オータムセールは昨年の実績を大幅に上回る好成績
昨年の実績を大幅に上回る好成績
10月3日(月)より5日(水)まで3日間の日程で開催されていたオータムセール(日高軽種馬農協主催)は、春以来の各市場における盛況ムードのまま、ひじょうに活発な取引が展開され、昨年の実績を大幅に上回る好成績を収めた。
初日こそ一時雨に見舞われたものの、天候はすぐに回復し、2日目、3日目ともに晴天の下、開催できたのは何よりであった。会場の北海道市場には初日から数多くの購買関係者が集まり、大変な賑わいを呈した。今回は、前年を1割上回る735人の購買者登録があり、落札者名にも比較的新しい馬主の名前が多く見られた。
展示風景
展示開始は季節の進んだこの時期の気候を考慮し午前9時に設定され、セリ開始は午後0時半である。従来、オータムセールともなれば、「売れ残りバーゲンセール」的な要素が強く、沈滞したムードの中、淡々不活発なセリが進行する時代が長く続いたが、近年は徐々に様変わりし、売却率はこの10年で倍増となった。2006年には35%に過ぎなかったのが、2011年に50%を突破し、昨年は65.85%まで上昇してきていた。
それが今年はさらにあらゆる数字を更新する記録ずくめのセールとなり、3日間とも「ここで1歳馬を落札しよう」という購買者の熱気が充満していた。
まず簡単に数字をまとめておくと、上場頭数は660頭(牡267頭、牝393頭)、落札頭数は474頭(牡207頭、牝267頭)。売却率は71.82%(牡77.53%、牝67.94%)。対前年比で5.96%もの伸びを記録し、驚異的な売却率となった。
また、総売り上げは3日間を通じて16億5099万6000円(税込)となり、こちらも前年を1億7409万6000円上回る数字を叩き出した。平均価格は前年比6万4364円増の348万3114円。上場頭数は昨年より4頭増だが、落札頭数が42頭増えたことで、売却率はかなり上昇した。しかし、低価格帯の落札馬が少なくないことから、平均価格の伸びは小さかった。
最高価格馬457番の落札場面
最高価格馬「カリズマの27」
落札最高価格馬は、2日目に上場された457番「カリズマの27」(牡鹿毛、父シンボリクリスエス、母の父アドマイヤムーン)の1944万円(税込)。販売申込者は岡本昌市牧場、飼養管理者は(有)様似木村牧場、落札者は小川勲氏。500万円からスタートした競り合いはその後瞬く間に価格が跳ね上がり、1800万円まで急上昇した。
牝馬最高額170番の落札場面
牝馬最高額「カネツプリンセス2016」
牝馬の最高落札価格馬は、170番「カネツプリンセス2016」(栗毛、父ゴールドアリュール、母の父サクラバクシンオー)の1674万円(税込)。販売申込者は(株)カネツ牧場、落札者は了徳寺健二氏。
昨年、税込1000万円以上の落札馬は14頭いたが、今年は6頭増えて20頭になった。その反面、800万円〜1000万円クラスが昨年から17頭から6頭に急減した。600万円〜800万円は同じ17頭だが、400万円〜600万円の価格帯は前年の48頭から今年は85頭まで激増している。あるいはこのクラスの落札馬が健闘し平均価格上昇を牽引したのかも知れない。
なお、300万円未満の落札馬は、昨年247頭いたが、今年はさらに増えて267頭に達した。全落札馬のうち56.3%がこの価格帯に集中している。性別では牡60頭に対し、牝騎馬が197頭と、圧倒的に牝馬の占める割合が高い。1頭のサラブレッドにかかる生産コストは牡牝それほど大きな差があるわけではないので、今後は、牝馬の価格をいかに底上げできるかが大きな課題になりそうだ。
庭先取引主体だった時代から今は大きく市場取引主体へとシフトしてきており、そのこと自体は大いに歓迎できる。購買者も生産者も、市場への依存度をより強くしてきている現状を考えると、今後はますますその傾向が高まって行くことになりそうだ。
そうなると、新たな問題も浮上してくる。1歳市場に限ると、今年はセレクション1日、サマー5日、オータム3日の計9日間でセリを行なったが、一部からはサマー日程の短縮要望(せめて4日間にして欲しいという)が強く寄せられているとも伝えられる。生産者としては、できることなら、良質馬はセレクション(またはセレクト)で、それ以外の生産馬もなるべくサマーセールのうちに売りさばいてしまいたいというのが本音だ。しかし、市場を主催する日高軽種馬農協としては、これ以上、サマーセールの上場馬が増えてしまうと対応が難しくなるわけで、できるだけ無理のないように上場馬を振り分けたいと考えている。サマーではまだ成長しきれていない1歳馬でもオータムにはグンと馬が良くなって評価が上がる可能性もあり、できるだけその馬に合った市場に上場することを勧めたいと組合側は考えている。
ただ、それとて強制できることではないので、今後の大きな検討課題になって行きそうだ。活況を呈する市場になればなるほど、上場申し込み馬は増えて行くことになり、さらなる新たな問題が出てくることになるかも知れない。
なお、これで日高軽種馬農協主催の今年の全市場が終了し、トレーニングセールからオータムまでの4市場に上場されたのは計2406頭、うち1606頭が落札され、年間の売却率は66.75%となった。また売り上げ総額は税込で93億992万4000円。税抜きでは86億2030万円となった。
これまでの記録はバブル景気に湧いた1991年(平成2年)の税込95億5214万円となっているが、今年の数字はほとんどそれに近づく快挙と評価できる。
日高軽種馬農協の木村貢組合長
市場後、日高軽種馬農協の木村貢組合長は「ここまで数字が伸びてくると、ひとつの目標として100億円の大台を目指したいですね」と笑顔で語った。売却率の上昇とともに、注目されるのが、出場率の上昇である。バブル期には「良質馬ほど欠場している」と批判が絶えなかったのも事実で、前記売り上げピークの平成2年には上場申し込み数に対する出場率が71.23%と欠場馬が4頭に1頭以上に上っていた。
それがここ4年は91%台で推移するようになり、こうしたことも市場への信頼性を高めることに大きく寄与しているものと思われる。ともあれ、こうなってくると木村組合長のいう100億円も、決して夢物語ではなくなってきている。