フランケル第2世代の猛威はこの馬から始まる その名もイッツパーフェクト/吉田竜作マル秘週報
◆「思った以上におとなしくて扱いやすい」
3回阪神開催初日(3日)に行われた芝外1600メートル新馬戦は、1番人気に推されたケイアイノーテック(牡・平田)が順当勝ちを決める一方で、個人的には他のところで大きな驚きがあった。
関西圏では夏の阪神開催から新馬戦が始まるようになって、もう15年がたつ。以前は「わざわざこんなに早い時期から2歳馬を仕上げる意味を見いだせない」と口にする調教師が多かったものだ(今も少なからずいるが…)。実際、若駒たちはトレセンでも、競馬場でも、見ているこちら側がハラハラするような幼さを見せることもしばしば。人に置き換えれば、幼稚園から小学生になろうかというヤンチャ盛りなのだから、それも当然だろう。
しかし、初日のこの新馬戦では、どの馬も行儀良くパドックを周回し、ほとんどの馬が馬場入りの順番を守り、そしてスムーズに返し馬へと移っていた。
「そりゃあ~早くに新馬戦があるのも当たり前になっているんだから。牧場時代から、この時期を目標に、いろいろと教えていくし、もちろんトレセンでも対応していくものだよ」とはこの新馬戦に出走馬を送り込んだ、ある関係者の弁だ。
かつては馬の自然な成長に合わせ、「大物は秋開催以降にゆっくりと」が定番だったものだが…。今やのみ込みが早く、順調に調教が進められれば、どんどん“先”へ行くようになったし、「早期デビューの馬は2歳戦いっぱいしか持たない」という、かつてのセオリーも、もはや過去のものになった感がある。今、話題になっている中学生棋士・藤井四段ではないが、サラブレッドもこの先、どんどん常識の枠を超えていくのかもしれない。
そういう視点で捉えれば、昨年の2歳戦線を席巻したフランケル産駒の早い時期からの始動は驚くに値しない。安田厩舎のイッツパーフェクト(牡=母パーフェクトトリビュート)は8日に早々とゲート試験をクリアした。
「背ったれ(背中が真っすぐのラインではなく、少し反っている状態)で、少し神経質とも聞いていたけど、こちらに来てからは思った以上におとなしくて扱いやすい。ここまでは順調に調教できていますね。ゲート試験もパスしたので、早期デビューに向けて調整していくことになると思います」と安田調教師。
フランケルは簡単に種付け権を得られる種牡馬ではなく、繁殖牝馬の血統や実績というハードルも課される。生まれた産駒はすべてが文字通りの“良血”だ。
「まだ速いところもやっていないので、何とも言えないですけどね」とトレーナーはあえてトーンを抑えるが、世界的に見てもフランケル産駒の勝ち上がり率は優秀で、こと日本ではクラシックホースまで誕生した。期待の大きさは言うまでもなかろう。
阪神JF&オークス馬ソウルスターリングを見て誰もが感じずにはいられないのが“品格”と“センス”。イッツパーフェクトもトレセンに来るなり“自らの使命”を感じ取って、完璧な行儀の良さを見せているのだとすれば…。
フランケル産駒第2世代もまた猛威を振るうのか。まずはイッツパーフェクトの走りに注目してほしい。