不運な事故で大怪我を負ったメイセイオペラは、失明の危機や二度の惨敗を乗り越えて、地元の桐花賞で復活を果たした。そして明け4歳の1月、川崎記念に挑戦。4着に健闘するも、船橋の怪物・アブクマポーロに、力の差を見せつけられる。進化を目指して福島のテンコー・トレーニングセンターで冬を過ごしたオペラは、別馬のように変身して、春の水沢に帰ってきた。(取材・文:井上オークス)※本企画は2月13日(月)〜17(金)、5日連続公開します。
▲水沢競馬場を歩くメイセイオペラ(撮影:森内智也)
(前回のつづき)
テンコーの坂路で生まれ変わった
佐々木修一厩舎に帰ってきたメイセイオペラを見て、菅原勲騎手は衝撃を受けた。
「馬がガラッと変わっていた。トモに筋肉がついたし、体全体もひとまわりガッチリして、同じ馬とは思えないぐらいに成長していたんです。これほど成長する馬も珍しい。オペラにはテンコーの坂路や調教法が、すごく合っていたんですね」
柴田洋行厩務員も、愛馬の成長に驚愕した。肩まわりの筋肉といい、お尻まわりの筋肉といい、別馬のようにたくましく進化していた。びっくりするほどボリュームが出た。「馬ってこんなに変わるんだな」と感じた。
春初戦は、5月のシアンモア記念(水沢)。後続をサラリと突き放して、6馬身差の圧勝劇を演じた。
「馬体も精神面もすごくよくなって、違う馬に乗っているような感じ。それまでもセンスよく走っていたけれど、テンコーから帰ってきて、『本当のオープン馬になったな』と感じました」
シアンモア記念出走時の馬体重は、489キロ。前走の川崎記念からプラス9キロで、デビュー戦の465キロからは、24キロも成長した。誕生時からオペラを見てきた生産者の高橋啓さんは、こう表現する。
「あの薄っぺらかった馬が、馬車馬のように見えた。幅があって、筋肉隆々で。まさに生まれ変わりましたよね」
生まれ変わったメイセイオペラは、6月の帝王賞(大井)に駒を進める。アブクマポーロと、2度目の対戦だ。菅原騎手は「今のオペラで、アブクマとどれぐらいやれるのだろう」という期待に胸を膨らませて、大井競馬場へ乗り込んだ