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距離延長のリスクやいかに?

  • 2016年08月16日(火) 12時00分


簡単に楽観視してよい条件替わりでないことも事実

 今週の札幌記念、注目はやはりモーリスだ。転厩前には2200mの京都新聞杯を使ったこともあったが(7着)、本格化してからは1600mがほとんどで1800mの条件戦が1走だけ。距離延長をこなせるかどうかが問題になる。

 同馬に関する客観的な指標も見ているであろうノーザンファームが適性を大きく見誤ってくるということは考えづらいし、スクリーンヒーロー×カーネギー×モガミ×フィディオンという血統は、むしろマイルでスピード勝負をしているのが不思議でもある。ただ、簡単に楽観視してよい条件替わりでないことも事実だ。

 1996年以降の約20年間で、GIかGIIの芝2000m古馬戦に出走した馬はのべ1147頭。そのうち前走が芝のマイル戦だった馬は71頭いたが、その成績は[1-3-5-62]と奮っていない。回収率は単9%・複44%となっている。

 該当出走馬の多くを前走オープン特別組が占めているのも事実なのだが、唯一の勝ち馬がその組だったミッキーダンス(都大路S7着→金鯱賞1着)なので、前走重賞組に限定すると[0-3-5-32]となる。前走重賞1〜2着馬に限定した場合は[0-0-2-6]、距離延長の2000mのレースで1〜2番人気に推されたケースに限定すると[0-2-0-4]などとなるが、いずれにしても強調材料にはならない。ちなみに後者で1番人気だけでなく2番人気も入れたのは、1番人気だったケースがファレノプシス(マイラーズC10着→札幌記念7着)しかいないからだ。

 まあ、近走の内容が良く、距離延長の一戦で堂々1番人気になるような馬はいままでいなかったわけだから、データでは計れない→素直に買う、という選択も否定はできない。今回に一番近いケースは、エアジハードだろうか。同馬は安田記念1着から天皇賞秋へ向かい、その時点で2000mは完全な初距離。それでも天皇賞では3着に頑張った。

 エアジハードよりモーリスが強く、スペシャルウィーク・ステイゴールドのいた天皇賞秋より今回のほうが相手が弱い、と考えれば、モーリスは買える。一方で、先述したように2ハロンの距離延長が良いパターンでないのも事実。どちらのシナリオに賭けるか、これはギャンブルというよりも、各自の性格を映すような話になってきそうだ。

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1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

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