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【特別対談】的場文男×福永祐一(3)『祐一くんに全国リーディングをもう一度獲ってほしい』

  • 2016年12月20日(火) 18時01分
祐言実行

▲対談もいよいよクライマックス!的場騎手の思いがけない発言も飛び出し盛り上がります


トゥインクル30周年SP企画第5弾。“大井の帝王”こと的場文男騎手と福永祐一騎手の対談は今回が最終回。通算7000勝が見えている的場騎手と、通算2000勝が見えている福永騎手。区切りの数字を意識して、目標達成に向かっていく決意を新たにしたふたり。そして、共にいまだ手にしてない「ダービー制覇」について、それぞれの思いを語り合いました。(取材・構成:不破由妃子)


俺なんかジョッキーを辞めたらただのオジサンでしょ(笑)


福永 独自の騎乗スタイルもそうですが、やはり的場さんのキャリアは、誰もがたどり着ける場所ではありません。本当にすごいことだと思います。

的場 もう60歳になっちゃったよ(笑)。思えば43年も馬に乗っているんだよなぁ。

福永 どうやってモチベーションを維持しているんですか? 秘訣があれば教えていただきたいです。

的場 それはね、目標があるからだよ。7000勝まであと61勝(11月28日の取材時点)。その目標に向かって、“よし!”と思えるから頑張れる。目標がなかったら、とっくに辞めているかもしれないね。

福永 ご自身の記録、数字を追いかけてこられたということですね。

的場 そうだね。6000勝して6500勝して、ついにここまできたかと。じゃあ、7000勝まで頑張るぞって思えたから。たとえば、今の時点で6600勝くらいだったら、辞めていると思う。さすがにあと400勝はできないからね。そうなると、精神的に続けられない。

祐言実行

▲「モチベーションは目標があること。それに向かって、“よし!”と思えるから頑張れる」


福永 なるほど。手が届く位置にある目標に向かって、気持ちを奮い立たせてきたと。

的場 そうそう。そうやってずーっと目標があったから。もうひとつはね、俺なんかジョッキーを辞めたらただのオジサンでしょ。誰も声を掛けてくれなくなる(笑)。

福永 そんなことはないと思いますよ(笑)。ジョッキーを辞めても、“大井の帝王”は“大井の帝王”のままですから。

的場 あともうひとつ、暇になるのが困る(笑)。この前、肋骨にヒビが入って20日間くらい休んだんだけど、それはもう暇で暇で仕方がなかった。冗談じゃなく、途方に暮れたよ。やっぱりさ、周りの人間から見て、暇を持て余している俺よりも、60歳になっても一生懸命にレースに乗っている俺のほうが生き方として美しいでしょ?

福永 はい。美しいと思います。でも、誰にでもできることではありませんよね。的場さん、趣味はないんですか?

的場 たまーに競艇をやるくらいかな。あ、(JRAの)競馬はやるよ。汐留のウインズに行ったりしてる。でも、ギャンブルだからやっぱり負けるんだよ。それで「アンタ、何やってんのよ!」なんて女房に怒られたり(笑)。ところで、祐一くんは今、何勝しているの?

福永 地方の勝ち鞍も入れたら、ちょうど2000勝に到達したところです。

的場 それはすごい! なにしろ中央だからね。中央での2000勝はハンパないよ。しかも、まだ40歳でしょ? 俺よりも20歳も若いんだから。

福永 やっぱり、技術、経験、フィジカルでいうと、40歳前後が一番いい時期なんですかね?

的場 そうだね。騎手は若ければ若いほどいいという職業ではないから。俺が思うに、一番いい時期は40歳、いや50歳まではいい状態を保てると思う。衰えていくのはそこからだねぇ。今、40歳の頃と同じ乗り方をしろといわれてもできないもんね。祐一くんはまだまだこれから。やっぱり全国リーディングをもう一度獲ってほしい。しばらくは祐一くんの時代かなぁと思っていたところに、あの2人が来たわけだから。

祐言実行

▲ソウルスターリングで阪神JFを制したルメール騎手。外国人騎手起用のムードに的場騎手が物申す (C)netkeiba.com



的場 今はあのふたりが上位だけど、騎乗技術は絶対に負けていないと思う。アメリカやヨーロッパでは、外国人が来たって簡単には乗せないからね。日本人ももっと、ホースマンとしてプライドを持つべきだと俺は思う。

福永 確かに、海外と日本では、外国人の処遇が違いますね。でもやっぱり、彼らにはそれだけ技術がありますから。

的場 俺は洋一さんも好きだけど、祐一くんも大好きだから、全国リーディングを獲ったときは「やっと天下を獲ったかぁ」って本当にうれしかった。

福永 ただ、地方のジョッキーが中央の免許を取って入ってきたときも、最初は同じ感じでしたからね。だから、数年経てば落ち着いてくるかもしれません。そうなったときに、今以上に関係者の信頼を得られるジョッキーでありたいと思っています。

的場 そうだね。騎手はいい馬に乗らなきゃ勝てないし、あとはいかにそのチャンスを掴めるかが大事だから。さっきもいったけど、祐一くんにはもう一度全国リーディングを獲ってほしいよ。俺は無事に7000勝して、ケガなく引退することが今の目標かな。

福永 でも、佐々木竹見さんの記録を抜くことは、もちろん視野に入っていますよね? あと212勝(取材時点)だとか。

的場 いやぁ、無理でしょ。

福永 7000勝に到達すれば、またその数字が近くなってくるから、的場さんならそこでまた“よし!”と思うんじゃないですか?

的場 うん、そうかもしれないね。今までも目の前に目標があったから頑張ってこられたわけだから。ただねぇ、7000勝したときに「あと150勝」と思えるかどうか…。もうガタがきてるもん。あちこち痛いし(笑)。

福永 的場さんなら成し遂げてしまう気がします。

的場 ありがとう。あと212かぁ…。じゃあ頑張りますか(笑)。祐一くんの現時点での目標は?

福永 やっぱり中央だけで2000勝は目標ですね。すでに残り100を切っているので。あとはダービーを勝つこと。やっぱりそこは意識しますね。

祐言実行

▲「JRA通算2000勝とダービーを勝つこと、それが目標です」


的場 そうだよなぁ。俺なんか、ダービーで2着9回だからね。俺はもう、ダービーはあきらめた(笑)。

福永 そんなことはないでしょう。

的場 あのさ、最初の話に戻るけど、「福永洋一記念」を大井競馬場で開催するっていうのはダメなのかな? あれだけの人なんだから、地方競馬全体で「福永洋一記念」を盛り上げられたら最高だと思うんだけど。

福永 確かに大井で開催する年があってもいいですね。そういう風にどんどん広がっていってくれたら僕もうれしいです。

的場 そうだよね。中央のジョッキーを何人か招待してさ。大井でやったら洋一さんもきっと喜ぶよ。もし実現したら、祐一くんは絶対に乗りにこなきゃダメだよ。

福永 もちろんです。僕は断りません(笑)。

的場 あっ(苦笑)。返す返すも、あのときは本当にゴメン! その代わりというわけじゃないけど、大井で開催できるように俺が主催者に提案してみるから。

福永 ありがとうございます。楽しみにしています!

(文中敬称略)


『YU-ICHI ROOM』
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祐言実行とは
2013年にJRA賞最多勝利騎手に輝き、日本競馬界を牽引する福永祐一。まだまだ戦の途中ではあるが、有言実行を体現してきた彼には語り継ぐべきことがある。ジョッキー目線のレース回顧『ユーイチの眼』や『今月の喜怒哀楽』『ユーザー質問』など、盛りだくさんの内容をお届け。

1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。

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