▲競馬も私生活もストイックな北村騎手、その性格からいよいよアノ事件の真相が明らかに
前回、かなりの職人気質であることが判明した北村友一騎手。その凝り性な性格は、食生活や体作りでも発揮されていると言います。「広く浅く手を付けるタイプ」と自己分析する佑介騎手とは逆で、とにかくストイックな北村騎手。その性格から、アノ「裁決室で机を倒した」事件の真相が見えてきました。(取材・構成:不破由妃子)
(前回のつづき)
行きつけの焼肉屋さんは部位別
佑介 友一はジョッキーとしてだけではなく、性格そのものが凝り性というかストイックだよな。食べることひとつをとっても、こだわりがあるし。
北村 基本外食なので、どうせ食べるなら美味しいものを追求したいと思うんですよね。最近一番こだわっているのは、「酸化した油を摂らない」ということ。油を摂るなら、絶対に新鮮な油じゃないと嫌です。
佑介 じゃあ、天ぷらにしても、目の前で揚げてくれるような高級な天ぷら屋じゃないとダメなんだ。
北村 ん〜、それにしても、酸化が進んだ油で揚げていたら意味がないですし…。だから実際は、揚げ物はほとんど食べないんです。
佑介 確かグルテンフリーも意識してたよね。いったい普段何を食べてるの?
北村 圧倒的に焼肉が多いですね。最近、日・月・火はほぼ決まって焼肉です。関東に遠征したときも、都内のホテルに泊まりつつ、美味しい焼肉屋を求めて川崎まで遠征したりします(笑)。
佑介 都内ならいくらでも美味しい焼肉屋があるやろ!
北村 そうなんですけど…(苦笑)。なんていうのか、どちらかといえば小汚くて、知る人ぞ知るみたいな佇まいが理想で。高くて美味しい店はたくさんありますけど、それじゃあもう満足できない(笑)。大阪の焼肉屋はめっちゃ詳しいですよ。あるいはこの近辺(栗東)だったら、部位別にオススメの焼肉屋を挙げられます。
佑介 部位別(笑)。ちなみに、大阪だとどこがオススメなの? きっと読者も知りたいと思うよ。
北村 ベスト1は、南森町の『万両』ですね。僕は赤身の肉が好きで、『万両』はとにかく赤身が安くて美味しいんです。あとは、京橋の『京松蘭』と鶴橋の『万正』かな。『万正』の焼肉は、とにかくニンニクの使用量がハンパない。パンチが効いているという意味では、『万正』が一番ですね。
佑介 ニンニクたっぷり、確かに旨そう!
北村 しかも『万正』は、回数を重ねるごとに引き込まれていくという(笑)。1回目より2回目、2回目より3回目と、どんどん美味しくなっていくんですよ。
▲「回数を重ねるごとに引き込まれていくお店なんです」
佑介 本当に凝り性だよな。一時期、日本酒やワインにもめっちゃハマってたし。
北村 今、一番ハマっているのは、トレーニングや体のケアですね。今日も大阪まで行ってきたんですけど、騎乗フォームを見てもらって、左ひざが1センチ高いとか、左の股関節が入ってないとか、いろいろ指摘されました。
佑介 1センチ単位ってすごいな。どういうジャンルのトレーナーなの?
北村 トレーナーではなく、大阪の大学の教授なんです。それともう一人、体のケアをしてもらっている人がいて、毎週火曜日に体の中心軸を取るためだけのトレーニングをお願いしてます。基本的に僕はクソ真面目。平日はすべて、土日の競馬に向かう過程というか。
佑介 今、その生活リズムを崩されたくないやろ? だから、友一は絶対に結婚できへんと思う(笑)。独身じゃなければ成り立たない生活をしてるもんな。
北村 本当に自由に動き回ってますからね。それに…今は結婚願望自体がないんです。ジョッキーは20代のうちに続々結婚していきますが、いつも「みんな寛大だなぁ」と思って見てます(笑)。
佑介 そもそも、“奥さん”の必要性をまったく感じてないよね。
北村 そうなんです。奥さんがいることによって、競馬に対してどんなプラスアルファがあるのか、今の僕にはわからない。
簡単にイラッとする性格ではないんです
佑介 友一らしい(苦笑)。でも、それほど競馬に対してストイックだということ。常にアンテナを張っていて、いいと聞けば何でも試して、どこにでも行って。ちょっと田辺先輩に近いところがあるかも。
北村 ああ、そうかもしれませんね。藤岡先輩は、何かハマっていることはないんですか?
佑介 俺は友一とは逆で、なんでも広く浅く手を付けるタイプ。何にでも手を出すけど、すぐに飽きてしまう。“ミスターいっちょかみ”だから(笑)。
▲「俺は何にでも手を出すけどすぐに飽きてしまう、“ミスターいっちょかみ”(笑)」
北村 確かに真逆ですね(笑)。
佑介 やってみたい習い事はたくさんあるんだよ。今、興味があるのは、英語とパソコンと水泳とテニス。あとはダンスも!
北村 ダンス!? 何系ですか?
佑介 なんでもいいんだよ。この前、「一緒にダンス教室に行かない?」って子供を誘ったら、「やだよ。パパひとりで行けばいいじゃん」ってアッサリ断られた(笑)。でもね、どれもこれも絶対に続かない自信がある。性格なんだろうなぁ。連ドラや小説も途中でアッサリ止められるし、結末がまったく気にならない。
北村 藤岡先輩もある意味、極端ですよね。僕は週に2冊は本を読みますが、途中で止めるなんて絶対にできない。
佑介 友一はそうだろうな。改めて考えると、俺の人生で続いているのは仕事だけ(笑)。あと、変わらないのは、“人間”に興味があることくらい。
北村 僕はまったく人に興味がない…。
佑介 知ってる(笑)。
北村 ただ、そんな僕でも、藤岡先輩のことは本当のお兄ちゃんのように思っています。で、康太は僕にとって双子の兄弟みたいな存在(笑)。藤岡先輩は、僕のことをいつでも何でもわかってくれていると勝手に思ってます。本当に観察力が鋭いですからね。
佑介 人を観察してしまうのは、もはや癖に近いかも。俺は逆に、友一みたいになりたいよ。気が多くて、集中力がないから。
北村 僕のように、すぐにスイッチが入ってしまうのも考えものですよ。交感神経が優位になりやすくて、競馬の最中も自分をどう落ち着かせようか、けっこう考えますから。とりあえず僕は、変なところで熱くなることなく、フラットな状態を保てるようになりたいです。
佑介 そうすれば、机をひっくり返すこともないと(笑)。
北村 あ、それは…(苦笑)。いや、その通りです。でも、決して暴れたとかではないんだけどなぁ。
佑介 そうだよな。スイッチが入ってしまうといっても、友一は決して乱暴な人間じゃないし、俺から言わせればむしろ逆やし。ただ、あの報道だけでいうと、確かに友一が裁決室で暴れ回ったみたいになってた(笑)。
北村 ですよね。そのあたりで誤解されていると思うんですけど、そもそも僕、簡単にイラッとする性格じゃないんですよ。でもあのときは、自分の主張がまったく伝わらないことにイラッとしてしまって。でも、決して暴れたわけではなく…いや、机を倒したのは間違いないんですが(苦笑)。
佑介 「なんでそんなことになったんや」と思った一方で、友一らしいなとも思った。俺だったら、納得してもらえるまで話をするところ、友一は「わかってもらえないならもういい!」って、物事を投げてしまうスタンスやろ?
北村 その通りです。それは若い頃から藤岡先輩にご指摘を受けてきた僕の悪いところですよね。反省しています、本当に。だからそろそろ、(机)を外してほしいです…(苦笑)。
(文中敬称略、次回へつづく)