▲競馬関係者も参拝に訪れる勝運の神社で、1200年続く“駈馬神事”
競馬雑誌の抹消馬一覧に「神馬:ウォーターフロート」とあった。神馬とは広い意味では、神様の馬として神社などに奉献されるほか、神社のお祭りに参加する馬のこと。JRA未勝利で引退したウォーターフロートに、神馬としてどんな仕事が待っているのか気になって調べてみると、現役時代のオーナーの地元である京都・藤森神社で5月5日、駈馬神事に出ることが分かった。勝運の神社として競馬関係者も参拝に訪れる地で、1200年続く伝統行事。そこでは逆立ちで馬に乗ったり、馬上で字を書くなど曲乗りが行われる。知られざる神社での馬の仕事に迫る。(取材・文・写真:大恵陽子)
オーナーの地元で伝統行事に参加
京都市街地と京都競馬場の中間に位置する藤森神社。平安遷都以前に創建されたとされ、勝運と学問の神様が祀られている。ここで毎年5月5日、藤森祭の一環として駈馬神事が1200年前から行われている。
4月16日、駈馬神事の練習が藤森神社の境内で行われた。駈馬神事の練習は人馬にとってこの日1回限りだという。10代〜50代まで約10名いる乗り子ほぼ全員にとって馬に乗ること自体が練習日と駈馬神事当日のみ。また参加する馬はほぼ毎年変わるため、練習は入念に行われた。
▲本番と同じ馬装から練習がスタート
▲練習の様子
駈馬神事に参加する馬は普段、京都市内にある原田祭馬苑で飼養されている。競走馬や乗馬を引退した馬たちを駈馬神事のほか神社の行列に参列させている。
原田祭馬苑の原田義太郎氏は駈馬神事に参加する馬についてこう話す。
「駈馬神事に出る馬のほとんどは元競走馬なんです。ここでは普通に走らせる時でも(右・左のバランスを)7:3に構える乗り方なので、右重心になります。まっすぐ走れることが大切ですね。脚が短くて小柄な方がピッチ走法で速く走っているように見えるのでよりいいです」
この日の朝、ウォーターフロートは原田祭馬苑から馬運車に乗せられて藤森神社にやってきた。練習ではまず、駈馬神事本番と同じ馬装をするところから始まった。鞍は木で作られた和鞍を使用する。乗馬用の鞍よりも重たく、鞍を固定する腹帯も異なるため、ウォーターフロートは慣れるまでに少々時間がかかった。