▲今年の有馬記念は3歳馬サトノダイヤモンドが勝利、騎乗したシュヴァルグランは6着(撮影:下野雄規)
来春の目標は天皇賞、3200mは胸を張っていける距離
2016年、最後の開催が終わった。12月3日の落馬から中2週で復帰したわけだが、自分としても、まさかここまでいい状態で戻ってこられるとは、正直思っていなかった。3日間開催だっただけに、さすがにダメージが残ることも覚悟していたが、それもまったくなし。なにひとつ無理をすることなく、最後の騎乗を終えることができた。
それもこれも、ドクターによる治療、トレーナーによるリハビリ、そして妻が食事からアプローチしてくれたおかげ。万全のサポート体制で支えてくれた人たちには、本当に感謝の念しかない。
復帰初戦に騎乗したマイスタイルで勝利を挙げられたことも励みになった。しかも、ベルクロノスと同じオーナー(マイスタイルのオーナー・寺田千代乃氏は、ベルクロノスのオーナー・寺田寿男氏の夫人)、同じ昆厩舎での勝利。ベルクロノスの命は取り戻せないけれど、なんというか、背中を押してもらったような、特別な力を感じた一戦だった。
シュヴァルグランで挑んだ有馬記念は6着。パドックで目にした馬体も十分に張りがあり、返し馬の感触も、多少硬さを感じるほどに仕上がっていた。もちろんそれは、嫌な硬さではない。今年最後のレースということで、ギリギリまで仕上げた際の独特の感触だった。
抽選会で引き当てたのは7枠14番。ポジションを取りに行くにはどうしたって内枠が有利だから、二の脚があまり速くないシュヴァルグランにとって、よほどの好スタートを切らない限り、スムーズに前目につけるのは難しいと思っていた。結果、至って普通のスタートとなり、いつもより促して出して行ったものの、中団の外目につけるのがやっとだった。
思った以上に流れが落ち着き、道中の動きもほとんどなし。持久力勝負に持ち込みたかった自分としては、もっと流れてくれるのが理想だったが、勝ちに行くにはここで動くしかないと判断し、3〜4コーナーで徐々にポジションを上げていった。
が、直線では、上位3頭に並ぶまでにも至らず、逆に離されてしまった。あのあたりがシュヴァルグランの今後の課題で、上位馬との力の差を認めざるを得ない結果に。枠順によるハンデも少なからずあったが、あの場面でねじ伏せられるくらいの力は現状ではなかったということだ。
結果は残念ではあるが、1着を狙いに行くにはあの競馬しかなかった。3〜4コーナーでジッとしていれば、もしかしたら4着、5着はあったかもしれない。でも、そこはGI、有馬記念。枠順と流れを踏まえた勝ちに行く競馬としては、悔いのない騎乗ができたし、今後の課題も見えた一戦だったと思う。
来春の目標は、今年同様、天皇賞(春)。ゆっくりではあるものの、順調に力を付けているのは確かで、3200mは胸を張っていける距離。また、明け5歳となり、もう一段階パワーアップできる伸びしろも感じているし、何はともあれ、無事に目標までたどり着けることを願うばかりだ。
「もう一度、リーディングを」大井の帝王からのエールを励みに
2016年は、最初と最後に休養を余儀なくされ、106勝で全国5位という成績に終わった。もちろん、すべてに満足はしていないが、改めて周囲の支えの大きさを実感できた年でもあった。来年こそ、ケガをすることなく、1年間務め上げることが目標だが、だからといって、攻められなくなっては意味がない。あくまでも避けられる事故は避けるというスタンスで、細心の注意を払いつつも、貪欲に結果を追求していきたい。
先月の的場さんとの対談では、的場さんに「もう一度、リーディングを獲ってほしい」という言葉をいただいた。とても励みになったし、まさかそういう目で見てくださっているとは思わなかったから、なんだか嬉しかった。自分が頑張ることで、喜んでくれる人がいる。その事実はストレートにモチベーションにつながるし、本当に力になる。
▲11月末に行った的場文男騎手(大井)との対談、父のこと騎乗のことなど様々語り合ったふたり
じっくりお話させていただいたのは先月の対談が初めてだったが、それにしても“的場文男”というジョッキーはすごい人だ。“見習いたい”などと簡単に言うのは憚れるほど。「辞めてもやることがないからね」と笑っていらっしゃったが、ジョッキーとは、それだけで続けられる仕事ではない。体の一部を拝見するだけで、どれだけ努力と苦労を重ねてらっしゃるのかがよくわかった。
そんな的場さんにいただいた「もう一度、リーディングを」というエール。来年、そして来年以降も、頂点を見据えて頑張っていきたいと思う。
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