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【新規開業】橋口慎介調教師(1)『なんとしても父の定年までに合格しなければ!』

  • 2016年08月01日(月) 12時01分
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▲今年3月に新規開業した橋口慎介調教師が登場 父・橋口弘次郎調教師との秘話など満載のインタビュー


父である橋口弘次郎調教師の後を継いで、今年3月に新規開業した橋口慎介調教師。名伯楽の息子と注目される中、デビュー週にいきなり3勝を挙げ、さらに同月にはワンアンドオンリーでドバイ遠征を果たすなど、存在感を放っています。弘次郎厩舎の馬に多く騎乗していた関係から、小牧太騎手の連載『太論』でも度々お名前が挙がっている慎介調教師。注目トレーナーの素顔に迫ります! (取材:東奈緒美)


橋口調教師のお話が掲載されている「太論」
『予告通りの男泣き 橋口弘次郎厩舎最後の一日』
『楽しみな馬が出てきました! ネクストムーブの将来性』

開業初年度からダービー馬を預かる責任


 お父様の橋口弘次郎調教師が今年2月に引退されて、その管理馬たちを引き継いでの開業となりました。そして、デビュー週に3勝を挙げる活躍。これについて、ご自身としてはいかがでしたか?

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▲3月5日にデムーロ騎手騎乗のミカエルシチーで、6日に小牧騎手騎乗のピークトラムとグレイスフルリープで計3勝(写真はピークトラムの武庫川S)


橋口 ちょっと出来過ぎなぐらいですね。3頭とも父から引き継いだ馬です。それだけ良い馬を引き継がせてもらったのは父のお陰で、本当にありがたいです。

 引き継いだ馬の中には、GI馬のワンアンドオンリーもいますよね。

橋口 はい。開業初年度からダービー馬を任せてもらえることなんて、なかなかないですからね。それを認めてくださったオーナーに、とても感謝しています。だからこそ期待に応えられるよう、頑張らないといけないですね。

 そのワンアンドオンリーで、ドバイ遠征にも行かれました。開業から1か月も経たないうちで、これもまたインパクトがありましたが、緊張はされませんでしたか?

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▲2年連続でドバイSCに出走したワンアンドオンリー(撮影:高橋正和)


橋口 実は、その前の年にも、技術調教師としてワンアンドオンリーのドバイ遠征に同行したんです。1回経験しているので気が楽というか、プレッシャーは意外となかったですね。前回は緊張しました。初めてだからというのもあるのですが、競馬当日に父が体調を崩してしまって。レース直前に調教師の仕事を全部任されたんです。

 当日にいきなりですか!?

橋口 ええ。この時僕は父の厩舎ではなく、角居勝彦厩舎で技術調教師をしていたんです。角居先生が快く承諾してくださって、現地に行かせてもらったんですが、僕自身はあくまで手伝いのつもりで。調教や鞍付けはやるつもりだったんですけど、あとは観ているだけの予定だったところ、レースの直前に父から「慎介、お前臨場やってくれ」と言われて。

 海外競馬で調教師のお仕事って、実際にどんなことをするんですか?

橋口 基本的には、ずっと馬についていないといけません。何かあったら調教師の責任になりますからね。ワンアンドオンリーは鞍を付ける時がうるさかったので、万が一これで付けられなかったら僕の責任になるな…と。

 責任重大ですよね。

橋口 そうですよね。結局父は臨場できなくて、スタンドに併設されたホテルのバルコニーからレースを観戦したんですけど。そういうこともあったので、今年はもう全然。緊張もしなかったですし、だいぶスムーズにできました。

 開業から4か月経ちましたが、成績も順調に伸ばしていますよね。お父様が定年されるタイミングと慎介先生の開業がうまく噛み合ったことは、大きいですよね。

橋口 そこは大きいです。定年は決まっていたことですから、どうしても間に合うように合格したかったですので。「どうせ受かるんでしょ」みたいに言われたこともありますけど、そんなことはないですからね。勉強は相当しました。「なんとしても受からないといけない」というプレッシャーで追い込まれたこともあって、なんとか2回で受かることができました。

 2回はすごいです。合格されたのは39歳の時ですか?

橋口 そうですね。父はもっと早いんですよ。たしか5回目の受験で、34歳で受かったんだったかな。

「先生」なんて誰も呼ばないです(笑)


 厩舎の雰囲気はいかがですか? スタッフさんはみなさん、お父様の厩舎にいた方?

橋口 1名だけ他の厩舎から来たんですけど、あとは全員父の厩舎からです。僕にとっては小さい頃から知っているスタッフばかりなんです。

 小牧さんのコラムで拝見したのですが、「慎ちゃん」って呼ばれているとか。「先生」って呼ばれることもあるんですか?

【「太論」より抜粋 → 小牧:厩舎のスタッフは子供の頃から彼を知っているから、みんな「慎介」って呼んでんねん。でも、調教師に対して呼び捨てもないやろ? だから、僕の提案で新しい呼び名を決めようやっていうことになって。で、決まったのが……「慎ちゃん」!】

橋口 「太論」ですよね! 「先生」なんて誰も呼ばないです(笑)。「慎ちゃん」って、本当にそのまま。でも、めちゃくちゃやりやすいです。みんなすごくよくやってくれていますので。

 小牧さんも「まだ始まったばかりやけど、和気あいあいとしたいい雰囲気やで」とコメントされてました。

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▲小牧さんも「まだ始まったばかりやけど、和気あいあいとしたいい雰囲気やで」とコメントされてました


橋口 実は、父の厩舎とはやり方をガラッと変えたんです。飼い葉も変えましたし、運動の内容も違います。父の厩舎では坂路を多く使っていたんですけど、今は角馬場で準備運動をしたり馬場で追い切ったり、そういったこともしています。運動時間も増えましたしね。あと、担当の馬だけじゃなく、みんなで全部の馬をみるというシステムにしています。

 担当馬はなしという?

橋口 いや、担当馬はいるんですけど、担当馬以外の馬もみんなで目を掛けていこうという。本当に全部を変えたので、さすがに戸惑いや反発もあるのかなって覚悟はしてたんですけど、意外とすんなり受け入れてくれて。こちらから何も言わなくても、自発的にマイクロレーダーを当てたりとか、そういったこともやってくれています。本当にありがたいですね。

 それだけ愛されているというか、信頼されているんでしょうね。

橋口 愛されているのかは分からないですけど(笑)。もしかしたら、僕の知らないとこで反発の声が出ているのかもしれませんが、僕まで届いていないので、それはそれで僕は気持ちいいので大丈夫です(笑)。

(次回へつづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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