▲亀谷敬正×南関予想士対談の最終回。"しゃべりの達人"の軽妙なトークに亀谷氏も思わずタジタジ!?
血統ビーム研究所・所長の亀谷敬正氏が、南関予想士をゲストに迎えてお送りする対談企画の最終回。今回のゲストは「ゲート・イン」の屋号でご活躍の吉冨隆安さん。その卓越した予想理論のみならず、ファンを引き付ける軽妙なトークは組合随一だとか。対談の最後には、亀谷氏プロデュースの公認予想士がデビュー決定!?(取材協力:TCK、南関東公認競馬予想士協同組合ホースレースリサーチ東京)
時計は一切無視します
亀谷 前回から間が空いてしまいましたが、南関予想士さんとの対談企画の第3回は理事長(夢追人)から「あの人に敵う者はいない!」とお墨付き、「ゲート・イン」こと吉冨隆安さんです…と、プレッシャーを掛けますが(笑)、よろしくお願いします。
ゲート・イン いやいやいや、こちらこそよろしくお願いします。
亀谷 失礼ですが、現在年齢はおいくつなんですか?
ゲート・イン 68歳になります。もう40年戦争ですよ。
亀谷 40年! ちょうど僕の年齢と一緒ですね。
ゲート・イン もう独立してから30年になります。下積みで10年はアシスタントをやってね。落語家の世界みたいなもんですよ。昔はこの業界も多難な時代でした。
亀谷 多難でしたか(笑)。では、予想の手法も師匠から代々受け継いでいるんですか?
ゲート・イン 手法を伝授されるということはないですね。昔の人は、蹄鉄にこだわったり、厩舎情報などが多かったですし。そもそも思い上がりでこの世界に入ってましたから(笑)。
▲「ゲート・イン」の屋号で活躍される吉冨隆安さん(68歳)
亀谷 では予想の軸も誰に影響を受ける訳でもなく、自分の信念どおりということですね。
ゲート・イン 私に限らず、まずは自分の理論を試す、それを繰り返して予想の軸となるものを具現化していくイメージですね。前回出演された狙い撃ちさんにしろ、理事長の夢追人さんにしろ、それぞれ登山ルートは違っても、確固たる自分の道を信じているみたいですからね。
亀谷 その登山ルートが僕でいう血統なんですが、ゲート・インさんの"ソレ"は何でしょう?
ゲート・イン その前に亀谷さんの魅力はですね……
亀谷 えっ!? 僕の話ですか(笑)?
ゲート・イン その清潔感のあるルックスもそうだと思うんですが、何より"配当の大きさ"ですよね。私は中央も予想するので、いつも勉強させてもらっています。
亀谷 いやいや、大変恐縮です。
ゲート・イン 私は血統はある意味、「統計学」だと捉えているんですよ。体型と気質が似ますからね。その統計からそれぞれの条件で適性のある馬が浮かび上がる。それは他の人と"全く角度が違う予想"になるので、高配当も難なく的中できると。それが亀谷さんの素晴らしい魅力だと思っているんですよ。
亀谷 ありがとうございます。大先輩に褒めていただき、光栄です。
ゲート・イン ここからは私の話でね、まず先に予想する上で"考慮しないもの"を言いましょうか。
亀谷 さすが、聞く者を引き付ける話術ですね (笑)。
ゲート・イン まず第一に時計は無視します。JRAも南関東でも、予想の軸の主流とされているものですよね。でも、競馬はタイムを競うオリンピックではない。後の話にも続きますが、私は遅い時計に値打ちがないとは思ってません。
亀谷 ほう、それはちょっと意外でした。血統は気にされるんですか? 今までのお話しさせていただいたお二人は考慮しないと仰ってたんですけど。
ゲート・イン それも最後の分岐点として検討材料にする場合はありますけど、こっちはクラス編成の関係で「前走の7着、8着、9着を走らせる」といったことを毎日のようにやってるわけですよ。そうなると常に能力が拮抗しているわけで、レースで変わるのは枠と体調くらい。ですので、私として積極的に考慮する余地はないという判断です。
亀谷 予想する上で効果的な要素が少ないと。では、ずばり人気予想士「ゲート・イン」の予想の軸は?
ゲート・イン 言葉にするのであれば、"レースの優劣"ですね。簡単に言えば、中央競馬で言えば、ジャパンカップの方が天皇賞よりも上だとかね、そういう発想なんですよ。
亀谷 それは前回、狙い撃ちさんの言っていた"レースの格"とは違いますか?
ゲート・イン 格ではないですね、あくまでレースの優劣。競馬というのは、抜群の走りを見せていても着順が悪い場合もあれば、その逆に劣っていても展開のアヤで勝ってしまう場合がある。
亀谷 そうですね。
ゲート・イン 例えば、オリンピックのリレーもスタート地点が円周率の関係でセパレートになっていますよね。競馬も基本的にはコーナーがありますから、枠が変われば、たった2馬身や3馬身は簡単に入れ替わるはずなんです。その点から過去の着順だけでなく、枠順・位置取りなどの不利を考慮した上で、仮定して、計算して、修正して…を繰り返すのが、私の手法ですね。
亀谷 なるほど。だから、全レースを分析されたときに、単に先着したほうを上に取るわけじゃなくて、4、5着に負けてもその馬を本命にできると。
ゲート・イン そうですね。特に大井の1700mと1500mなんかはスタートして、すぐコーナーですからね。大外と内が入れ替われば、そのまま逆転しますから。そういう計算を一生懸命やってるんですよ。いつもどの程度のことをやってるかというのをですね、ちょっと持ってきました。
亀谷 おぉ、とても細かく書かれていますね。何が書いてあるか、さっぱりわからない(笑)。
▲ゲート・イン持参の馬柱メモ。ここに記した"レースの優劣"を軸に勝ち馬を導き出す
ゲート・イン これは黄色に塗ってあるのが南関のレース。ピンクは中央。このオレンジに塗ってあるのが、私が着順に関わらずその馬が一番優位にレースを終えたと判断したものですね。
亀谷 このオレンジはゲート・インさんが自分できちんと判定して塗ると。理論もそうですけど、やっぱカラーリングはいいですよね。一目で何を指しているのかわかる。これそのままnetkeibaで配信してほしいもん(笑)。
雨の日の○○は要注意!
亀谷 この対談が東京大賞典の直前に公開予定なので、読者のためにもう少し大井のコースの特性を教えてもらえますか?
ゲート・イン 大昔は圧倒的にイン有利の競馬場だったんですけど……今から7、8年前かな? 各コーナー全体にバンク工事をやりましてね(09年1月〜2月に実施)。だから、今は雨が降ると砂が内に滑落して、インが埋没するんですよ。
亀谷 そうか、それだ! 過去2回の対談は両日とも雨だったんですど、もう内枠の馬がどんなに人気していてもまったく走らなかったんですよ。疑問に思っていたんです。やっぱりバンクがあるから内に砂が溜まるんだ!
ゲート・イン もうインが深いと、内を通った馬は早々に埋没しますね。もう行きっぷりが全く違いますから。
亀谷 初回の対談の後が帝王賞だったので、レースを注目して見ていたんですが、まさに武豊騎手(コパノリッキー)がそれを避ける乗り方をしていました。3枠発走からまずまずのスタートを切ったのに、外に誘導して、道中も不自然なくらい内を空けて回っていたんですよ。でも、終わってみれば距離ロスもなんのその。これはいい話を聞いた。馬場状態によっては、スタート前から終わってる可能性がある。
▲不良馬場で行われた今年の帝王賞。終始、外に誘導しながらレースを運ぶも3馬身半差の大楽勝(撮影:高橋正和)
ゲート・イン やっぱりうまいジョッキーはちょっと避けてますね。逃げ馬もラチから馬1頭分ぐらいを避けて、最短距離を走らせるように逃げてますよね。厄介なのは、8枠の馬が必ず外を走るということもないこと。騎手にもそれぞれ考えがありますからね。
亀谷 騎手も加味すべき点ですね。僕も中央で"インで死んだ"っていうのはダートでとても重要視をしているんです。例えば、砂を被ると別馬のように走らない血統がある。そこでボロ負けした馬は外枠に入ると平気で10馬身ぐらい巻き返すことがある。そういうのはメモっておいて、買うようにしています。
ゲート・イン とても良い視点ですね。大井もインの砂が深いですから、内の馬はバカバカと砂を被りますよ。
亀谷 では、やはり当日の馬場状態によっては、事前に用意した全レース予想から変えるんですか? これは皆さんに共通で聞いてるんですが(※予想士は1日全レース分の予想を1000円で販売。購入者には、レース直前の予想も無料で配る)。
ゲート・イン 夢追人さんは頑として変えないですよね。私は……変えて、失敗するほうが多いですよね(笑)。
亀谷 変えるんですね(笑)。
ゲート・イン 馬場もそうですけど、パドック見ると揺らぐんですよね。何としても当てなきゃいけない立場ですから。事前にきっちり優劣を分析していても、僅差の評価の馬で馬体が良く見える場合は、すがる思いで変えてしまうことがあるんです。私も修行が足りないといいますかね。でも結果として、成績は良くないことが大半ですね。
亀谷 やっぱり予想が変わった場合は、ネットでお知らせするシステムがほしいんだよなぁ。皆さんの予想にまる乗りしたいんけど、行ったり来たりが結構大変で。大井さんなんてこれだけ設備が充実しているんだから、なんとか連携してメールなりLINEなりで簡単にできると思うんだけど。もっと言えば、有料席の個々のモニターに場立ちを生中継なんかも。
▲亀谷「生意気ですが、利用者代表の立場で言わせて頂きます!」
ゲート・イン そうですね、そんなことが容易にできる時代ですもんね。
亀谷 例えば大井競馬の広報の方たちと、企画会議をしたりとかはあるんですか?
ゲート・イン 今回の対談もそうですけど、たまにこういったお話を頂く程度で、定例でお話をする機会はないですね。もちろん私たちも協力できることはしますし、年に1、2回でもいいので、主催者の方たちとファンを楽しませる会議みたいなものができればと思うんですけどね。
亀谷 予想ブースの利用法の案内だったり、お礼のご祝儀とかも気軽にチップっぽく支払えるようになればいいんですよね。素人が口を挟んですみません。でもこの声をきっかけに、よりお互いの交流が深まればよいですね。
ゲート・インが思う“プロの三条件”
ゲート・イン 僕はね、亀谷さん。“プロの三条件”という話をたまにするんです。これは場違いな話かもしれませんけど。
亀谷 いえいえ、聞かせてください。
ゲート・イン プロの三条件、まず1つめはやっぱり卓抜した技を持ってなきゃダメですよ。例えばこの卓抜した技が「逆立ちして10キロ歩ける」とかだと商売になりませんね。2つめの条件はですね、"その技がマーケットになっていること"。そして、最後の3つ目は"保障がない"ということ。
亀谷 もう少し詳しく聞かせてもらえますか。
ゲート・イン 私を例にすると、まず1番目の卓抜した技。これはさほどより上、ほどほどには持っているだろうと。2番目のマーケットは、場立ちの何十人の小さなエリアしかないかもしれないけれど、確かに存在している。これもそこそこ。しかし、僕がプロ中のプロなのは、3番目の保障がないというところ。「俺は(一枚)200円の世界でここまで生きているんだ」という自負がありますよ。
亀谷 なるほど。確かにそうですね。
ゲート・イン もちろんプロでも当たらない日もある。それでも“今日はプロを目指しているんだ”と言い聞かせて予想しています。まだプロになれたとは思ってませんが、「あぁ今日は"フロ"で終わっちゃったな」と言うと、最後にドカッとウケるんですよ(笑)。
亀谷 そこが大オチなんですね(笑)!
ゲート・イン 我々は主催者から公認を頂いて予想させてもらってますが、中央の予想家に公認はないですよね。私は中央も楽しむ身なので、亀谷さんにはぜひそういったプロの組合を作ってもらいたいですね。
亀谷 ありがとうございます。やっぱり、社会的職業としては、弱いジャンルだと思うので、力を合わすことも必要だと思うんですよね。でも致命的なことがひとつあるんですよ…予想家同士の仲が悪い(笑)。なんというか、もっと力を合わせてやんないといけないことがあるのに…社会的に弱い職業同士なのに、足を引っ張ることに一生懸命な人がいる(苦笑)。
ゲート・イン なるほど(笑)。でもさっきの話じゃないけど、登山ルートは違っても同じ登山家ですからね。
亀谷 そこをリスペクトできる関係の人が増えるといいんですけど。ちなみに終わった後にほかの予想士さんの予想を見られたりはしないんですか? ほかの人はどんな予想をして、どれを当てたんだろうとか。
ゲート・イン それはもう横一列並んでいますから、何書いて、どういう発想しているのかは見ますね。で、やっぱり打ちのめされたりもしますよ。「俺にはこんな予想は書けない…」ってあるじゃないですか。ガツンと頭を殴られたような気分になります。みんな、やっぱりお互いを気にしてますよ。
亀谷 お互い良きライバルでもあると。思いきって聞きますけど…派閥もないんですかね(笑)?
ゲート・イン 昔のことは言えないですけど(笑)。今はおかげさまで理事長の人格が素晴らしくてね。組合も徹底的に民主化を図って、みんな一丸となってやってますよ。
亀谷 羨ましいですね。でも今回こうやって理事長の夢追人さんともお話する機会を頂いて、とても勉強になりました。僕もいまから大井の予想を職業にはできないし、ネットには強い方だと思っているので、予想士の皆さんをお手伝いする立場もやってみたいです(笑)。
ゲート・イン いやいや、組織を立ち上げられたらどうですか。根強いファンもいて、カリスマ性もあるんだし、亀谷さんならできるんじゃないですかね。
亀谷 いえいえ、恐縮です。でも地方、中央の垣根なく、予想家というエンターテイメントを盛り上げたい気持ちは本当にありますから。
ゲート・イン いちファンとして楽しみにしていますよ。でも今日も来ていただいてますけど、大井は本当に素晴らしい競馬場だと思いませんか? 臨場感もあって、迫力がありますでしょう?
亀谷 本当にそう思います。何より都心にありますし、平日の仕事終わりにそのまま競馬ができるという中央にはない楽しみ方がある。これは大きいですよ。
ゲート・イン これだけの立地で、集客の面で中山競馬場にも遅れをとっているのが、中にいる人間として悔しいくらいなんですけど。私はよく言っているんです。大井の馬が中央に出ると“マル地”がつくでしょ。でもね「一体、どっちがマル地なんだ! こっちは品川ナンバーだぞ!」ってね(笑)。
亀谷 仰るとおり(笑)。
ゲート・イン でもやっぱりネットだけではなく、現場に来てくれないと、本当のファンは育ちませんからね。私たちも集客するためのイベントをいろいろ企画していかなくてはいけないと思っています。
亀谷 僕もこの対談企画を通して、いろいろ構想を練りたいと思います。…と、いうわけで早速1日限定で場立ち台をレンタルさせていただけないですかね(笑)? 必ず人を集めて、今いる予想士さんたちも相乗効果を得られる企画を考えてみせますよ!
ゲート・イン それはありがたい(笑)。この交流を機会にぜひそういった企画を実現させてもらいたい。我々も楽しみにしていますよ。
亀谷 よし、まずは小藪(千豊)さんに立ってもらおう(笑)。今日は貴重なお時間いただきありがとうございました!
▲「ゲート・イン」こと、吉冨隆安さん ありがとうございました!
【後日談】 12月21日(水)、メインレースの観戦にプライベートで浦和競馬に訪れた亀谷。地方に来れば、もつ煮とビールと予想士にマル乗っかりが、もはや亀谷のルーティーンとなった。いつものように「夢追人」予想を購入すると…、なんと11レース・12レースと連続的中!
・浦和10レースは3連複4120円を2000円的中!
・浦和11レースは3連複8320円を3000円。ワイド1240円を5000円的中!
▲夢追人の12月21日全レース予想より
▲3連複4120円を2000円的中!
▲3連複8320円を3000円、ワイド1240円を5000円的中!
30万円以上のプラス収支に!「予想士の皆さんと交流する機会をもらい、マル乗っかりの気分や予想士の姿勢など、色々勉強になり、なおかつお小遣いも増えて最高でした(笑)」
「いやー。亀谷さんが来ると、なんか当たるんだよねー」と夢追人も予想の出来とともにご満悦の様子。
「実は、最終レースに単勝32倍で勝ったトゥモローウィングはシニスターミニスター産駒。地方は仕事にしない(笑)と思いながらついつい調べちゃったんですが、先日単行本『競馬研究所』に書いたダートの名血は地方でも買い続けたらプラスになることがわかったんです。…いや、でも地方は何も考えず、今後も予想士の皆さんに勉強させてもらいながら、一緒に飲みに来る仲間たちと楽しんでやりたいと思います」
(了)
南関東公認競馬予想士・メンバー紹介▲現在の南関東公認競馬予想士は総勢13名(写真は12名)。計3回に分けて全メンバーをご紹介します!
▼ザ・トップ (下段中央)
競馬予想士歴30余年。「神様ではないので全て当てるのは無理だが、人気にこだわらず来る馬を見極める自信がある!」と豪語し、根強いファンを掴んでいる。南関東全競馬場で営業。
▼レコード社(下段左)
昭和43年からこの道一筋40余年。2009年6月1日に全レース的中の実績を持つ。大井競馬場で営業。川崎・浦和・船橋開催時は、大井場外で営業。
▼ゲート・イン (上段中央)
今回の対談にも登場した、1,2を争う人気予想士。『競馬は投資たり得る』その実践闘争舞台と語り、トークの軽妙さは天下一品。聞きに行く価値大! 大井競馬場で営業。川崎・浦和・船橋開催時は、大井場外で営業。
▼牛若丸(下段右から2番目)
「俺は競馬場の走る広告塔だ!」をモットーに東京マラソンにも出場する現役ランナー。マラソンで鍛えた忍耐力と根性で、予想にも粘着力を発揮! 南関東全競馬場で営業。
▼ナビゲーション 穴、本命にこだわらず、独自に研究した結果の最適な馬をチョイスしている。川崎競馬場・船橋競馬場で営業。大井・浦和開催時は、川崎場外営業。