(撮影:高橋正和)
◆ホワイトフーガが負けるならこういうパターン 予想で「負けようがないホワイトフーガ」というタイトルにしてしまったのがなんとも恥ずかしい。ただ、なるほど負けるならこういうパターンかというレースだった。
スタートしてのダッシュが速かったトーコーヴィーナスが逃げたペースは、11秒台のラップが一度もなく1000m通過が62秒6。ブルーチッパーを制して逃げたものの、見た目の印象よりもかなり遅いペース。それがホワイトフーガにとっての鬼門で、道中で何度か行きたがる場面があった。
昨年のレディスプレリュードが1000m通過61秒2というペースで、ホワイトフーガはブルーチッパーの2番手でかなり行きたがるところを見せ、サンビスタから3馬身ほど離れた3着。しかし本番のJBCレディスクラシックはブルーチッパーが1000m通過59秒4というかなりのハイペースで逃げたため、6番手で折り合って直線での伸びにつながった。
そして年明けのTCK女王盃では、1000m通過が64秒2というスローペースでもなんとか折り合いをつけていただけに、4歳になって大人になった女王の貫禄を見せたかに思われた。しかしその後に使われたのが、厳しいペースのフェブラリーS(10着)に、1400mのさきたま杯(5着)ではソルテとコーリンベリーが競り合うところを追いかけて行く形。それで前半にぐいぐいと行くレースを思い出してしまったのではないだろうか。前走スパーキングレディーカップは58kgを背負って楽勝だったとはいえ、乗替った蛯名正義騎手は抑えるのにかなり苦労していて、しかし我慢しきれず3コーナー手前では逃げたブルーチッパーを交わして先頭に立ってしまった。それゆえ最後の2Fは13秒6、13秒5だから、脚が上っていた。
今回のホワイトフーガは、前に馬を置いて、できるだけ我慢させようというレース運び。ところが、レース映像が切れたところであらためての確認はできないのだが、1コーナー手前で内のタイニーダンサー、外のサンソヴールに挟まれるような格好になって頭を上げ、位置取りを悪くする場面があった。さらに4コーナーでは前3頭がカベになって行き場がなく、直線を向いてトーコーヴィーナスの外に出そうとしたところ、行き脚が鈍ったブルーチッパーに外からフタをされるような態勢になり、ラチ沿いに進路を修正する場面があった。不利とはいえないまでも、それらのロスが影響した結果、逃げ粘っていたトーコーヴィーナスに並びかけるまでの2着同着だった。
JBCレディスクラシックでは、あらためてブルーチッパーがどんなペースでハナを切ってくれるかだが、今年はレディスプレリュードから距離短縮の1600m、スパーキングレディーCで一度経験している舞台ということでは、あらためて見直してみたい。
それにしても勝ったタマノブリュネットは鮮やかな勝ち方だった。もともとスタートダッシュのいい馬ではなく、前半は中団よりうしろを追走。道中もあまりペースは上がらなかったことで、3、4コーナーではホワイトフーガの直後の外目まで位置取りを上げてきた。そして4コーナーから直線では思い切って大外へ。内で行き場を失っていたホワイトフーガに対して、タマノブリュネットは視界の開けたところを一気に突き抜けた。前走1000万条件を勝って調子を上げていたということもあっただろうし、今回の勝ちタイム1分54秒7は、このレースが中央との交流となっての過去5年、さらにはTCK女王盃が1800mで行われるようになった2004年以降との比較でも、もっとも遅いタイムという流れにも恵まれた。条件戦の勝ちタイムを見ると、この日の馬場が特に時計がかかっていたということもなく、それを考えると、ホワイトフーガが能力を発揮できなかったぶん、レースのレベルはイマイチだった。
トーコーヴィーナスは好スタートから思い切って逃げたことでの好走となった。地元の園田ではまじめに走らなかったり、単独で先頭に立つと遊んでしまったりするところがあり、しかし金沢、名古屋への遠征では圧巻のレースを見せていた。遠征のほうがまじめに力を発揮するというのは興味深い。グランダム・ジャパンのタイトルを目標に6月からの4カ月間で6戦と使い詰めだっただけにJBCレディスクラシックはともかく、コーナーを4つ回る地方の1400m戦でも力を発揮できるだけに、牡馬相手の地方交流重賞を狙ってもおもしろいかもしれない。