。
☆ ☆ ☆
少し遅れた報告になるが、9月24日、船橋競馬で注目のダーレージャパン(ドバイ馬)所属4頭がデビューした。内2頭が初戦勝ち。昨年はクラシックロードに乗ったのが結局ゼレンカ1頭。話題先行に終わったが、明けて04年、どうやら軌道に乗りつつある。
中でもシーチャリオット(父シーキングザゴールド)に大物感があった。抜群のスタートを切り、鞍上・内田博Jは舵をとるだけの1000m1分01秒0。460キロ台、馬体だけとれば同じ父のゼレンカに凄みがあるが、実際レースに行ってのセンスがまったく違う。川島正行厩舎。JRA挑戦権も獲得し、今後どう戦略を練ってくるか。同レース4着オージア(父ティンバーカントリー)はダッシュがつかず、最後差を詰めただけ。むろん血統だけが自身能力を決定するものでもない。もう1頭デビュー勝ちナイトスクール(父マキャヴェリアン)は、能力試験800m53秒0、きわめて平凡ながら実戦で一変した。記者の好きなパターン。距離延長、激戦になってさらに前進のイメージがある。同レース3人気マセドニアン(父ペニカンプ)は、2番手追走ながら終始外にモタレ気味(3着)。470キロ台、のびやかな好馬体で、まだまだ良化余地はある。