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すべての条件がかみ合っての勝利だった

  • 2017年06月08日(木) 12時00分


◆自然の理法が脈づいていた

 語られる勝因と敗因、これらは競馬を考えるときの生きた教材になっている。それをどれだけ記憶にとどめているか、或いは、肝心なときにそれを重要なヒントにしているかが、結果を左右する大きな要素になることが多い。安田記念は、そんな思いを強く抱かせた。

 勝ち馬サトノアラジンは、昨年はスローペースでまんまと逃げ切ったロゴタイプに0秒2差まで迫る追い上げで4着、もう少しペースが速ければと思わせ、秋のマイルチャンピオンシップでは1番人気の評価を受けていた。それぞれの前哨戦、京王杯スプリングカップとスワンステークスを破壊力のある末脚を武器に勝っていただけに、マイルのGI戦での期待は大きくなる一方だった。

 この時点では池江調教師は「本当に完成するのはまだ先になる」と話していて、直線はさまれて伸び切れずに5着に終ったマイルチャンピオンシップのあとでも、この先にのぞみをつないでいた。今年も京王杯スプリングカップから安田記念というローテーションで、まず前哨戦で1番人気に応えてからというところだったが、9着の大敗に。その敗因を陣営は、雨が降って馬場が重かったこと、ペースが遅かったことでのびのびと戦えず、走り切れていなかったと述べていた。

 跳びが大きく道悪はよくないので良馬場であること、スムーズに走らせるには緩みない流れになることなど能力を発揮する条件があげられていたが、当日の東京競馬場は良馬場、それにサトノアラジンは外枠の14番で大きなフットワークでも他馬の圧迫を受けることはなかった。加えて、ロゴタイプが刻んだ前半800米のラップは45秒5。去年より1秒5も速く、これを後続馬が追いかけたのだから、後方を邪魔されずに走るにはうってつけだった。直線で外に持ち出し上がり最速33秒5で差し切り、すべての条件がかみ合っての勝利。

 この自然の理法がひそかに脈づいているようなシーンが競馬にもあることを実感したのだが、どこまでこれを予感できていたか。どんな小さなことにでも、自然の理法が脈づくことがあるのだから、勝因と敗因、それぞれをしっかり把握しておくことで、勝利に近づく推理を手にすることが出来ると実感したのだ。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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