11月17日、船橋「京成盃グランドマイラーズ」は、1番人気トミケンマイルズの完勝だった。道中好位でスムーズに折り合いがつき、直線馬場の真ん中からワンツースリーの瞬発力。マイル戦を勝つ、そのお手本ともいうべきレースとみえた。地元1600m、それも南関東G3級なら総合力が違ったこと。ユニークステータスのダッシュ力が断然だったぶん、かえってペースが上がらなかったこと(1000m通過60秒4)。ともあれ1分38秒6の時計は合格点で、何よりレース運びに余裕と落ち着きが感じられる。
トミケンマイルズは、前走JRA「武蔵野S」に挑戦、シンガリ負けを喫していた。しかし、今回だけではなく、こういうケースでしばしば聞かされる陣営のコメント。「仮に大きく負けても、強い相手と走ると次に必ず変わってくる―」。大舞台に昇ること。それはやはり、結果を別に大きな糧(かて)となるのだろう。
「力通り勝ててホッとしてます。走ることに真面目で前向き。あとは距離をどうするか…」(張田騎手)。1200mでは微妙に短く、1800〜2000mは少し長い。「今後はいろいろな距離、条件を使うつもり。それでさらに力をつければ…」。岡林調教師は新たな展望を示してみせた。最終的には左回り1600m「フェブラリーS」が究極目標。一度痛感させられた厚い壁を、次はどこまで昇ってくるか。
京成盃グランドマイラーズ(3歳上別定 南関東G3 1600m重)
△(1)トミケンマイルズ (56・張田) 1分38秒6
(2)ユニークステータス (54・石崎隆) 1.1/2
(3)マキノヒリュウ (52・野崎) 頭
△(4)ゴシップコラム (52・内田博) 首
◎(4)イシノファミリー (56・山田信) 同着
………………
(6)ロッキーアピール (56・今野)
○(8)チョウサンタイガー (52・酒井)
▲(12)キョウエイプライド (56・的場文)
単280円 馬複1,910円 馬単2,600円
3連複14,000円 3連単44,940円
ユニークステータスはとにかくテンが速い馬で、しかも流れに乗ってしまうと自らをセーブする利発さがある。「他の競馬も試してみたいね」と可能性(待機策)を匂わせた石崎隆騎手。いずれにせよ小回りダート、地方トレード大成功といえるだろう。
マキノヒリュウは前走埼玉新聞杯同様インを伸びた。JRAの500万から転入、中堅時代が長かったが、このタイプの上がり馬もやはり現実に存在する。期待したイシノファミリーは、いかにも腹を決めて乗る山田信Jらしく平均ペースを押さえに押さえた。それでも勝負どころで前があき、脚を余した負けではない。気持ち寂しくみえたパドックの馬体。完調ならおそらく2着があっただろう。差す競馬で味がないロッキーアピール、道中付いていけず、終わってみれば格下というチョウサンタイガー。代わりにゴシップコラムが軽い馬場と軽量を味方に善戦した。
問題はキョウエイプライド。パドックからまだ太めには見えたが、それだけでシンガリ負けは何とも解せない。「左回りがダメですね。久々もあるし、まあ次を考えます」(的場文男騎手)。確かに黒潮盃で差し切ったアジュデイミツオーが、JBCクラシックで王者アドマイヤドンとあれだけの名勝負を演じている。しかし、ジャンケンポンの三角論理は現実に成り立たないことがやはり多い。次走東京大賞典、ホームの利を得て一変があるのかどうか。逆にいえば、対キョウエイプライド、仮に1勝2敗でも、アジュディミツオーの“怪物度”が、この一戦でさらに大きく光ってきた。
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シーチャリオット(平和賞)、トウケイファイヤー(ハイセイコー記念)、エスプリフェザント(鎌倉記念・来春まで放牧休養)…勢力図と頂点がほぼはっきりしてきた牡馬と較べ、2歳牝馬はまだまだ混沌。生え抜きのレベル自体、高いとはいい難い。このままなら今後続々押し寄せるだろう転入馬が主導権を握るはず。むろん昨今の情勢からはそれで結構。ラヴァリーフリッグの3年前と状況が酷似する。
ローレル賞(11月23日 川崎 3歳牝馬定量 南関東G3 1600m)
◎ウツミキャサリン (54・佐藤隆)
○アバンティイモン (52・坂井)
▲シンデレラジョウ (52・野崎)
△ビービーシグナス (52・酒井)
△スコーピオンリジイ (53・今野)
△ザマアマゾン (53・佐藤博)
△ヒカリトリアネー (52・内田博)
ウツミキャサリンは、岩手6戦4勝、うちダート3勝で、それぞれ2着馬を8、10、7馬身ちぎっている。シャンハイ×サウスアトランティック、力まかせの先行力が特長。問題があるとすれば、前走盛岡の取りこぼしだが(1番人気3着)、当時ここ目標に転厩直前、仕上げに微妙な狂いがあったか。ごく客観的には、現状南関東馬では歯が立つまい。ポンと行かれてしまえば圧勝が浮かぶ。
相手が難しいが、トライアル「なでしこ賞」ではハイペースをまくったシンデレラジョウのレースぶりが最も目立つ。しかしあえて対抗とみたのは大井アバンティイモン。マイネルラヴ産駒らしい絶対スピードを新馬戦でアピール、続く2戦の内容にも進境を感じた。スケール上位を思わせるのは、新馬圧勝→オープン2着のヒカリトリアネーだが、中間4か月のブランク。キャリアのあるビービーシグナス、前走大井の瞬発力が光ったスコーピオンリジイ。ウツミキャサリンが一本人気なら、やはり気配しだいで絞る戦略が必要だろう。
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今週末のお楽しみは「ジャパンカップダート」。船橋ナイキアディライトが出走する。前走JBCクラシック、ハナを切れず不完全燃焼に終わったが、逆に今回気楽な挑戦、面白い部分もあるだろう。「平行線以上のデキだと思う。展開が向いてくれれば見せ場は作れる」(出川龍調教師)。ユートピア、外国馬、それをどう捌くかがまず焦点。ただG1帝王賞、そこで王者ドンと鼻差の勝負をしている以上、参加に意義…ではもちろんない。昨年ドンを差し返した、米・フリートストリートダンサー。石崎隆騎手には、そんなイメージの競馬を期待する。