10月22日、川崎競馬。仕切り直し(20日・台風中止)で行なわれた「ロジータ記念」。アイチャンルックが接戦を凌ぎ、初タイトルをものにした。単勝1.6倍、しかし文字通り薄氷を踏む勝利。初コンビ・的場文騎手が、よもやの先行策をとり道中2番手、向正面からは早々と先頭。直線いったん独走かにみえたが、現実はゴール前カネマサヴィーナスの急追に会い、かなりきわどい鼻差だった。もう一完歩あれば間違いなく交された脚いろ。テンから脚を使う競馬に戸惑いがあったこと。他馬と2〜4キロの斤量差があったこと。もっとも当の的場文騎手は「スローになることはわかっていた。行ける脚がある以上、この方(先行策)がいいでしょう」。危なかった…ではなく、計算通り…を強調した。常に前々で先手を打つ、“オレ流”“的場流”ということか。負けが許されない場面でみせる、勝負師の真骨頂。ただこの経験が、今後同馬の糧になるか、あるいは思わぬ迷いになるか、案外微妙な部分もあるとも思う。記者個人としては「追い込むアイチャン」、その個性が好きなのだが。
ロジータ記念(3歳以上牝馬 別定 南関東G2 2100m梢重)
◎(1)アイチャンルック (56・的場文) 2分16秒1
△(2)カネマサヴィーナス (54・今野) 鼻
○(3)ゴールドファミリー (54・山田信) 4
▲(4)クラマサライデン (54・森下) 2
(5)アモール (52・左海) 首
……………………………………
△(6)スガコ (52・一瀬)
△(7)パッションマリー (54・張田)
単160円 馬複1,270円 馬単1,320円
3連複2,410円 3連単6,570円
ともあれ、2分16秒1は2100mで施行された過去6年に遡ってNo.1。一つ視点を変えれば、カネマサヴィーナスの大好走ともいえるだろう。「直線前(アイチャンルック)がフラついたので差せると思ったけれど…。でも牝馬同士、強気に乗ったのがよかったですね」(今野騎手)。7番人気の桜花賞馬。なるほど当時恵まれたのは確かだが、そこから古馬相手、牡馬相手、逞しくキャリアを重ね、いよいよ本物に成長している。息の長い末脚。GOサインからの反応も今日は見違えるほど素早かった。後続は離され、好位からひと息動ききれなかったゴールドファミリー3着、同様に流れ込んだクラマサライデン4着。この2頭には距離も少し長そうだ。むしろ中団のまま5着アモールはハチきれるような好馬体で、まだ昇り目がイメージできる。穴人気となったパッションマリーは川崎コースがどうやら合わない。
アイチャンルックは、11月3日、JBCデーの新設重賞「TCKディスタフ」に進むようだ。「もう一段力をつければ交流重賞でも楽しみが出る」(坂本一栄調教師)。デビューから丸一年、まったく息を入れず使われ、それでいて一戦ごとに着実な地力アップ。二世代上のラヴァリーフリッグがそうだったが、このタフさ、頑健さは、牝馬らしからぬ…ではなく、むしろ牝馬ゆえの生命力なのだろう。この夜、同馬にタイトルと刺激を同時に与えた的場文騎手。コンビ続行とすると、また新しい興味も浮かぶ。
☆ ☆ ☆
南関東、2歳重賞第2弾「平和賞」。当初出走を表明していた鎌倉記念馬エスプリフェザントは、レース間隔を熟慮してハイセイコー記念(大井11月11日)→全日本2歳優駿(川崎12月22日)…へステップを変更する。馬自身は中間疲れもみせず順調とのこと。いずれにせよ来春はクラシックロードを歩む。早めに大井で右回りを経験させる、その意味ではこちらのローテーションが理想的かもしれない。
平和賞(10月27日船橋 2歳定量 南関東G2 1600m)
◎ツインイーグル (54・石崎隆)
○シーチャリオット (54・内田博)
▲ルパン (54・斉藤正)
△パークリーアケコ (53・石崎駿)
△ガイアヘッド (54・的場文)
△レーヴェンツァーン (54・江川)
△ティーエスキング (54・真島)
ワタリファイター (54・左海)
今回“目玉”はシーチャリオットだ。ダーレー・ジャパン所属のシーキングザゴールド産駒。9月24日のデビュー戦は1000m1分01秒0、終始持ったまま後続を7馬身ちぎってみせた。川島正行厩舎、同じ父のゼレンカ(現3歳・東京湾C・2着)と比較しても一つ次元が違う印象。466キロ、馬体にそう威圧感はないものの、柔軟な身のこなし、重心が沈む走法に一流馬のムードがある。迷った末の対抗評価は、1000m→1600mを懸念したためだが、本音をいえば勝ってほしい。いずれにせよ今回の内容しだいで、エスプリフェザント、最大のライバルにのしあがる。
ツインイーグルは川崎デビュー2連勝後、JRA函館「ラベンダー賞」に挑戦した。1200m芝、結果7着だが、南関馬とすると異例のチャレンジ。まずその意気やよし、そして陣営(池田厩舎)の並々ならぬ期待を感じた。続くゴールドジュニアー、鎌倉記念、3、4着。一貫差す競馬に構え、数字以上に中身が濃い。今回船橋1600m。ここで石崎隆騎手を配したあたりにも、背水の陣が伝わる。
怖いのは、昨年ランノホシと同パターンでいきなりを狙う北海道組。中でもヤマニンゼファー産駒ルパンは1500m〜1700mに良績があり、混戦向きのイメージが浮かぶ。同様にパークリーアケコ、認定新馬を9馬身差で勝ったティーエスキング。的場文・ガイアヘッドはシーチャリオットが先行策とすると末脚不安で、大井低レベルからも強気に推せない。むしろ3戦2勝、少し時計は足りないものの、追って味があるレーヴェンツァーン。