▲今年8月に老衰のため、天国へと旅立ったウィナーズサークル。「あの馬の余生は幸せだった」と松山元師が語った意味は
松山元師「あの馬の余生は幸せだったと思います」
茨城県笠間市にある「東京大学農学生命科学研究科高等動物教育センター」(以下、東大牧場と略)に、ウィナーズサークル(牡)の取材に訪れたのは、2014年のことだった。同馬を管理していた松山康久元調教師と生産した栗山牧場の栗山英樹氏にも同行して頂いた。
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当時の記事 東大牧場に向かう前に、ウィナーズサークル生誕の地、茨城県稲敷市にある栗山牧場にも立ち寄った。茨城県産のダービー馬は、これまでウィナーズサークル唯一頭。幼い頃のウィナーズサークルが遊んだであろう放牧地を前に、当時の思い出話に花が咲いた。
栗山牧場からしばしのドライブののちに到着した東大牧場。松山元師は、ウィナーズサークルのために、段ボール一箱の人参をプレゼントに用意していた。師の感謝の気持ちと愛情が、その箱一杯に詰まっているように思えた。
ウィナーズサークルは、取材時、既に28歳と高齢であり、種牡馬生活を送っていた北海道から東大牧場に移動して来た2001年以来、13年振りの再会となるだけに、もし老いた姿になっていたら…。牧場に向かう車中、松山元師は心配を口にしていた。ところが牧場の職員に案内されて、放牧地の奥で草を食むウィナーズサークルの真っ白な馬体を目にした瞬間、松山元師の表情が一変した。