16F戦のグッドウッドCがG1昇格することをBHAが発表
◆他国も長距離路線の充実を主眼としたプログラム変更の発表がある模様
英国競馬の夏の風物詩である「グロリアスグッドウッド」を舞台とした16F戦のグッドウッドCが、2017年からG1に昇格することになった。管理団体のBHAが、1日に発表したものだ。
BHAの役員ルース・クイン氏は、「英国で生産され、調教され、競馬をする長距離馬を、更に強靭にし、層を厚くするべく、BHAがかねてより協議してきたこと」と、今回の改訂について説明している。
グッドウッドCは従来、グロリアスグッドウッドの3日目に施行されていたが、G1昇格を機に開催初日に移行。総賞金も従来の30万ポンドから50万ポンドに増額されて、今年は8月1日に施行される。
グッドウッドCが抜けてしまうグロリアスグッドウッドの3日目には、従来は5日目に施行されていた牝馬のG1ナッソーS(芝9F192y)を移行。2日目には、開催のメイン競走というべきマイルG1のサセックスS(芝8F)が組まれているから、グロリアスグッドウッドは初日から3日目まで、3日連続でG1競走が施行されることになった。ナッソーSが抜けてしまう5日目には、従来は2日目に行われていたセントレジャー路線の重要な一戦であるG3ゴードンS(芝12F)が移設され、5日目のメイン競走である伝統のハンデ戦・スチュワーズC(芝6F)をサポートすることになった。
グッドウッドCの前身である、距離3マイルのシルヴァーCが創設されたのは1808年のことだから、200年以上の歴史を誇る伝統の一戦だ。優勝馬主に贈呈されるトロフィーが銀杯から金杯に変わり、距離が2マイル5ハロンに短縮された1812年、レース名がグッドウッドCと改められ、今日に至っている。
1830年の英ダービー馬プライアムが、1831年・32年とこのレースを連覇した頃から、グッドウッドCのステータスは確立。その後はヨーロッパの一流ステイヤーが目標とするレースとなり、1878年の勝ち馬の欄には、54戦54勝の記録を残したハンガリー産の名牝キンツェムの名が記されている。そして、1884年のグッドウッドC勝ち馬は、かのセントサイモンであった。
ヨーロッパにパターン競走が導入された1971年、グッドウッドCはG2の格付けを得たが、その後、長距離路線全体の衰退によって出走馬の水準が下がり、1985年にG3に降格。しかし、1990年に距離を2マイル4ハロンに、翌1991年には更に縮めて2マイルとしたことが奏功し、1995年には再びG2に昇格していた。
ヨーロッパにおける現行のプログラムでは、6月のロイヤルアスコットを舞台としたゴールドC(芝20F)と、10月のアークウィークエンドを舞台としたカドラン賞(芝4000m)の2レースしか、古馬のステイヤーにとってのG1競走がなく、グッドウッドCはこの両レースの間にあるギャップを埋める役目を果たすことになる。また、古馬による距離2マイル路線のG1は、10月末にフランスで行われるG1ロワイヤルオーク賞(芝3100m)の1レースしかなく、イギリスに距離2マイルのG1を作る上でも、グッドウッドCの昇格は大きな意味を持っていると言えそうだ。
当初は、ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイのG2ロングディスタンスC(芝16F)のG1昇格が噂されていたが、カドラン賞やロワイヤルオーク賞と開催時期が近いこのレースをG1にするよりは、長距離馬の適鞍が少ない夏場に開催されるグッドウッドCを昇格させる方が、理にかなっているとの判断もあったものと推察される。
これで、9月半ばのアイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンドを舞台としたG1愛セントレジャー(芝14F)を、長距離路線の範疇に含めれば、ステイヤーたちには、ゴールドCからグッドウッドC、愛セントレジャー、カドラン賞、ロワイヤルオーク賞という、G1路線が確立されたことになる。
BHAは同時に、ロイヤルアスコット4日目に組まれている3歳限定戦のクイーンズヴァーズを、距離を16Fから14Fに短縮した上で、従来の準重賞から2段階アップしてG2に昇格させることもあわせて発表。また今後、アイルランドやドイツの競馬主催団体からも、長距離路線の充実を主眼としたプログラム変更の発表がある模様だ。
実は今、世界的に見て、長距離路線の水準が非常に高いのが、日本である。先月発表された「ワールベストホースランキング」で、「エクステンデッド」と称される距離2710m以上のコラムにおいて、世界最高値を獲得したのは、G1菊花賞(芝3000m)を制した際にレイティング121を獲得したサトノダイヤモンドであった。繰り返すようだが、これは、オーダーオヴセントジョージがG1ゴールドCを制した際に得た120の上を行く、世界最高値であった。
かつて、天皇賞・春を制したイングランディーレが、G1ゴールドCに挑んだこともあったが、当時よりは遥かに強くなった日本のステイヤーが、ヨーロッパの長距離路線に挑む日が、近い将来に訪れて欲しいものである。