▲今週は、四位騎手のダービー勝利の舞台裏と騎手にとっての“ダービー”に迫ります
「ダービーは本当に大変だよ(苦笑)」、インタビュー中にそう漏らした四位洋文騎手。ダービーに騎乗すること過去15回。ウオッカ、ディープスカイで史上2人目の連覇という、人もうらやむ華やかな活躍の影で、人知れず抱えてきた“ダービー”の重み。乗った者だけが知る、勝った者だけが知る、特別な思いとは。(取材・構成:不破由妃子)
(前回のつづき)
「ダービーがほかのGIと一緒? そんなのは勝ってから言え」
佑介 僕が初めてダービーに騎乗したのは2007年のナムラマース(8着)で、その年に勝ったのがウオッカ。翌年のダービーは僕がフローテーション(8着)で、四位さんがディープスカイ。僕ね、2回とも真後ろの特等席で、四位さんのガッツポーズを見てるんですよ(笑)。
四位 そうか(笑)。そういえば近くにいたような気がするなぁ。
佑介 ウオッカも衝撃的でしたけど、個人的にはディープスカイで勝ったときのレースのほうが印象深くて。僕は出遅れて踏んでいったので、ちょっと掛かり気味に1コーナーに入る形になり、内心焦っていたんです。そこでパッと横を見たら、四位さんとディープスカイがものすごく折り合っていて。それこそ二人だけの世界というか、ゾーンに入っているように見えたんです。
▲▼ダービーの大舞台で1番人気、武豊騎手に次ぐ史上2人目の連覇を飾った(撮影:下野雄規)
四位 あのレースは、絶対に勝てると思っていたし、それ以上に勝たなアカンと思っていたから、周りの馬がどうとかではなく、ロスもアクシデントもなく、ディープスカイのリズムで回ってくることだけを考えていたからね。だから、ゲートを出していくとか、どこのポジションを取ってとか、そういう作業を必要としなかった。
佑介 なるほど。でも、僕からすると、縦長の展開ですっごく前と離れていたので、「四位さん、こんな後ろで大丈夫なのかな」って思ったんですよ。
四位 大丈夫だったでしょ(笑)。
佑介 ですね(笑)。4コーナーで僕の真後ろに四位さんがいて、僕の横をスーッと駆け抜けていきましたからね。あのディープスカイの脚にはシビれましたよ。だから僕、札幌で四位さんに「ディープスカイに乗せてください」ってお願いしたんですよね。どんな乗り心地なのか知りたくて。いざ乗ったら、「えっ?」っていうくらい普通の馬だったんですけど(苦笑)。