▲今年の凱旋門賞は海外馬券発売の第1号 効果や今後の展望をノモケンが解説(撮影:高橋正和)
第95回凱旋門賞(仏GI、シャンティイ・芝2400m)が目前に迫った。5月の日本ダービーを制したマカヒキ(牡3、栗東・友道康夫厩舎)も、同じコース、距離で行われた前哨戦のGII、ニエル賞を順当勝ちし、本番に備えている。
今年の凱旋門賞は、マカヒキが10年前に勝てなかった父ディープインパクトの雪辱を期する舞台であると同時に、国内競馬界にとっては記念すべき海外馬券発売の第1号となる。当欄では昨年1月に法改正が報道された後に取り上げて以来、海外馬券発売に触れる機会がなかったが、1年8カ月間に競馬法改正から発売準備に至る過程は極めて順調に進み、今日を迎えている。10月2日の発売を前に、改めて「何がどうなるのか」を整理し、今後の展望にも言及してみたい。
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発売対象レースには幅も?
海外主要レースの馬券発売解禁を骨子とした改正競馬法は、昨年4月24日の衆院本会議で、全会一致で可決成立した。限られた数とは言え、天下御免で馬券を発売できるレースが増える今回改正は、ギャンブル規制の緩和を意味しており、日本共産党を含む全会一致での成立は、法案審議がほぼ無風で進行したことを示している。それから1年5カ月間、発売に向けた準備作業は事実上、「2016年10月2日」に照準が合わされていた。ディープインパクトやオルフェーヴルの凱旋門賞での活躍が、法改正へのモメンタムの役割を果たした経緯からも、当然の帰結だった。
法案成立後、まず関心を集めたのは発売対象レースの指定だった。改正法3条2項は、JRAが発売できる海外競走(国内と同水準の監督制度により、公正確保措置が取られているもの)を、農水大臣が指定できると規定しており、指定競走リストは昨年11月に農水省から24競走を搭載した試案が示された後、パブリックコメントの受付などの手続きを経て、原案がそのまま指定競走(別表)として公示された。
▲※別表 指定競走の24レース
リスト作成は、「日本馬が頻繁に出走するGI」に絞ったことから、必ずしも世界的に格式の高い競走が網羅されてはいない半面、日本馬の遠征が多いドバイ・香港が11競走と半数近くを占める。
国際競馬統括機関連盟(IFHA)が過去3年の平均レースレートを基に算定した世界の「TOP 100 GI Races」と、指定競走リストを比較すると、10位に入った英国のチャンピオンSが日本側のリストに入っていない。日本馬の参戦がないためだが、同レースは近年、フランケルの引退レース(12年)として注目を集めるなど、急速にステータスが上昇している。この辺は凱旋門賞一辺倒で2000m路線を軽視してきた関係者のバイアスを反映している。