▲兵庫競馬の女性厩務員・阪口日和さん
今週は桜花賞の後にも3歳牝馬の戦いがある。地方・佐賀競馬で行われるル・プランタン賞(地方全国交流重賞、ダ1800m)。今年はグリーンチャンネルで生中継され、地方競馬ネット投票で馬券購入もできる。そこに有力馬の1頭として参戦するスターレーン(牝3、兵庫・松浦聡志厩舎)を担当するのは24歳の女性厩務員。「地方競馬」と聞いて恐らく多くの人が抱く茶色くくすんだイメージとはちょっとギャップを感じさせる女性だ。男性のようなパワーはなくとも、彼女だからこそできる馬へのケアがある。地方競馬の現場で働く“ウマジョ”を訪ねた。(取材・文・写真:大恵陽子)
彼女が担当すると、カイバを食べるようになる
平日の夕方。厩舎の洗い場で阪口日和(さかぐち・ひより)さんは担当馬スターレーンの手入れをしていた。
「この子は“構ってちゃん”なんですよ」と微笑みながらスターレーンの顔を撫でると、3歳の牝馬も顔をすり寄せてきた。
▲阪口さんに顔をすり寄せるスターレーン
平屋建ての厩舎は、運動場から舞い上がってきた砂で埃っぽさを感じる。男性ばかりの厩舎で、阪口さんとスターレーンには不思議な柔らかい雰囲気が漂っていた。
元々は動物園の飼育員になりたかったという。大動物が好きなことからJBBA(日本軽種馬協会)の研修生となり、北海道の生産牧場で3年働いた。
「出産ってお母さんも仔馬も命懸けで、感染症や放牧地でのケガが原因で亡くなってしまう馬が思っていたよりも多くてビックリしました。無事に成長して競馬場まで来るだけでも大変だなって。地元(兵庫)に帰ってきて、『あの子たちどうしているかな?』と気になって競馬場で働いてみようと思いました。一昨年の6月頃です」
しかし、広い放牧地で過ごす繁殖牝馬や仔馬と、日々調教を積む現役の競走馬とでは性格がまったく違った。
「初めは怖かったですね。特に牡馬は人を見るというか。私が怒るべきタイミングで叱っても、牡馬に倍返しされてしまうこともありました(苦笑)。乗っていた時に背中を丸めて私を落とそうとしてきたんです。何回も落馬しました。他の人が乗ったら『大人しいで』って言うんですけどね。仔馬もそうですが、競走馬も担当する人によって性格が変わると聞くので気をつけようと思いますが、私には牝馬の方が合っているようです」