繁殖馬セールは活発な競り合いが展開された
売却率80%を初めて達成
(株)ジェイエス主催による恒例の「繁殖馬セール」が昨日(10月19日)、新ひだか町静内の北海道市場にて開催され、好調に推移した1歳市場の結果も後押しする形になり、ひじょうに活発な競り合いが展開された。
おそらく今年最後となるであろう温暖微風の気候にも恵まれたこの日、胆振日高のみならず、青森からも生産者が来場し、それぞれチェック済みの繁殖牝馬を待機馬房まで見に行って吟味する姿が見られた。
上場を待つ繁殖馬たち
セリ開始は10時半。200頭を超える上場頭数に加え、日照時間が徐々に短くなるこの時期の開催を考慮し、午前中からのセリとなった。
今年も社台ファーム(社台コーポレーション、社台ブラッドメアを含む)の55頭を筆頭にノーザンファーム(ノーザンレーシングを含む)22頭、ダーレージャパン38頭など大手の上場馬が過半数を占めることもあり、会場は熱気に包まれた。
今年から、100万円以上の価格に到達した上場馬は、1万円刻みのセリ上げを自粛するよう鑑定人から説明があり、ほぼ10万円刻み以上の単位でセリが進行したこともあって、進行はひじょうにスムーズであった。
また今年は、受胎馬と不受胎馬、未供用馬が混在する形で登場したこと、大手の上場馬を固めることなく分散したこともあり、最後まで売却率が落ちることなく経過した。
207頭(受胎馬177頭、空胎馬30頭)が上場され、166頭(受胎馬139頭、空胎馬27頭)が落札。売却率は、秋の繁殖馬セールとしては初めてとなる80.19%に達した。また売り上げ総額も昨年の秋のセールを上回る7億8023万5200円(税込)を記録した。なお、平均価格は、昨年より26万4949円高い470万212円であった。
繁殖馬最高価格馬の落札場面
最高落札価格馬「ペイトンドーロ」
最高落札価格馬は、69番「ペイトンドーロ」(10歳鹿毛米国産、父Medaguliad'Oro、母Jealous and Jaded、母の父ジェイドハンター)の4644万円(税込)。スクリーンヒーローを受胎しており、最終種付け日は5月12日。パカパカファームからの上場馬で、落札したのはノーザンファーム。
5頭に4頭が売れて行くセールだったが、好調に落札される大手牧場からの上場馬と比較すると、日高の中小牧場からの上場馬はやや苦戦した。ここで新たな繁殖牝馬を求める顧客の多くは日高の中小牧場で、狙い目は大手の放出する繁殖牝馬である。そうした色分けがはっきりと表れ、税込1000万円以上の価格で落札された17頭(ざっと数えただけなので漏れがあるかも知れない)のうち、14頭が、社台、ノーザン、ダーレーの“御三家”からの上場馬で占められていた。
繁殖馬のセールとしては同セールが国内唯一の存在であり、内外からの注目度がひじょうに高い。来年、再来年を視野に、繁殖牝馬の更新を図りたい生産者にとっては、ここで目当ての馬を落札するのが最も近道なのは言うまでもない。
また、生産者のみならず、グループや会社名義での落札も目についた。これらは、どこかの生産牧場に繁殖牝馬を預ける形になるわけで、繁殖牝馬が一つの投資対象にもなってきていることを示す材料と言えそうだ。
なお、このセールで取引された繁殖牝馬から生まれた活躍馬はこれまでにも多数出ており、昨年から今年にかけても、アデイインザライフ(母ラッシュライフは2013年秋の取引馬)、ホワイトフーガ(母マリーンウィナーは2009年秋の取引馬)、オジュウチョウサン(母シャドウシルエットは2009年冬の取引馬)、ロジクライ(母ドリームモーメントは2014年秋の取引馬)など重賞勝ち馬も少なくない。
またマカヒキの全姉スウィートレイラニは今年1月の冬期セールに上場され、未供用馬のレコード価格(2214万円)で取引されている。
主催者ジェイエス代表藤原悟郎氏
セリを総括して主催者の(株)ジェイエス・藤原悟郎代表は、「昨年の記録を上回る結果になり、とりわけ売却率80%はひとつの目標と考えていましたので、達成できてとても良かったと思います。上場馬のうち12歳以下の若い繁殖牝馬が約85%を占めたこともあって、多くの方々に興味を持って頂くことができました。また来年1月には冬期繁殖馬セール、そして秋にもまた今回と同じセールを予定しておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」とコメントしていた。