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秋の夜と怪物たち

  • 2004年11月01日(月) 19時14分
 11月3日、いよいよ「JBCデー」。01年から4度目、大井競馬場では01、03年に続き3度目の開催になる。米ブリーダーズCにならったダート競馬の祭典。それなら、マイルがほしい、2歳戦(ジュヴェナイル)がほしい、牝馬戦(ディスタフ)がほしい…。毎年願望ばかりを書いてきたが、現実は歯止めがきかないギャンブル不況。売り上げが経費増に追いつかず、JBC、その開催自体が危ぶまれている状況らしい。それでも来季05年は、意外なほど早々と「名古屋競馬場」開催が決定した。主催者はひとまずやる気と意思をみせている、そういうことか。

 正直あまり書きたくないこと。しかし最近この時季が来るたびしばしば思う。「ダート競馬」とは本当に面白いものなのか…。いや本来の面白さがどうこうは別にして、ファンへのアピール度、認知度が期待ほどあがらず、いきおい馬券の売り上げもジリ貧という事実がある。日本人はやはり色彩感覚に鋭敏で、緑のターフ、そこを疾走するサラブレッドを至上のものとするのだろうか。ダート競馬の限界。ただJBCのクラシック、スプリントとも、今回など顔ぶれはほぼ極限まで充実している。思えばあれは新し物好きのファン心理だったのか。レギュラーメンバーが勝った01年、場内は5万人を超す人出で大フィーバー。その帰り道、記者は立会川駅で京急線を3本ほど見送った。ごく客観的に、今回アドマイヤドン中心のJRA強力布陣、対する地方側も駒がそろい、ファン6万を迎えて不思議ない大一番。しかし昨今の流れからはたぶんその半分も入るまい。京急線もモノレールもすんなり乗れる。運がよければ座れるかもしれない。なんだかなぁ…。そう考えてしまうと正直手詰まり、何やら忸怩(じくじ)たる思いがある。

JBCクラシック(3歳上定量 交流G1 2000m)

◎シャコーオープン  (57・的場文)
○アドマイヤドン   (57・安藤勝)
▲アジュディミツオー (55・内田博)
△ナイキアディライト (57・石崎隆)
△タイムパラドックス (57・武豊)
△ビッグウルフ    (57・蛯名)
 ユートピア     (57・横山典)
 トーシンブリザード (57・佐藤隆)
 アンドゥオール   (57・松永幹)

 冒頭から不景気な話になったが、今回はその忸怩たる思いを、ひととき断ち切ってくれそうな馬がいる。シャコーオープン。交流戦初登場がいきなりG1。なるほど客観情勢は厳しいが、それでも今季この馬の本格化は、かつてのアブクマポーロにムードが近い。根拠を3つ書く。的場文騎手との新コンビで4連勝、すべてワンサイド。それも前走東京記念が昨年ネームヴァリューと同タイムであること。ジェイドロバリー×ハイセイコー。いかにもダートの雄らしい血統背景を持つこと。大井の重賞レースでは、ホームの利がしばしば格と実績を逆転すること。14頭立て5番枠に入った。3歳時のゲート難、折り合い難はすでに解消しており、ロスなく乗れるこの枠順は願ってもないだろう。4〜5番人気程度と推測する。馬券的にもかなりおいしい(当たればね…)。

 アドマイヤドンは、前走南部杯でおよそ1年半ぶり、日本馬に負けを喫した。ユートピアのマイルにおける能力を思えばそう不思議でもないが、最後脚いろが同じになってしまったあたり、パワー、精神力、徐々に下降気味の懸念はやはりある。そのユートピアは大井コースに相性が悪く、距離2000mも減点材料。タイムパラドックスも同様に帝王賞4着では、メドが立っているといいにくい。逆に大井得意はビッグウルフだが、帝王賞で離された3着がいっぱいのレースぶり。こじんまりまとまってしまった印象が濃い。

 ナイキアディライト、アジュディミツオーの比較は、前走日本テレビ盃がきわどかっただけに、2キロもらった後者有利と判断した。アディライトは洗練されたスピード馬。対してしミツオーはまだ荒削りながら巨漢の3歳、怪物クンのイメージだろうか。コンビ2度目、息が合いそうな内田博騎手の手綱にも期待が大きい。

      ☆     ☆     ☆

JBCスプリント(3歳上定量 交流G1 1200m)

◎マイネルセレクト  (57・武豊)
○アグネスウイング  (57・中舘)
▲ヒカリジルコニア  (57・吉田稔)
△シャドウスケイプ  (57・小牧太)
△タイガーロータリー (57・水野貴)
△ディバインシルバー (57・安藤勝)
 サニングデール   (57・福永祐)
 カセギガシラ    (57・的場文)
 シャンハイジャンプ (56・佐々国)

 当たり前すぎる予想だが、ダート短距離は、一度チャンピオンが確定するとその力関係が相当期間崩れない。強いものは強い、速いものは速い、そんな結果に終わると思う。

 マイネルセレクトは前走東京盃、水の浮く道悪を直線一気、ケタ外れの末脚で勝ち切った。コース特性からみて、これは別次元の力がないとできない芸当。さきたま杯凡走を引きずらず、あっさり流れを引き戻したあたりも、タフさ、逞しさの証明だろう。昨年2着は、誰の目にも勝ち馬以上と映る痛恨の鼻差だった。「今年はここが最終目標」。陣営も早くから明言している。

 東京盃の内容からはヒカリジルコニアが2着指定席といえそうだ。きわめてレース勘のいい短距離走者。前走シリウスSの瞬発力を買えばアグネスウイングだが、大井初コースである以上、人気ほどの信頼度は出てこない。シャドウスケイプの追い込みも強烈だが、こちらは大井1200mで勝ちづらいタイプの典型とみえる。むしろ薄目はタイガーロータリー。距離、コース、さまざまな経験を重ね、いかにもそれらしい根性としぶとさを備えている。同馬をどこかにシードした3連複、3連単を小額ずつ買ってみたい。

     ☆     ☆     ☆

 10月27日、船橋「平和賞」。シーチャリオットがその“天才ぶり”をいかんなく発揮した。スタートでひと息立ち遅れ、中団からの競馬。しかしヒヤリとしたのはほんの一瞬で、道中馬混みの中、不思議なほどスムーズに折り合いがついている。3〜4コーナー、無理なく位置取りを上げていき、直線迷うことなくインを突いた。GOサインからの伸びはそれこそ圧巻。一瞬のうちに後続を4馬身突き放し、しかもまだ余裕がある。「2歳馬でキャリア2戦、これほどの馬に乗ったのは初めてですね。加速がついて重心が沈む。ステッキを入れると嫌がるようだけど、上(鞍上)が動かなければどこまでも伸びてくれる」(内田博幸騎手)。1600m1分40秒4は軽い馬場にせよ同レースレコードで、最後の脚いろも含め絶大な価値がある。ダーレージャパン所有、川島正行厩舎、父シーキングザゴールド。終わってみると、同パターンの第一期生ゼレンカ(現B1)級とははっきり別次元の馬だった。

平和賞(2歳 別定 南関東G3 1600m不良)

○(1)シーチャリオット (54・内田博) 1分40秒4
 (2)ワタリファイター (54・左海) 4
△(3)パークリーアケコ (53・石崎駿) 首
▲(4)ルパン      (54・斉藤正) 4
◎(5)ツインイーグル  (54・石崎隆) 2
…………………
△(7)ガイアヘッド    (54・的場文)
△(11)レーヴェンツァーン (54・江川)

単190円 馬複1,540円 馬単1,590円
3連複8,690円 3連単28,980円

 パドックで見たシーチャリオット。肩先から背中、腰の線が緩やかで美しく、記者などの素人目にもきわめてアカ抜けて写った。首をグイと下げ落ち着いたフォームの周回。内田博騎手がまたがり本場場に出ると少しチャカつく仕草もみせたが、ものの数分もすると待避所で平常心に戻っていた。川島正行厩舎、トレンドともいうべき“凄みのある馬”ではないが、反面心身両面で洗練されている。いずれにせよ、新馬1000m→平和賞1600mを、いきなり差す競馬でクリアした事実は相当重い。11月「ナド・アルシバ競馬場C」を使って「全日本2歳優駿」に進む予定。エスプリフェザント、最大のライバルが現われた。

 転入組が2〜4着を占めた。ワタリファイターは岩手から転入2戦目。中団から外々を追い上げ、息の長い末脚をみせている。パワフルな馬体と走法。まだ成長があるだろう。パークリーアケコは道中終始ササリ気味の走りだったが、石崎駿騎手がうまく内ラチ沿いをリードして先行の利をフルに生かした。ルパンは14キロ減でパドックから馬体、歩様が硬くみえた。この状態で入着だから、これは道営レベルというべきだろう。期待したツインイーグルは完全にスピード負け。道中ワタリファイターと同位置を進んだものの、勝負どころで置かれてしまった。のびやかな馬体、弾力のある歩様など今日もよくみせていたが、どうやら単に記者の好みか。再浮上があれば距離延びてからになる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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